葉山町インサイダー

のどかでゆったりとした毎日が過ぎてゆく。All has gone. 葉山の人のぬくもりが感じられる今日この頃です。

葉山町は賠償せよ、との高裁判決の要旨。当初の答弁書の要旨。

2012年12月23日 | 注目の裁判

 

平成24年12月19日判決。

平成24年<ネ>第419号 第2050号。各損害賠償請求控訴、同付帯控訴事件

<原審 横浜地方裁判所平成21年<ワ>第415号 430号。

口頭弁論最終日 平成24年10月31日。

 

東京高裁の判決要旨。


争点①葉山町の責任の有無について

結論 葉山町は債務不履行責任を負うものでないが、不法行為責任は負うべきものと判断する。

 

1債務不履行責任について  責任はない。

 本件覚書は控訴人ら(横須賀市 三浦市)および被控訴人(葉山町)が一部事務組合を設立することについて、さだめるものの同組合の設立時期については別途協議するものとしておあり、具体的な義務の内容を定めるものとは言い難い。また平成19年3月6日に承認された基本計画案は費用負担等の重要な案件が決定していないものであり、正式な基本計画案とすることについて、披控訴人は町長選挙による新町長の選出後に決済を得るよていであった。そうすると、平成18年2月1日に本件協議会の規約を締結したことや、平成19年3月29日に本件覚書を締結したことにより、何らかの契約が成立したとはいいがたい。したがって本被控訴人は債務不履行による責任を負わない。

 

2不法行為責任について  責任はある。

地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、その施策が社会情勢の変動によって変更されることは当然であり、地方故郷団体は原則としてその決定に拘束されない。しかし、上記内容が単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して、上記施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告、勧誘を伴うものであり、かつその活動が相当長期間にわたる当該施策の継続を前提として、はじめてこれに投入する資金または労力に相応する効果を生じるものである場合は、上記特定の者は上記施策が活動の基盤として維持されるものと信頼して準備活動に入るのが通常である。

このような状況下では、たとえ勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に上記施策の維持を内容とする契約が締結されたものとして認められない場合であっても以上のような密接な交渉をもつにいたった当事者間の関係を規律すべき信義衡平の原則に照らし、その施策の変更に当ってはこのような法的保護があたえられなければならない。(最高裁判例昭和51年)

 社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合は、地方公共団体において、損害を補填するなどの代償的措置を講ずることなく、施策を変更することは、それがやむを得ない客観的事情によるものでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、違法性を帯び、不法行為責任を生じせしめるものといわねばならない。地方公共団体の施策決定の基盤を成す政治情勢の変化をもってただちに前記のやむを得ない客観的事情にあたるものと解すべきではない.


 

争点②損害及び因果関係について

1本件協議会における2年間に渡る協議は無駄になった。 無駄ではない

 地裁判決の通り、2市の基本計画案は2市一町のときの基本計画案とくらべ、縮小されたのは1割程度であり、不燃ごみ施設の建設を横須賀市が引き受けたところがちがうだけである。2市のごみ処理基本計画案は2市一町の基本計画案を利用できる部分が相当程度あると推認できる。

2人件費について、 認められない。

一審判決の通りである。

業務に従事した職員は常勤職員である。出向させて、その補充があったとしても、それだけでは、補充があったとはいえない。その部分を損害額とすることはできない。

おおよその額すら算定は困難である。

 ==========原審=======

請求金額

◎人件費
横須賀市 18・19年度9人。96300千円
三浦市 18.19年度4名  39495千円

====================

 

3協議会経費について  3分の1認定

損害額の認定の基準として協議会の事務経費を採用する。

たとえ、事務組合の設置について議会の協力が得られないとか、費用負担等について合意に至らないとかの理由で、2市一町のごみ処理広域化計画が頓挫し、難航する可能性があったことも否定できない。この事情を考慮すると、不法行為と因果関係にある損害額は控訴人らが負担した各経費の3分の一とみとめるのが相当である。

==========原審=======

◎事務経費
横須賀市 10165千円
三浦市   2009千円

====================

 

横浜地裁の原判決は葉山町に対して、

横須賀市に330万円

三浦市に65万円

の賠償金支払いを命じている。



 参考 原審における葉山町の答弁書要旨<2010年5月20日 当ブログ)

http://blog.goo.ne.jp/hayama_001/e/990cb842ab20759cbce1172e1e14ac28


      第415号損害賠償請求事件

 

