駄楽器駄日記(ドラム、パーカッション)

ロッキンローラーの打楽器日記

ザ・ビートルズのレコードからドラムの進歩とリンゴさんの変化を考える(その1)

2019年06月20日 | ビートルズネタ
ザ・ビートルズの名曲の数々。約8年間で公式曲は213曲とも278曲とも言われています。この差は、解散後に発表されたアルバムを含むかどうかの違いですが、とにかくすごい曲数ですね。
そしてその8年間でのリンゴ・スターのドラミングの変化はスゴイです。初期から後期までしっかり聴いてみると面白すぎる。



ということで、まずは初期のビートルズから掘り下げてみます。
でもレア音源などで聞けるデビュー前のドラミングは、残念ながらリンゴさんではなく前任ドラマーのピート・ベストなので、間違えちゃいけませんね。



また、デビュー曲のシングル盤「Love Me Do」もドラマーはリンゴ・スターではないんです。プロデューサーのジョージ・マーティンがリンゴさんのドラミングがイマイチ気に入らず、スタジオミュージシャンのアンディ・ホワイトに交代させたという悲劇があり、担当を外されたリンゴさんは代わりにタンバリンを叩いたそうです。悔しいのう。。。(涙)
まだ新入りのリンゴさんは、よほど信頼されていなかったんでしょうね。



実はこの曲、3人のドラマーが叩いたものが存在しており、アンディ・ホワイトのバージョンは、シングル盤とデビューアルバムの『Please Please Me』に収録されていて、そのバージョンはリンゴさんのタンバリンが入っているのでわかります。
一方リンゴバージョンの方は、シングル盤を集めたアルバムの『Past MastersVol.1』に収録されているので、聞き比べてみると面白いです。

※追記します
シングル盤は最初はリンゴバージョンでリリースしたが、すぐにアンディバージョンに差し替えられたとのことです。リンゴバージョンはあまり売れず、マスターテープも破棄してしまったので、のちに『Past MastersVol.1』に収録された音源は、残っていたレコードをコピーした音源なのだそうです。

そしてさらに、ピート・ベストのバージョンは、解散後のレアテープを集めたアルバム、『アンソロジー1』に収められていますが、試行錯誤の最中なのかアレンジがまだ決まっていなくてリズムが安定せず、聞いているこっちが気恥ずかしくなるプレイです。。。
聴き比べてみますと、ピートさんの未完成なドラミングは別として、アンディバージョンとリンゴバージョンはそんなに大差ない出来だと思うわけです。
なぜなら、リンゴバージョンの方が先に録音されていて、アンディさんはその録音を聴いてから叩いたはず。なので演奏がくりそつなのは、アンディはリンゴのコピーとまで言わないにしても、強い印象を残して叩いたはずなのです。
このミディアムテンポのシャッフルのリズムって、ノリを出すのが難しいんですね。ずっと同じリズムパターンだと、のっぺらとした抑揚のないつまらないリズムになりがちで、ピートさんのようにサビで変化をつけたくなる気持ちもわからないでもない。



リンゴとアンディのドラミングの違いはどこかと言えば、バスドラとスネアパターンの違いであり、アンディがはっきりとしたキックを踏んでシャッフル感を出しているのに対し、リンゴのバスドラは少し弱い。この曲に限らず1拍めとシンコペする引っ掛けの8分音符以外あまり聞こえてきません。そして、スネアでウンパパウンパとハネを強調するパターンこそが初期のリンゴドラミングの特徴なんですね。アンディのスネアも、イントロではウンパパウンパと叩いていますが、途中で2拍4拍のみに変わってしまいます。リンゴのタンバリンがその代わりにウンパパウンパと鳴っているのでスネアも鳴っているように感じますが、途中でやめちゃっています。何となく中途半端でコピーしにくいのがアンディバージョンなんですね。
そんなわけで、個人的にはリンゴさんらしい特徴あるシャッフルのほうが断然好きです。
ただ、このデビューアルバムを聴く限り、リンゴさんのバスドラって弱いというイメージが残ります。レコードに針を下した1曲目の「I Saw Her Standing There」でも、ロックンロールでありながら、バスドラが前に出てこなくて残念に思った記憶があります。



デビュー当初、リンゴさんは今ではお馴染みのラディックではなく、英国のプレミア社のドラムセットを使用していました。そのせいか2枚目のアルバム『With The Beatles』以降で聞けるラディック社のドラムと音が全く違う。
もちろんレコーディング方法も日進月歩していた時代なので、ドラムセット以外にも音の違いは当然あるとは思うけれど、やはりラディックのサウンドに慣れてしまって、ファーストアルバムのプレミア社のドラムは迫力がない感じがします。
『With The Beatles』以降はリンゴさんはずっとラディックのドラムを使用していて、その後の活躍は周知のとおりです。これを機にラディック社は世界中でドラムセットが売れに売れ、生産が追い付かなくなったと言います。

その2へ続く
コメント
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