僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

湖東の勧請縄(トリクグラズ) と巨樹1「内野集落」~近江八幡市安土町内野~

2021-01-11 19:50:12 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 滋賀県の湖東地方へ行くと、神社の鳥居に掛けられた「勧請縄」の下に何本もの細い縄が下げられて、縄の先にスギの葉などが付けられているのを見ることがあります。
「勧請縄」は、集落に入る道や神社の参道などに飾ることで疫病や鬼が入り込むのを防ぐとされており、結界を張って「道切り」すると共に、五穀豊穣や村中安全の願いをこめる意味があるといいます。

「勧請縄」の中心にはトリクグラズと呼ばれる飾り物を付け、一般的には正月に新しい勧請縄を掛けて年末に取り外すといいます。
近江八幡市安土町内野では毎年新年の3日に集落にある「八幡神社」の境内で縄作りを行い、集落の旧玄関口に掛けられて厄除けとして集落を守る行事が今も続いています。



鳥居の前に来てまず驚いたのは竹で飾り付けがしてあった事で、一見すると侵入禁止になっているようにも見える。
聞いてみると、旗や飾り物を掛けるために設置してあるとのことでしたので、正月三ケ日には何か掛けられていたのかと思います。



鳥居の亀腹には松の枝と祈禱札が供えられており、祈禱札には12本の横線が書かれていた。
札が何を意味しているのかは分かりませんが、12本あるということは12カ月の無事安寧を祈念したものかもしれないと考えてみる。



八幡神社は御祭神に譽田別尊(応神天皇)を祀り、境内社に「井守神社」と「津島神社」が並ぶ。
節分の夜には「豆占い」という1年の天候を占う神事が行われるといい、4月には1311年頃より始まったとされる「内野祭り」が行われ、長さ四メートルの大松明三本に火をつけて献火されるという。
八幡神社のある内野集落は、村社ではあるものの古式ゆかりの神事が守られている信仰深い地といえるのでしょう。



内野集落は岩戸山への登り口になっていて、山の上には「岩戸山神明」や拝観が年に一度の千日会の時しか出来ない「十三仏」があるという山麓にある集落です。
集落の北東にある岩戸山は、箕作山や赤神山と尾根筋でつながり、西には繖山・南には雪野山がある信仰深い地域であったことも信仰が守れれてきたことに影響しているのかも知れません。



本殿の前あたりに瘤の多い御神木を見つけましたので、境内に居られた方に聞くと「梛(ナギ)」の樹だということでした。
この日は神社の祭典があるようで慌ただしそうにされていたにも関わらず、いろいろと教えていただき個人宅に車を停めさせて頂いたのは助かりました。



境内の外れにも御神木があるのを見ていましたので併せて聞いてみると、クリの樹ということでもう一度見に行く。
根っこの部分に空洞が出来てしまっていて、中には御神酒を上げる盃が置かれている。
少し勢いは衰えてきている感じもしますが、見応えのある堂々たる御神木です。



樹の裏側から見ると根が浮き上がるように盛り上がっていて、迫力のある老樹です。
環境省の巨樹・巨木林データベースには内野八幡神社にツブラジイが2本登録されており、幹周3.2mと3.8m、樹高が2本共12mの樹とある。
本殿・境内社の裏は森になっていますから、御神木がそれに該当するかは不明です。



さて、なぜ内野集落へやってきたかというといいますと、実は内野集落の「勧請縄」を見たかったからなのです。
湖東地方の「勧請縄」は集落に疫病や災いが入り込むのを防ぐものとされ、中央に掛けられるトリクグラズはその集落独特の意匠で作られるとされます。



集落の旧玄関口にある5m角の鳥居の形を模した木柱に掛けられた「勧請縄」には先端にスギの葉を付けた12本の縄がぶら下がっており、中央にはスギの葉で作ったトリクグラズが掛けられる。
この「勧請縄」は八幡神社を含めた集落に張られた結界のようなものでもあり、集落の厄除けとして人々を守ってくれるとされます。



奥が神社方向となる側から見たトリクグラズに掛けられた木札には『天下泰平・村中安全・五穀豊穣』の願いが書き込まれて集落の安寧と豊作を祈願します。
反対側から見た木札の裏には月と「大」や「小」の文字が書かれており、大小の文字の意味は月ごとの天候や豊作不作を占ったものなのかもしれません。





「勧請縄」に集落を守るための結界のような役割があるとすれば、それは「野神さん」に近いものなのかと一瞬考えましたが、その考えは見当外れだったようです。
なぜかというと内野集落から西に広がる田園地帯の一角に「西野神」さんが祀られていたからでした。



整地された場所に岩が祀られ、真新しい御幣が捧げられており、おそらくここは隣村との境界になるのでしょう。
ということは湖東地方には「勧請縄」の信仰と「野神」信仰が両立していることになりますから、その信仰形態に深い興味を感じます。



内野集落の「勧請縄」は、昨年リニューアルオープンしたという琵琶湖博物館に原寸に近いサイズのレプリカが展示されているそうです。
実際にくぐることも出来るそうで、内野の勧請縄をモデルにしたのは近江の勧請縄の典型的な形状を伝えていると考えたからだといいます。


コメント
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