『プロゴルファー猿』1982年スペシャル版 感想

 本日、テレ朝チャンネルで『プロゴルファー猿』のスペシャル版が放映された。
 これまで再放送される事もなく、以前に某ファンサークル上映会で一度見たっきりなので、今回の放映は非常に嬉しい。

 本作は「藤子不二雄ワイド」内でテレビシリーズが始まる以前に、1982年に単発2時間枠で放映された。テレビシリーズ版にも特番用の新作エピソード「SARU IN USA 激突!猿VSホーク -ワイルドプロ決定戦-」(1985年10月1日放映)があるので、「スペシャル版」と言うだけではどちらの事なのか紛らわしい。
 そのせいか、今回放送された1982年の特番には、テレ朝チャンネルの公式サイト及び番宣で「野生の天才少年に挑む美少女ゴルファー紅蜂と香港の竜!」とサブタイトルが付けられていた。実際には、作品タイトルは『プロゴルファー猿』のみで、サブタイトルは存在しない。どうでもいいが、番宣の方は映像がテレビシリーズ版になっていて、そこに「声・野沢雅子」なんて出るものだから非常に紛らわしい。番宣の担当者は何を考えていたのだろう。
 この後も、いちいち「1982年のスペシャル版」と書くとくどいので、このエントリでは「1982年版」と書く事にする。


 さて、今も触れたが1982年版の『猿』は、猿丸の声が野沢雅子で、他のキャラもテレビシリーズとは異なる。中丸役は菅谷政子なので、ケン一氏に聞こえてしまう。大丸はジャイ子役でお馴染みの青木和代、小丸はのび太のママの千々松幸子、紅蜂はドラミや魔美の横沢啓子。こうやって書き出してみると、藤子アニメお馴染みの声優が多い。千々松さんはキャディ役も演じていたが、こちらはのび太のママそのまんまの声だった。
 そんな中、なぜか猿の姉だけはテレビシリーズ版と同じ鵜飼るみ子が務めている。出番は少ないし、キャラデザインがテレビシリーズ版とはかなり異なるので、やっぱり違和感はあるのだが。

 このように声優は異なるが、イメージとしては皆キャラに合った声だった。さすがにミスターXだけは内海賢二の「猿くん!」の印象が強すぎて、最後まで馴染めなかったが。
 また、猿が原作やテレビシリーズとは異なり標準語をしゃべるのが、1982年版の大きな特徴だ。エセ関西弁になっていない分、これはこれでアリだと思う。野沢さんは関西出身ではないから、無理に原作のように喋らせたらテレビシリーズ同様に悲惨な事になっていただろう。

 藤子アニメお馴染みの声優と言えば、外せないのが肝付兼太。当然、本作にも出演している。ナレーター役でルールの解説などを担当しており、スネ夫やドラキュラとは違って落ち着いた地声に近い声だ。テレビシリーズ版では田中真弓演じるディンプルが解説担当だっただけに、解説はかなり雰囲気が違う。



 本編のストーリーは、正味の尺が90分しかないせいもあって、原作前半のダイジェストと言った感じだ。
 おっちゃん→剣崎→紅蜂→竜と、4試合も描いているので駆け足気味の印象はぬぐえない。剣崎戦では、いきなり最初から猿谷ゴルフ場での戦いになってしまうほどの飛ばしっぷりだ。
 尺の都合もあったにせよ、剣崎戦があっと言う間に終わってミスターXの絡む余地がないので、次の紅蜂戦で「猿が負けたら影のプロになること」と条件を出してくるのはやや唐突に感じる。猿の側にしてみれば「ミスターX?誰それ?」となってもおかしくない所なのだが。

 しかし、竜との戦いは、時間の制約がある中ではなかなか上手くまとめられていた。小林清志の声も、貫禄と迫力は十分でよく合っていた。ショットやボールの飛び方、コースの見せ方など、原作ともテレビシリーズ版とも異なる手法がいくつも使われており、テレビシリーズとは異なる解釈のアニメ化として面白かった。
 気になったところを挙げるとすれば、最終ホールで大丸のスモークボール事件のフォローがなかったのは残念だった。それでも、テレビシリーズ版のドラゴン戦は後半が中国に舞台を移し、かなりオリジナル要素が増えていただけに、1982年版の原作に比較的忠実な内容は、かえって新鮮だった。

 それにしても、原作でも変な髪型だった虎大人(1982年版での声優は、テレビシリーズのおっちゃん&初代ドラえもんの富田耕生)の頭が、完全に鉄腕アトムにしか見えないのは笑うところなのか。原作にないアングルであの頭を描こうとすると、アトムになってしまうのだろう。そもそも、アトムの髪型自体、どのアングルでもツノが2本立っているのは「マンガのウソ」なわけだし。


 この1982年版、スタッフはほぼ『怪物くん』からのスライドであり、事実上制作をスタジオディーンが担当したテレビシリーズとは顔ぶれが異なる。キャラクターデザインは鈴木伸一で、キャラの顔つきはテレビシリーズより原作のイメージに近い感じに仕上げられている。テレビシリーズ版の洗練された絵柄も嫌いではないが、こちらは原作ファンに嬉しい仕様だ。
 1982年版とテレビシリーズで共通しているのは音楽を筒井広志が担当している事で、1982年版の時点で既に、テレビシリーズでお馴染みのメロディーがバンバン流れている。音楽の力は凄いもので、声優が違っていても聞き慣れた曲が流れると「『猿』を観ているんだ」と言う気分にさせられる。
 ただ、観ていて音楽に何か物足りなさがある、何だろう…と思っていたのだが、観終わってから気が付いた。物足りなさは、「夢を勝ちとろう」のアレンジBGMが一切なかったせいだった。1982年版の時点では存在しない曲だから仕方がないが、知らず知らずのうちに流れるのを期待していたようだ。それだけ、私にとって「夢を勝ちとろう」の印象が強いのだろう。



 先ほども書いたように、本作は全体としては駆け足の印象が強い。もしかしたらテレビシリーズを視野に入れたパイロット版的な意味合いもあった作品だったのかもしれない。実際には、テレビシリーズ化の実現には、更に2年半もの月日を要したわけだが。
 だが、短い尺の中でも、猿と家族との触れ合いや、その対比となる紅蜂の孤独、それに竜との全力を尽くした死闘など、おさえるべき所はきちんと描かれており、制約の多い中でスタッフは出来る限りの仕事をした作品だったと思う。90分間、だれることなく観る事が出来た。

 今回の『猿』1982年版放送で、テレ朝チャンネルもようやく藤子アニメのレア作品を出すようになって、実に喜ばしい。
 あとは、『プロゴルファー猿』に限らず、テレビシリーズ作品で制作された特番用エピソードをもっと放送して欲しい。今のところ、『エスパー魔美』の「マイエンジェル魔美ちゃん」しか流れていない。『パーマン』の「バード星への道」「コピーワールドの謎」、『怪物くん』の「コワイ山の大冒険」など、観たい話はたくさんある。
 テレ朝チャンネルさん、よろしくお願いします。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 2009年夏の東... 『ゲゲゲの鬼... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。