原告 横須賀市

被告 葉山町

答弁書

横浜地方裁判所第4民事部合議係

 被告訴訟代理人 弁護士 岩橋宣隆

         弁護士 工藤昇

         弁護士 三枝重人

請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求を棄却する

2訴訟費用は原告の負担とする

との判決を求める。

 

以下被告の主張

①はじめに  本件はまさに前代見聞の訴訟である。

 憲法92条地方自治の本旨に反する。地方公共団体の施策は住民の意思に基づきおこなう という住民自治の原則は、その組織及び運営に関する基本原則であり、将来にわたって継続する施策でも、それは社会情勢の変動で変更されることがあることも当然である。地方公共団体間の共同事業は、相互の意思を尊重し、民意による変更おも想定し、これを尊重するのが原則である。首長の交代、施策変更、有権者の意思、について国家や他の地方公共団体が損害賠償を求めて、それを拘束することは原則的にできない、とするのが憲法92条の地方自治の本旨の帰結である。

 本件のような不当な請求が認容されれば、およそ地方公共団体間の共同事業は、不可能になってしまう。この訴訟の結論は、民主主義社会の根幹を揺るがしかねないきわめて重要なもの¥なのである。

 

②本件の前提となる事実。ゴミ施設は計画通りにはゆかない。

・          ゴミ施設は住民の反対運動により計画通り建設されたものはない。

・          南部処理工場は7年間の抗争があった。

・          野比の最終処分場は公害審査会への申し立てで、結局建設を断念した。

・          4市1町のゴミ処理広域化計画は8年間の協議の後に分裂した。

・           

③          債務不履行への反論

1.2市1町ごみ広域化協議会は具体的内容は合意されていない。

2.2市1町の1部事務組合設立の「覚書」は努力目標にすぎず、具体的内容が合意されていない。

3.4市1町の広域連合設立準備協議会は、締結して5年後に破綻している。2市1町より具体的内容があるが、職員を派遣していた横須賀市、三浦市はなんら

損害賠償請求をしていない。もし事情変更で分離されたら、合意違反、信義即違反として、損害を請求するとするならば、2市1町の「覚書」作成時に解除、脱退の手続きを盛り込むべきであった。しかし現実には、破綻、分離の後なのに、より具体性のない内容になっている。

4「覚書」の債務不履行はない。

・1部事務組合は設立されていない

・解除、脱退の手続き、損害賠償お規定がない。

・施設建設費、維持管理費の負担割合、特に均等割り部分が決まっていない。

・予定施設の立地も決まっていない。

・          各自治体でパブリックコメント手続きが行われている。その結果反対が多ければ、民意に従い、脱退もありうる。

・           

④          不法行為、信義即違反への反論。

1.地方公共団体間の共同事業の覚書は民意による変更を想定している。

(ア)    憲法に定める住民自治の原則は、首長に対して有権者の選択への責任が、他の自治体への責任より、優先すべきこととしている。

(イ)    本件の覚書の当事者は財産権の主体である私人ではなく、憲法により設立された憲法の地方自治の本旨に基づき運営されなければならない地方公共団体である。

(ウ)    従って、自治体間の共同事業の覚書は民意によって変わることが予定されている。市町村合併時の協議会脱退があったが、職員派遣した自治体が「水泡に帰した」として損害賠償請求した例がない。

 

2.ごみ問題の特殊性

ア ゴミ施設の建設は不確実性のかたまりである。横須賀市内で南部処理工場、最終処分場、北部処理工場で紛争、計画変更、建設中止があった。2市1町の場合は320億円の建設費を必要とするが、住民のチェックが入り、監査請求の対象もなる。その結果変更が予想される。

イ.2市1町のごみ処理基本計画では施設の立地すら不明である。今後反対運動で‘  建設されなくなることも予想される。そのときでも損害賠償をもとめるのか・・

ウ.                                                        選挙による有権者の意思による自治体の方針変更と住民による反対運動、議会の否決による協議会脱退の例がある。<岡山県美作市>

3.  「覚書」の趣旨は、広域協議会らの脱退の自由も想定されている

ゴミ処理は本来自治事務であり、各自治体に決定権がある。派遣された職員は調査研究し、結果を情報公開し、首長や民意により、具体的な計画の合意、参加するか否か決定するのが決定プロセスである。今回の離脱は、組合設立前であり、肝心な、負担割合決まっていない段階での離脱である。

4.被告は一方的に破棄したのではなく、自区内処理の原則を選挙で公約して、当選した。いわば住民の意思により離脱したのであって、その選択は地方公共団体の政策決定の裁量の範囲内に属する。

