藤子・F・不二雄大全集 第2期 第1回配本 感想

 今年も、藤子・F・不二雄先生のご命日がやってきた。最近、忙しくてこのブログの更新も滞りがちになっているが、今日は何かを書いておかずにはいられない。
 昨年のこの日は、『藤子・F・不二雄大全集』第1期が刊行開始されて間もない時期だった。今、読み返すと当時の興奮ぶりが思い出される。
 それから一年。先月から全集第2期もスタートしており、もはや全集で毎月三冊の藤子・F・不二雄作品が刊行されることが当たり前になってしまった。そのため、昨年と比べると興奮度という点では落ち着いてきている。とは言え、2期ならではのトピックスとして『パジャママン』や『てぶくろてっちゃん』の初単行本化や『仙べえ』の刊行(個人的にはこれが一番楽しみかも)などがある。それ以外にも注目すべき巻が多くて、まだまだ毎月下旬になると全集を待ちわびてソワソワする日が続きそうだ。

 と言うわけで、今日は全集第2期第1回刊行分の三冊の感想を書いておく。翌日には第2回配本が出るのだから、遅くなってしまった。



・『ドラえもん』第9巻

 今回は、1969年度生まれ編。第1巻なみに分厚いので、正直ちょっと読みづらい。A5判だとバランス的に500ページくらいがストレス無く読める限界ではないかと思う。
 それはともかく、本巻にはついに「サカユメンでいい夢みよう」が収録されてしまった。『パーマン』の「タマより弱く」の時にも思ったが、代筆の絵を大きいサイズで見るのはちょっとつらいものがある。ただ、大きいからこそじっくり読みとれるという点では興味深い。代筆絵のうち、7ページ目(666ページ)は比較的F先生の絵に近い感じで描かれているが、8ページ目移行はいかにも代筆だなと言う絵で、アシスタントの個性が出てしまっている。
 あくまで推測だが、7ページ目はF先生による下絵がかなりの段階まで進んでいたが、8ページ目以降はラフな下書きしかなかったため、このようになったのではなかろうか。実際、最終ページ最後のコマは単行本化時にF先生による描き直しがされており、元は全く異なる構図だった。
 と、代筆の詳細を分析するのも面白いが、やはりファン心理としては単行本化で代筆部分は全て直して欲しかった。あと、全集では但し書きで代筆について何らかのアナウンスがあるのかと思っていたが、『パーマン』『ドラえもん』ともに、今のところ何も触れられていない。これは、ちょっと気になった。今後、全編代筆の回もF先生の案である限りは全集に収録されると思うが、初めて読む人はどう思うのだろう。



・『オバケのQ太郎』第6巻

 「小学一年生」掲載編。低年齢向けではあるが、対象年齢と関係なく楽しく読めた。大部分の話が単行本化されていなかったのが不思議なくらいだ。ネタが他の話と被るものも散見されるので、それを考慮した結果だったのかも知れないが。
 本巻では正ちゃんがはっきり小学一年生として描かれており、明らかに「週刊少年サンデー」連載版よりも幼く見えるのが興味深い。サンデー版ではQちゃんよりやや年上っぽく見えるが、小一版ではQちゃんとほぼ同年代に見える。と言うことは、Qちゃんの精神年齢が小学一年生なみと言うことか。学校ごっこをはじめとして、少年サンデー版よりさらに対等の立場で一緒にあそぶQちゃんと正ちゃんがとても微笑ましい、そんな一冊だった。



・『21エモン』第1巻

 本作は藤子不二雄ランドですでに雑誌掲載順に全話が収録されているので、今回はあまり目新しい部分はないかと思っていたが、巻末の特別資料室が非常に充実していて、読み応えがあった。つづれ屋の年表では、『ドラえもん』の「オンボロ旅館をたて直せ」にも登場した19エモンが、比較的若くして亡くなっていることを知って、ちょっとショックだった。
 また、作品本編にもFFランドとは微妙に異なる部分があった。「あやしい客」は初めて前後編がそれぞれ別れて収録されたので後編の1ページ目が陽の目を見たし、「おせっかいロボット」も扉絵(モンガーについての解説)が復元されている。さらに、「おせっかいロボット」はFFランド版がかなり出来の悪いトレスだったので、原稿が無くなっているのではないかと心配していたが、今回はちゃんと原稿が使われていたのは嬉しかった。
 次巻は未単行本化作品の『モンガーちゃん』が収録されるし、本編も1巻ともどもこれまでと異なる編集になっている部分がどれだけあるのか、楽しみだ。
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