テレビアニメ・旧「ドラえもん」感想

 8日に、ネオ・ユートピア上映会について、非常に思わせぶりな事を書いたのだが、状況が変わって隠す必要が無くなったので、ここでばらしてしまう。すでに、「藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記」で取り上げられているので、ご存知の方もいらっしゃるだろうが、数ある藤子アニメの中でも最もレアで幻の作品と言われていた、日本テレビ版「ドラえもん」(通称:旧ドラ)が上映されたのだ。

 シンエイ動画版「ドラえもん」が始まった1979年以来、30年近くの間、ほぼ再放送される事もなく、近年はフィルムが行方不明になって紛失したとまで言われていた旧ドラの実物を、ついに観る事が出来たのだ。あの日、上映会に参加された方は、皆さん色々な思いで旧ドラをご覧になった事だろうが、特に私は自分のサイトで旧ドラを取り上げているため、ぜひ感想を書いて多くの人に伝えたいという気持ちが強く、つい8日のような文章を書いてしまった。

 今回、上映されたのは「男は力で勝負するの巻」「潜水艦で海に行うの巻」の2本。「男は~」は1973年6月17日放映で前半の作品、「潜水艦~」は8月5日放映で後半の作品だ。本作は、途中でドラえもんの声が富田耕生から野沢雅子に交代しているが、今回の上映会では富田版・野沢版を1話ずつ観る事ができた。
 以下、各エピソードの感想を書いておく。なお、スタッフ情報は真佐美ジュンさんのサイトより引用させていただいた。



・「男は力で勝負するの巻」(脚本/井上知士、絵コンテ/奥田誠治)

 色々と書くべき事はあるが、とりあえず、ドラえもんが喋るだけで笑えるというのが凄い。声を担当された富田さんや、本放送で旧ドラを1話から観ていた方にとっては不本意な事なのだろうが、私は26年間「ドラえもん=大山のぶ代」が頭に刷り込まれてしまっているし、多くの方は同様だったのだろう。ドラのセリフがある度に、会場から笑い声が聞こえていたし、私も思わず笑ってしまった。
 作画自体は、シンエイ版初期の雰囲気に近いし、ドラえもん以外のキャラについては、声にそれほど違和感もないので、余計にドラえもんのおっさん声のインパクトが強い。結局、観終わるまであの声がドラえもんだとは、完全には認識できなかった。

 さて、これは原作の「ソノウソホント」のアニメ化でありり、以前から私のサイトの旧ドラコーナーで、当時ご覧になった方の記憶によるあらすじを公開していたが、実物を観ると、ほぼそのままの内容であり、30年を経た記憶の確かさに驚いた。やはり、見ていた方にとって印象的なエピソードだったのだろう。ともかく、ストーリーについてはこちらをご覧いただきたい。

 旧ドラ独自の見所としては、ジャイアンとスネ夫の関係、スネママ・パパの描写、ジャイアン父子の愛などが挙げられる。
 まず、ジャイアンとスネ夫の関係だが、終始スネ夫が強気な態度をとっていて、ジャイアンに対して「おまえ」呼ばわりする場面もあり、力関係はスネ夫の方が上に見える。原作でも、連載1年目におけるスネ夫とジャイアンのポジションは似たようなものであり、旧ドラ制作開始時に2年分しか原作のストックがなかった事を考えると、このような描写もうなずける。
 次に、スネ夫のママとパパについて。この二人は、原作では出番も少なく、スネ夫と似たような性格・外見である事くらいしか印象に残らないが、「潜水艦~」も含めて、旧ドラでは、特にスネ夫のママが原作以上にエキセントリックで強烈なキャラクターとして描かれている。「空手三段」で、パパの代わりに板をたたき割ってしまう場面は迫力があった。
 最後に、ジャイアン父子の描写について。ジャイアンの父ちゃんは、原作とは全く異なる小男で、息子が恥をかかないように必死になる、子思いの人物として描かれている。土管を割ろうと無理して何度も手を打ち付けて、手が真っ赤にはれてしまう場面は特に印象的だ。この「泣かせ」の場面が入っている点も、旧ドラ独自の解釈であり、原作が少ない時期に、アニメなりに世界観を作り上げようとしていた事が伺える。

