平方録

キャベツウニと湘南ハマグリ 後日談

ウニをキャベツで育てる話は前に書いた。

海藻を食べて育つものだとばかり思っていたから最初に聞いた時には耳を疑ったが、キャベツをコンブやワカメの代わりにムシャムシャ食べるうえに、海藻で育つよりもウニの身がたくさん詰まるというのだから二重の驚きだったのだ。
しかも相模湾のムラサキウニはワカメやコンブをただ食いするだけで身の入り具合が悪いために売り物にならず、同じコンブやワカメなどを食べて育つサザエやアワビの食い分を荒らしてしまうので、今度は売り物のサザエやコンブが獲れなくなり、海藻類が食いつくされた後の岩場はサンゴモという堅い殻のような海藻で覆われてしまってワカメやコンブも育たなくなってしまうんだそうである。
漁業者にしてみれば災厄をもたらす悪魔のような存在で、ムラサキウニは駆除対象の生き物だったんである。

そういう現状に心を痛めていた県の水産技術センターの職員が周囲の畑で栽培されるキャベツの中で、割れてしまったり生育が良くないために捨てられるキャベツの山を見ていてピンとひらめいたんだそうである。
嫌われ者のウニを獲ってきて廃棄されるキャベツを食べさせたらどうなるのか、と。
三浦半島はキャベツの一大産地でもある。農家は売り物にならないキャベツの廃棄処理にも手を焼いているのだ。それがウニのえさになるとしたら…

かくして近くの油壷マリンセンターと県立海洋科学高校の協力を得てスタートしたのがキャベツを餌に使ったムラサキウニの養殖栽培実験である。
その成果を文字通り味わう試食会が開かれたことを紹介するトピックスが水産技術センターのホームページに出ていた。
漁業関係者はもちろん農協関係者や報道機関から100人くらいが集まって行われた試食会では「甘い! とか「おいしい! と好評で、実験は順調のようである。
後は生産効率やら採算ベースの問題になってくるのだろうが、このまま順調に推移すれば2、3年後には相模湾産の山もりのウニ丼を食べられる日も近いのではと期待が膨らむ。

一方でこれも以前に書いた話だが、江の島の周辺で取れるハマグリが神奈川県の特産品に選ばれ、その名も「湘南ハマグリ」としてブランド化された話の続編。
江の島界隈に広がる遠浅の海で獲れるハマグリが大きくて立派なのは以前から知っていて、腰越の行きつけの魚屋や片瀬漁港の朝市で時たま見かけたが、魚屋は店を閉めてしまいボクが目にすることは少なくなってしまったが、ブランド化されて以降は人気が急上昇したようである。「湘南」のブランドは絶大なのだ。
大きいものになるとコブシ大くらいになるから一つ当たり良い値で売られている。

ブランド化され良い値が付くとあっては、当然現れるのが不心得者である。
これもセンターのホームページに出ていたのだが、案の定、湘南海岸ではハマグリの密猟が後を絶たなくなってきているんだそうである。
ハマグリが生息する江の島に近い遠浅の海は海水浴場でもあるし、今の時期なら海の中に人がいるのは不思議でも何でもないのだが、ハマグリを入れた網の袋を下げて浜に上がってくれば一目瞭然だろうに、密猟をするような輩はそんなことは一向に気にならないのだろう。白昼堂々と獲っていくんだそうだ。
あの一帯はサーファーの姿も多いから海水浴シーズンが終わっても海の中に人がいるのは自然な光景でもあり、これからも密猟は止まないだろう。

人のものをかっさらっていくとは不届千万だが、それこそ浜の真砂の数ほど不心得者はいるのだから致し方ないと言えばそれまでで、五右衛門同様いずれは釜ゆでにされることだろう。
ハマグリと一緒に釜ゆで? いや、ハマグリはハマグリだけにしてもらいたいね、どうせなら。









「空蝉」の4番花。実によく咲いてくれるが、さすがに夏場に咲かせてしまうと秋バラの付き具合に影響すると思われるので、1輪だけ咲かせて後のつぼみはすべて摘んでしまった。これでゆっくり養生してもらい10月に今シーズン最後の花を見せてもらおう
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