母の文字 2005-05-07 | 林の詩・文 ・・・母の文字・・・ 貧しくて小学4年までしか通えなかった母 学校の先生の子の子守して 教室をのぞいていたという母 女工さんになって 消灯時間になってからは 廊下の薄暗い電灯で本を開いて勉強したという母 3年半前に脳梗塞で倒れて 空き家になっていた実家に行ってみたら たくさんの文字 連絡先を書いた何枚もの紙 好きな言葉を書いた紙切れ 手紙の下書き 自分の生い立ち 姉妹のこと 生んだ子供のこと 死んでしまった子供のこと たくさんの たくさんの言葉や文字が 静かに住んでいました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・2003年9月 作・林・・・・・・・・ Copyright(C) 2005 hayasi. kaze no bibouroku. All rights reserved blogランキング
「秘密」 千家元麿 2005-05-07 | 好きな詩・短歌 小供は眠る時 裸になった嬉しさに 籠を飛び出した小鳥か 魔法の箱を飛び出した王子のやうに 家の中を非常な勢ひでかけ廻る 襖(ふすま)でも壁でも何にでも頭でも手でも尻でもぶつけて 冷たい空気にぢかに触れた嬉しさにかけ廻る 母が小さな寝巻をもってうしろから追ひかける 裸になると小供は妖精のやうに痩せてゐる 追ひつめられて壁の隅に息が絶えたやうにひっついてゐる まるで小さく、うしろ向きで。 母は秘密は見せない様に 小供をつかまへるとすばやく着物でつつんでしまふ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ こどもの日がおわって明日は母の日。 「日本詩歌集・平凡社・昭和34年7月11日発行 旧かなづかいのまま。 blogランキング