☆あまちゃんの毎日ガハハハ日記☆

三男児+夫との生活、代表を務める会http://shirouiryo.com/のこと、自分の日常を綴る日日是好日

この国で起きていること~底の無い沼 ニッポン~

2011-02-01 12:09:54 | 医療のこと

「産科女医からの大切なお願い」
で、『妊娠前に知ってほしいこと』を丁寧に、かつ力強く、訴えている宋先生がブログで書いてくださったことが、頭の中をぐるぐると、心の中をぐさぐさと突き刺しています。

以下、許可を得て、転載。
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底の無い沼 ニッポン

当直帯の早い時間。
救急隊から病院に搬送を要請する電話がかかってきました。

高校生。病院にかかったことは無いけれど、妊娠していると。
推定9ヶ月。5分おきの陣痛が疑われる。

あ~、未受診妊婦か。
でも、NICU満床なんだよね。

妊娠週数の分からない搬送を受けて、赤ちゃんがこの病院で診られないくらい未熟だったら、困る。
結果として赤ちゃんに「ベストな」医療を行うことが出来ず、後遺症が残って訴訟になったりしたら・・

まず頭に浮かぶ考えは、「NICU満床なため受け入れ不可能」
それが無難。

でも・・
地域の病院を知っていると、妊娠週数の分からない未受診妊婦を受け入れるような病院はなかなか無く、おそらく救急隊員は右往左往。救急車内で産まれたりしたら・・

その時、まだ数人の産婦人科医が残っていたので、
「搬送を受けよう。そして妊娠週数や陣痛・子宮口を評価して、必要あれば母体搬送か新生児搬送をしよう」と決断しました。

やってきたら、結構お腹が大きくて、そのまますぐにお産になりました。

お産は、安産。(若いってやっぱりすごい)
赤ちゃんは元気。搬送しなくて良さそう。

一件落着。



な訳ない。

女の子はどうして妊娠したのに、どの病院にもかからなかったのか?
産んだ赤ちゃんを育てるつもりなのか?
育てられるのか?

助産師が女の子に一つ一つ聞いていきます。

元々月経不順で4~5ヶ月こないこともあったため、妊娠に気付くのがとても遅かった。
おそらく妊娠したのは両親が離婚でごたごたした時期。相手とはもう連絡は取れない。
貧しくて両親も兄弟も働きづめで、学校から帰ってもいつも独りだった。
母が他の兄弟を連れて出て行ってからはますます貧しくなった。
父に妊娠のことを告げたが、無保険であること、もう堕ろせそうにない大きさであることから、病院に連れて行ってくれなかった。
お腹の中で赤ちゃんが動いても、嬉しいとか母性とかの感情は湧かず、不安と嫌悪感だけだった。

そればかりでなく、女の子は恐らく何ヶ月もお風呂に入っていないだけでなく、歯磨きもしていないようで、本人も母親が出て行ってからはシャンプーや歯磨き粉がなくて洗えなかったと。

聞けば経済的に本当に逼迫しているようで。

それにしても、高校に毎日通っていたと言うのに、学校では誰も女の子の異常な状況に気付いてあげられなかったの?
髪の毛はベタベタだし、匂いもかなりするし、お腹もただ太ってきたではすまないくらい出ていたし。
学校がセイフティーネットとして機能していないなんて。

これが同じ国での出来事なんだろうか。不衛生、栄耀失調・・
俄かには信じられないくらいでした。

日本は豊かな国だと思っていたけれど、網の目から零れ落ちてしまった貧困家庭は同じ国に住んでいるとは思えない暮らしであることに衝撃を受けました。

自分だって、その家に産まれたら、どうやって高校生の女の子一人でその状況から抜け出せるだろう。

赤ちゃんじゃなくて、出産した女の子自身が本当は児童相談所に保護されるべき対象でした。

女の子は、子育てをしたいとも思わないし現実に育てられないので、里子に出すことにしました。
助産師と女の子の判断で、赤ちゃんに面会はしませんでした。

私は近くのコンビニで、生活用品一式と食べ物を買い、「伊達直人より」と紙を貼ってその子のベッドサイドに置いておきました。

モラル低下との関連が言われている未受診妊婦。私もモラルのない未受診妊婦はたくさん診てきました。
でも、ここまで貧しく自分ではどうしようもない状況の未受診妊婦を見ると、責める気は全く起きず、日本と言う国の現状について考えざるを得ませんでした。

子供の貧困問題は、大人とは別の問題として考えないといけないんでしょうね。
貧富に関係なく「夢の医療」を受けられることよりも、日本に住む全員が健康で文化的な生活を送れることの方が先。大人の貧困だって自己責任ですむ問題では全く無いけれど、子供には責任を負わせられない・・

私に出来ることは・・
まずは子供に自分の体を知ってもらおう。
踊る産科女医 (実用単行本)/吉川 景都
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なんて苦しい・・・。
なんていろいろな問題を含んでいるのだ。

貧困のこと、貧困の連鎖のこと、学校のこと、教育のこと、性教育のこと、妊娠・出産の無知のこと、無関心のこと、手を差し伸べる&差し伸べられない社会のこと・・・

前々職で、アジア諸国のNGO支援に携わっていたこともあり、貧困がどれ程底がないものか、それがどれ程のものか・・・少しは感じてきました。

けれども、これは、「この国で」起きていること。

日本の医療を知ってからは、知った当時あまりにも愕然とした、もう「この豊かな国で」とは思えない。

自分達がよければ、自分達の暮らしがよければ、それでいい、なんてことは決してない。

贅沢をせず、つつましく生きる。そしてわずかでも少しでも苦しんでいる人のもとへと届くように。できることを。

亡くなったひびきちゃんもそのことを訴えていた。