 このように、色々と印象的な部分はあったが、やはり一番はドラえもんの声だった。「あいしゅうのドラえもん」で富田ドラの声を聞いてはいたが、実際に動画に声が付くと、全くインパクトが違う。非常に強烈で新鮮な体験をする事が出来た。なお、富田ドラの話し方は、イメージとしては「魔法使いチャッピー」の「ドンちゃん」に近い。いずれも富田氏としては珍しい、かわいい系統のキャラクターと言える。



・「潜水艦で海へ行うの巻」(脚本/鈴木良武、絵コンテ/村田四郎)

 内容は、同題の原作より。とは言え、原作では海へ着いたところで話が終わっているが、旧ドラでは中盤で海に着いてしまい、その後はアニメオリジナルの展開が用意されている。また、スネ夫達を海に連れていくのがスネ夫のママであったり、しずかの家にガチャ子が居候しており一緒に海へ行くなど、独自の味付けが、多数見受けられる。

 本編後半では、潜水艦を巡るドタバタの末、ドラえもん・のび太やスネ夫達一行が小島に取り残されて帰る事が出来なくなり、ドラえもんの道具で窮地を脱する展開になっているが、「タイムトンネル」を掘ると言いながら、実際は単なるワープトンネルになっていたり、未来ロボットのくせにガチャ子が騒ぐだけで役立たずだったり、スネ夫のママが相変わらず濃いキャラでドラやのび太に対抗心むき出しだったりと、見所は多い。
 最終的に「タイムトンネル」(本当か?)が野比家に通じて、一行は事なきを得るが、このオチの場面は原作「ふしぎな海水浴」に通じるものがある。海へ行く話として、複数の原作エピソードを生かそうとしたのかもしれない。

 また、野沢雅子のドラえもん声だが、富田ドラと別物である事は言うまでもないが、普通に原作に近いセリフ回しだった富田ドラと異なり、「~なの」「~なのよ」など、妙に女っぽい喋り方になっている点が印象的だ。野沢さんの解釈なのか、演技指導が入ったのかどうかはわからないが、ともかく富田時代とは異なるドラのイメージを作ろうとしていた事は間違いないだろう。
 本話は、「男は力で~」とは打って変わって、全編がドタバタ展開だったが、こちらもまた初期原作の雰囲気に近い印象があった。

 なお、ガチャ子がしずかの家に住み着いたのは、本話のみの設定ではなく、最終話までずっと居候していたとの事。ガチャ子としずかの関係は、「オバQ」のU子とよっちゃんを連想させられる。しかも、ガチャ子の声は、前年までQ太郎を演じていた堀絢子さんだ。
 もし、旧ドラでガチャ子としずか二人がメインとなったエピソードが存在するならば、ぜひ観てみたいものだ。



 とりあえず、各話の感想はここまでだが、書き漏らした事柄について、補足しておきたい。

 まず、ドラえもん以外のキャラクターの声だが、上でも書いているように、思ったよりも違和感はなかった。もしかしたら、昨年実際に声優交代を体験したせいで、大山時代以外の声への抵抗感が弱くなっているのかも知れない。
 ただ、ジャイアンの声については、単独では問題ないが、ジャイアンとスネ夫が一緒に画面に出ている時には、今どちらが喋っているのだろうかと、何度か混乱してしまった。やはり「肝付兼太=スネ夫」のすり込みは、非常に強いものだ。

 また、作画に関しては、「男は力で~」の方は比較的原作を生かしており、シンエイ版初期に近い感じなのだが、「潜水艦~」については、正直なところかなり違和感があった。キャラの等身は微妙に下がっていて、顔もひしゃげている感じで、絵自体の完成度はともかく、「ドラえもん」の作画としては難ありだ。また、昔のアニメではしばしば観られる現象だが、スネ夫のママが喋っている場面で、一カ所だけ口が動いておらず止め絵になっていたのが妙に印象的だった。

 そして、富田ドラ・野沢ドラともにのび太は呼び捨て。原作ではまだ「くん」付けだった頃なので、これも旧ドラ独自の解釈となるが、シンエイ版とは一味違う、二人の関係は、これまた新鮮だった。



