八戸鉄道・バス研究会別館ブログ

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過疎バスでの規制緩和の歪み

2006-01-04 | その他のバス
今日のYahoo!ニュース地方交通のカテゴリーに下記のような記事が出てました。

Yahoo!ニュース 
規制緩和 市場原理、過疎に冷たく 民間いいとこ取り!?

 「民間で出来ることは民間で」と小泉純一郎首相が大号令をかける規制緩和。郵政民営化、公務員削減など「官から民」の響きは勇ましいが、過疎地は降ってわいた市場原理に揺れている。【田後真里】
 ◇週末・祝日参入「村営」に打撃…鬼怒川温泉・路線バス
 栃木県日光市に近い鬼怒川温泉。そこにある東武鉄道の駅前に二つのバス停留所が並ぶ。いずれも路線は同じで同県栗山村の奥鬼怒温泉郷入り口の女夫渕(めおとぶち)温泉までを約1時間45分で結ぶ。
 停留所の一つは、栗山村が運行する村営バス。片道2100円。もう一つは民間のしおや交通(栃木県塩谷町)で500円安い1600円。しかも、しおや交通の出発時間は村営バスより5分早く設定されている便が多い。
 温泉を訪れる観光客には両者の区別はつきにくい。「看板で1600円と書いてあるのに高い運賃を請求された」と東京都墨田区の会社員(27)。そんな抗議めいた声が村営バスとの提携クーポンを発売する旅行会社にも相次いでいる。
 栗山村は86年に撤退した東武バスを引き継ぎ、鬼怒川温泉駅-女夫渕温泉間(約48キロ)を2台のバスで1日計5往復運行する。平日は高齢者や村外通学の高校生、週末は観光客らが利用。村の人口約2050人の約3割が65歳以上の高齢者。同村の岩川千代さん(75)は「通院に毎日使っている」と重宝がる。
 00年の道路運送法改定で、バス事業が免許制から許可制へと緩和され、しおや交通は昨年7月に参入した。平日は運行せず、観光客の多い土、日曜と祝日に限って1日3往復を走らせる。増渕岩男社長は「安ければ客は喜ぶし、国の規制緩和政策にもかなう」と語る。
 しかし、栗山村の財政事情は苦しくなった。住民生活課によると、しおや交通が参入した昨年7月から同年12月18日までの土、日曜と祝日の同路線利用者は約3500人。うち約980人がしおや交通に流れた。観光シーズンの同年8月の1カ月間で収入は04年8月に比べて95万5980円減少した。
 村営バスは3年前から赤字が続く。04年度の運賃収入は前年度比約1000万円減った。週末と祝日を民間に狙い撃ちされ、赤字がさらに拡大するのは必至だ。
 村議会は昨年12月に運賃値下げの条例改正案を全会一致で可決。鬼怒川温泉駅-女夫渕温泉間が今月20日から、しおや交通より100円安い1500円になる。しかし、値下げに伴い1000万円を超す減収が予想されるという。
 バスを民間委託しようにも「(赤字の)平日に運行される保証がない。住民の足確保は行政の務め」(住民生活課)。山越梯一村長は「今の国の政策は都市中心の発想で、山村地域は競争原理のひずみにさらされ、弱体化するばかりだ。官から民へと言うが、効率性だけでは住民生活を守れない」と強調する。
 同村は今年3月20日に周辺4市町と合併し、バス事業を日光市に引き継ぐ予定だ。
 高崎経済大の大島登志彦教授(経済学)は「(栗山村の事例は)明らかな民間の“いいとこ取り”だ。規制緩和は過疎地に適さず、対策が必要だ。競合を放置すると低コスト、低運賃によって運行の安全が保たれなくなる恐れがある」と話している。(毎日新聞1/4)


