「紺屋の白袴」ではないが、左肩が「六十肩?」になってしまった。15年ほど前に右が「四十肩」になっている。その時は発症から1年以上痛みが続き、可動制限も更に5~6年残った。今回は以前のに比べると進行は穏やかだが、如何せん商売上支障が出て困っている。要は左肩を外に回旋する力が発揮できないので、一部テクニックを使用する際に差し障りが生じているのだ(これは秘密です!)。
普段は患者さんを指導する立場だが、今回は自分で設定しているレシピに沿って早期の回復を目指している。以下に、その一部を紹介してみる。
【概要】中年期以降にみられる変性疾患。「肩関節周囲炎」、「フローズンショルダー」とも云われる。「震源」はローテーターカフ(回線腱板)と言われる4つの筋肉のうちどれかで、私の臨床例では棘下筋または肩甲下筋の発症例が圧倒的に多い。痛みに関しては1~2年以内に消失する疾患である。ちなみに私のケースは棘下筋がやられている。
【診断ポイント】先ず、発症時期から時系列で症状の変化の把握は必須で、個人差はあるがそれによってその後の症状推移とおよその終焉時期を推定できる。滑液胞炎などの炎症を伴う痛みのピークは発症から3~6カ月の期間であることが多い。次に、オーバーユース等に伴う一過性の筋緊張などもあり得るし、腱の部分断裂など外傷のケースも稀にあるので、確定診断は慎重に行う。今回の私のケースでは、上腕の冷えを感じたため、当初「血行障害」を疑った。
【マネジメント】この疾患では、「筋機能低下を残さず注1、少しでも早く回復させる注2」という目標を設定する。痛みがなくなっても、当該筋そのものおよび肩関節複合体全体が機能を回復しない限り「寛解」とは言えない。
注1:ここでいう筋機能低下とは、変性した特定筋だけを指すのではなく、三角筋、上腕二頭筋、あるいは大胸筋など肩関節複合体に関わる軟部組織全般が対象である。この症例は何もせずに放置したままだと、痛みが消えても「関節拘縮」や「筋委縮」が残りやすい。
注2:定期的なカイロケアと患者さん自身の日常ケアがうまくかみ合えば、1年以上かかるものが10カ月程度で改善する可能性がある。
【日常ケア】一般に、痛みを怖がって動かさない、動かそうとしない人が多い。これはより怖い「長期安静に伴う弊害」を知らないためで、パーツ=罹患筋の圧痛点を庇うあまり肩関節複合体全体にダメージを拡げてしまう。そうではなく、仮に炎症期であろうとも、自分が(痛みを)我慢できる範囲でならば頻繁に、少しでも肩と肩周り全体を動かすように意識したい。団扇を使った肩の内外旋動作、ペットボトルを使った肩の振り子運動など、軽い負荷トレとストレッチングは欠かせない。こうした自身の日常鍛錬が、早期改善への大きな比重を占める。
※下記に添付した画像は、某ホームセンターOで購入したシリコン製の負荷トレ用のグッズで、単価も安く(1,000円未満)、手軽且つ触感がいいので、トレーニングに大いに重宝している。
【カイロプラクティックケア】肩関節モビリゼーション、加えて、ストレッチングと軽い負荷運動の繰り返しが第一選択。炎症期を過ぎれば「強度」を徐々に上げていく。肩甲上腕関節へのアジャストは、滑液胞炎を誘発・助長する恐れのある、痛みの亢進期は避けた方が無難である。痛みの鎮静期を過ぎても、健常側との肩関節の可動域比較チェックを継続する。痛みが消失し、筋力と可動域が両側同等に戻れば、そこを一区切りとする。