 以上、日本テレビ版「ドラえもん」について、率直に感想を書いた。

 思えば、私が旧ドラに関心を持ったのは大学生の頃だった。その後、ある程度資料が集まったので、「「ドラちゃんのおへや」に、軽い気持ちで旧ドラコーナーを作ったところ、非常に大きな反響があり、リアルタイムでご覧になっていた方から多くの情報提供をいただいた。
 しかし、まさか旧ドラのスタッフご本人がサイトをご覧になって、メールをいただく日が来ようとは、予想外の出来事だった。その旧ドラスタッフ・真佐美ジュンさんからいただいたメールによって、旧ドラの正しいスタッフを知る事が出来たのだが、従来知られていたメンバーとは大きく異なっていたため、最初は半信半疑だった。今思うと、大変失礼な事だった。
 ともかく、真佐美さんとのご縁が出来た事で、以前は一生観る事はかなわないのではないかと諦めかけていた旧ドラを、とうとう観る事ができた。その感激は言葉では表せないほどだ。今回の上映実現に尽力された方々には、あらためてお礼を申し上げたい。

 また、実物を観て、自分がこれまで頭の中で作り上げていた旧ドラ観には、多分に勘違いや誤りがある事もわかった。正直なところ、失敗作というイメージを持っていたが、旧ドラ独自の世界観は、シンエイ版ドラにはないものが多いせいか、非常に新鮮に感じた。失敗作と言うよりは、「ドラえもん」のアニメ化としては、早すぎた作品だと言った方が正しいだろう。旧ドラコーナーの記述については、かなり書き直す事になりそうだ。


 今後、旧ドラがもっと多くの人の目に触れて、正当に再評価される時が来ることを期待したい。今回の上映会は、その第一歩になるのではないだろうか
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
旧ドラ (KES)
2007-03-30 13:11:45
新ドラつまらな過ぎ!
全く面白くないし、逆にキャラ全員の声と喋り方などすべてキモいと思いませんか?
それに引換え旧ドラは面白いし、声・喋り方も可愛くて面白いので最高でした。
しかし、終わってしまったのでかなり残念でした。
その為新ドラは全く見てません。
一回見ての感想は「面白くねー」とか「はぁ??」とかでした。
それっきり見てません。
現在はTSUTAYAで旧ドラを借りてきて見てます。
まとめると新ドラはつまらないから旧ドラの再放送をまたやって欲しいですね。
 
 
 
「旧ドラ」の混乱 (おおはた)
2007-04-08 22:27:05
 KESさんへ。
 どうも勘違いされているようですが、私がこの記事で取り上げている「旧ドラ」は、日本テレビで1973年に放映された初代アニメ「ドラえもん」の事です。KESさんのコメントを読むと、どうやら大山のぶ代時代の作品を「旧ドラ」と呼んでいらっしゃるようですね。
 シンエイドラのリニューアル以前は、「旧ドラ=日テレ版」だったのですが、最近は大山版を「旧ドラ」と呼ぶ方が、少なからずいらっしゃるようで、昔から日テレ版の事を旧ドラと呼んできた私としては、少々混乱しています。

 なお、現在のわさドラについての私の考えにつきましては、当ブログでも何度も書いていますので、そちらをご覧下さい。
 
 
 
(ドラえもん) (ヨッシー)
2007-12-04 21:47:41
感動しましぁ~~~~
 
 
 
新ドラ ()
2008-10-15 15:28:27
たしかに大山のぶ代はすごいけど今は71歳なわけだからこのままやらせるわけにもいかないと思いますそうゆう点では声優交代は正しいと思います
 
 
 
ドラえもん (Unknown)
2008-11-10 01:38:20
わたしは日テレドラえもんのこと全く知らないので大山ドラえもんの声が良かったと思い今のドラえもんは前は興味がないので最近は少し気になる気分なので…´∀`ゝ

みんなは幻のドラえもんのこと全く知らなかったらしいね(^_^;)
 
 
 
Unknown (ワン)
2009-04-03 12:12:55
どうしても想像できないわさドラ世代の僕
 
 
 
想像は無理でしょう (おおはた)
2009-04-05 01:32:25
 ワンさんへ。

 想像できなくて当然だと思います。私も、実際に音声を聴いたり映像を目にするまでは、一体どんな物かとピンと来ませんでした。実物は、想像をはるかに超えたものでしたが。

 そのうち、大山ドラもピンと来ない世代が増えてくるのでしょうね。
 わさドラも丸4年ですから、すでに結構いるのかもしれませんが。
 
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