5.財政難のおり、被告は負担割合をゴミ搬出量割合だけを主張し、均等割りは0を主張していた。搬出量割合だと、被告の負担は15.5億円だが、均等割り10%だと21.3億円、20%だと27億円になる。これにはランニングコストは入っていないし、建設費のみの試算である。現実に横須賀市、三浦市の基本企画によれば、均等割りは23%で三浦市の負担はさらに重くなっており、小さな自治体として多額の負担を強いられている。

6被告の町内に建設するとされていた不燃ごみ選別施設等が横須賀市が建設する生ゴミ資源化、焼却施設、より稼動が3年も早くされていることについて実現の可能性に疑問がある。被告の施設は現クリーンセンターにつくる予定だが、そうすると焼却施設がなくなるため、その3年間横須賀南部処理施設に焼却を依頼しなければならない。ところがこの南部工場には地元住民との「公害防止協定」があり、他市のゴミは受け入れないとの条項がある。地元久里浜町内会は改定の意思が全くなく、被告のごみ受け入れの保障は全くない。

 

7.      広域化計画の矛盾点

(ア)    施設の立地について、候補地も明らかにされていない。

(イ)    横須賀南部焼却工場は、他市のゴミは受け入れない、プラスチックの混入率は5%となっているが、基本計画はこれに違反している。

(ウ)    横須賀市内に1日440トンの生ゴミ資源化施設を建設するために解決しなければならない問題がある。

(エ)    生ゴミ資源化施設は住友重機械工業株の1社だけの技術であり、それを2市1町が引き継ぐ合理的な理由がないにもかかわらず、計画にはすでに入っている。

(オ)    1日440トンの生ごみ資源化施設の稼動実績が国内にはない。

(カ)    1日440トンの施設をいったん作ってしまうと440トンのゴミを維持してゆかなければならない。ゴミの減量化ができなくなる。

(キ)    国の交付金申請のもととなる「循環型社会形成推進地域計画」を選挙結果をまたずに送付するのは疑問である。

 

⑤ 。相当の因果関係はない。

1.18年、19年の人件費等について、協議会の業務に従事したのであるから、その分は損害だと主張するが、これらの職員は新たに雇用したものではない。協議会を作らなかった場合と比較して、余分な人件費を支出したという事実も証拠もない。

・彼らの業務は、広域化の計画策定作業、検討の調査事務であり、その結果にもとずいて、首長や住民に広域化すべきかどうか、その方法について判断材料を提供するのが職務である。被告が不可能と判断したこともその結果であり、けっして水泡に帰してしまったわけではない。

・さいたま地裁の判例<H17・5・25判決、18・7・2最高裁不受理>

 解散した市町村合併協議会の派遣職員に支払った給与は自治体の事務の一環であり違法な支出とはならない。

2.2市1町の2年間の事務、経費は無駄ではない。

 13年4月設立の4市1町広域連合設立準備協議会は5年間の研究の結果解散。鎌倉市と逗子市の2市分離により数億円の人件費は水泡に帰したはずだが、損害賠償請求の訴えはない。

ところが18年2月設立の本件2市1町は2年間でゴミ処理広域化計画を作成して20年5月解散した。

しかし横須賀、三浦両市はその8ヶ月後、21年2月に新たな2市によるごみ処理広域化計画を策定した。これは2市1町時代の2年間の研究成果をいかしたものであり、決して水泡に帰していないのである。

 具体的には、不燃ごみ施設を横須賀市に作る、負担割合を均等割り23%にする、

総ごみ量が減ったこと、維持管理費が1.5倍になったこと、だけである。

これらから、2市1町時代の研究成果があればこそ、わずか8ヶ月で計画が策定されたなによりの証拠である。

 

⑤          損害はない

 

よって、原告らが主張する2市1町の人件費、経費は水泡に帰したものではなく、賠償の対象となる損害とはいえない。

 

 

以上が答弁書の概要である。

コメント。

この答弁書は、おそらく3月に横須賀市長選に立候補したため辞任した呉東弁護士が書いたものだろう。彼は、常に憲法問題にして、戦うのがすきな弁護士である。今件も、地方自治の本旨と、自治体同士の事業が住民により選ばれた首長の公約で、容易に変えうるとの立場で一貫している。

反論の主要部分は、本ブログの読者は、すでにお分かりだとおもうが、すでに数回にわたり論点は指摘しているところであり、目新しいのは、さいたま地裁の判例と岡山県美作市の具体例ぐらいである。

今後、前町長が証人として出頭するかどうかであるが、この答弁書では出廷しなければ解明できない問題がある。

 


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