乗合バスの規制緩和での競争激化は、高速バスでは福島県や瀬戸大橋絡みでの事例は多数あり、一般路線バスでは首都圏や近畿圏で貨物事業者やタクシー事業者が参入して競合している事例がありますが、地方バスで、かつ過疎地域での事例というのは聞いたこともありませんでしたが、今回のような事例もあるのですね。
今回の事例は、まさしくクリームスキミングと言われる事例の典型的なパターンで、これは何も規制緩和の実施前からもあったようなものです。
ただ規制緩和実施前は、同一地域同一運賃の原則がありましたので、運賃格差を設けることはできませんでしたし、途中経由地も含めて同じ路線に参入するといったことは殆ど不可能でしたので、途中経由地を少し変えて参入して競合関係になることはありましたが、今回のように廃止代替バスに他社が参入して競合関係になるケースというのは、おそらく全国的にも稀なケースでしょうね。
今回の舞台となった路線には、私も過去に乗車したことがある村営バスでしたが、土休日でもそれほど多くの利用者が乗る路線ではありませんでした。
しかし、沿線に温泉地や観光地を抱えているため、今では利用者が集まるようになってきたのかもしれませんね。
土日だけの運行ということだと、貸切による乗合行為の所謂21条を適用し、運行期間を限定しているバスだと思われます。
生活路線として運行している村営の廃止代替バス、片や観光客目当てだけに運行している民間バスでは、とてもじゃないですが、太刀打ちできないのは当たり前ですね。
はっきり言えば、民間バスは「良い所取り」しているだけですからね。
こういうバスを取り締まるというのは、今の法律では不可能に近いです。
というのも、免許の上では運行する路線が生活路線なのか、観光路線なのかという判断できないからです。
まぁ、行先や途中経由地を見れば分かるのではないかという意見もあるかと思いますが、それは許可する上での判断材料には関係ありません。
村営バスも対抗策で運賃値下げを行うようですが、村営バスのため村議会を通して物事を決めなければいけないのがリスクですね。
民間なら極端ですが、「明日から運賃値下げしよう」ということができます。まして「しおや交通」のような小さな会社であれば、尚更運賃値下げを決めるのは即決できますからね。
同じことを行政サイドでやるというのは無理ですから。
そういえば、この記事を書いていてきまぐれさんがレポートしている十和田タクシーと秋北バスのことを思い出しました。
こちらは運賃は変わらなくても、クリームスキミングの一端が垣間見得る事例ですからね。
ダイヤと運賃絡みで勝負を挑まれると、競合関係が泥沼化していくのが目に見えてます。
乗客からすれば、どのバス会社が走ろうが関係なく、目的地にきちんと着けば良いのですから。
乗合バスの需給調整規制が廃止されて5年が過ぎました。
そろそろ国土交通省も本腰を入れて、泥沼化するような競合関係については調停役に入るとかの見直しが必要なのではないでしょうか。

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4 コメント

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きちんとした調整役が必要ですね (homme)
2006-01-05 22:29:16
こんばんは。

簡単にコメントさせて頂きます(^^ゞ



個人的には規制緩和によって生じた問題は、付け焼き刃的な施策の結果だと考えています。段階を踏んでの施策であるというのが念頭に置かれているのであれば、HIROさんがおっしゃるとおりに、見直しをするとか、調整をしていく必要があると思います。



現段階ではやはり国交省がその調整役としてその責務を全うする必要があるでしょうね。



興味深い記事でした。
規制強化地区も必要 (HIRO)
2006-01-05 22:44:05
hommeさん、コメントありがとうございます。

私の勝手な私見ですが、バスの規制緩和については全面的に賛成ではありません。

むしろ今回のような国交省が想定外と思うような事例については、規制強化をすべきと考えてます。

イギリスではロンドンの中心部は規制緩和されていない例もありますが、日本は国が許認可権限を持っているため全国一律ですね。

そろそろ許認可権限についても、県内路線のみは地方自治体に委譲しても良いのではないか?

というのが私の考え方です。

それができないのであれば、国交省は調停役として真摯に対応すべきだと思ってます。
確かに規制も必要です (homme)
2006-01-06 00:20:54
再度hommeです。

確かに地区によっては規制を強化する必要があるかもしれませんね。また同一県内のみの路線を地方に委譲する件についても賛成です。

何でも国が対応してしまうと、杓子定規になってしまい、実情にあわない「スキマ」事例が出るのは当然の結果だと思います。

難しい問題ですが、地域の生活、環境問題など、多くの問題を含みますから、公共交通全体としても大事な課題ですね。

すみません、とりとめがなくなってしまいました(^^ゞ
規制の善し悪し (HIRO)
2006-01-06 21:37:25
hommeさん、コメントありがとうございます。

規制緩和というのは、もともとアメリカの圧力で始めたことがきっかけですので、どうしても日本の風土には合わない部分があるのではないかと思ってます。

でも、国交省は調停役として役割を担う部署がちゃんと省内に設けられているんですよね。

しかし、今までその部署が調停役を買って出たとの話を聞いたことがありません。

今回の事例はまさに調停役が出るものとして処理されても良さそうな気がしますが・・・。

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