こだわりメモ帳

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・ こんな本

2012年03月19日 | ◆ こんな本

わたしはここよ 河野裕子 白水社


このところ撮りに出ることがなく載せる写真がない。
その間、こんな本を読んでいた。冒頭はこのように始まる。
   逃げられないものが三つある。
   生まれた時代から逃げられない。自分の体の外に出ることができない。必ずいつか死ななければならない。
三つまとめは、いろいろ有るように思うがこれは初めてである。

ところでこの中に、詞書(ことばがき)に触れた箇所「河童忌」がある。
誕生日が芥川龍之介の命日と同じなことから起こした章で、

     燈江堂の主をとむらふ
   壁に来て草かげろふはすがり居り透きとほりたる羽のかなしさ 斉藤茂吉
   (痩躯白の芥川と草かげろうのイメージはふさわしく、夭逝の死をはかない昆虫にかさね哀悼した)

     芥川龍之介の長逝を悼みて
   たましひのたとへば秋のほたるかな 飯田蛇笏
   (芥川の魂をたとえて、光力の衰えた弱々しい秋のほたるだといっている)

   ところで、ここから詞書を付けずに省いたら、作品だけで芥川の死と結びつける読者はあるまい。
   詞書を付されることで、俄然様相を異にすることになる。読みの方向を決めてしまう。
   詞書の有無により読みの幅が集束したり、拡散したりする。

とあり、この解釈による詞書は、写真の世界のタイトルと同じようなことになる。
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