山の頂から

やさしい風

父の手袋

2009-12-14 22:57:55 | Weblog
 夕方、実家に出向いた。
母は既に夕食を済ませ私を待っていた。
「箪笥を整理していたら父さんの手袋が出てきたの」
生前、父が2~3回程はめたらしい。
一日干したから、モモの散歩に使ってという。

 私の手は、およそ女の手には似つかわしくないほどに大きい。
骨太でゴツゴツしていて可愛気がないのだ。
働き者の手と自慢をするが、見るからに不器用そうな手である。
なんと!父の手にソックリなのだ。

 帰り道、父が入院していた病院の前を通る。
いつもそうだが、そこを通るたびに喉の奥がつまるのだ。
病室から帰る度に、父の手を握り【気】を送った毎日。
母も、妹も毎日そうした。父が元気になって欲しくて・・・

 家に着いてから、そっと手袋を嗅いでみた。
父の匂いはしなかった。
懐かしい陽の匂いがしていた。
父さんは、高みに行ったんだ。ポツンと一粒涙がこぼれた。