ミサイル防衛~まず全ての原発停止、燃料は地下管理すべきです

ミサイル防衛~まず全ての原発停止、燃料は地下管理すべきです

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2017年3月30日広島地裁(吉岡茂之裁判長、久保田寛也裁判官、田中佐和子裁判官)は、伊方原発3号機の運転差し止め仮処分について、住民側の申し立てを却下しました。

決定文の中で、弾道ミサイル攻撃について裁判所は、「ミサイル対策について」として、
ミサイル攻撃等の大規模なテロ攻撃に対しては、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律等に基づき、緊急対処事態として国が対策本部を設置し、原子力災害への対処、放射性物質による汚染への対処等にあたり、債務者を含む原子力事業者は、国と連携してこれに対処することとしている。債権者らの主張は、「確立された国際的な基準」により要求されるものではないばかりか、事実上、絶対的安全性を求めるものに外ならず、失当である。
と記述しています。

裁判所は、事実上、原発へのミサイル攻撃等の「具体的危険性」について、議論すること自体、避けています。ミサイル攻撃等による「具体的危険性」があることは明らかなのに、おバカで無責任な裁判官たちだと思います。

2017年3月28日、大阪高裁(山下郁夫裁判長、杉江佳治裁判官、吉川愼一裁判官)は、
「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、高浜原発3号・4号の運転禁止を命じた大津地裁(2016年3月9日)仮処分決定と、関西電力の異議を退けた7月12日決定とを取り消す判断を下しました。

決定文の中で、弾道ミサイル攻撃について裁判所は、
「ミサイル攻撃については、国が原子力災害への対処等に当たることとされ、抗告人(註:関西電力)は国と連携して対処することにしている。」
また、抗告人(註:関西電力)は、
「テロリズムによる大規模損壊によって本件各原子力発電所が受ける被害範囲は不確定性が大きく、予めシナリオを設定した対応操作は困難であると考えられることなどから、周辺環境への放射性物質の放出低減を最優先に考えた対応を行うこととし、可搬型設備による対応を中心とした対策手順を整備した」
「抗告人のこれらのテロリズム対策は、原子力規制員会から新規制基準への適合性の確認を受けている」
「以上によれば、『テロリズム対策』に関する新規制基準が不合理であるとはいえないし抗告人の本件各原子力発電所におけるテロリズム対策の状況を考慮しても、本件各原子力発電所の安全性が欠如しているとはいえない」
と記述しています。


しかし、原子力規制委員会は、田中委員長自ら、戦闘機による武力攻撃や。弾道ミサイル攻撃への対処は、炉規法(原子炉等規制法)や新規制基準が求めるものではない、と国会答弁しています。ですから、新規制基準への適合性を確認しても、意味はありません。

戦闘機による武力攻撃や弾道ミサイル攻撃による「大規模損壊」によって、周辺環境へ、どのくらいの放射性物質が放出されるかについても、全く想定されていません。

それどころか、田中規制委員長は、厳しい事故を想定しても、放射性物質の放出量は、福島第一原発事故の約1000分の1以下だと、国会答弁で断言しています。県や市町村の避難計画は、この放出量を想定してつくられているのです。

現在、日本の原発の「避難計画」は、福島原発事故の放出量の「1/1000以下」の放出量を想定して、作られています。新たな「安全神話」の復活で、リスクマネジメントとしてあり得ないと思います。


2015年12月24日の福井地裁(林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官)の、高浜原発3、4号機の再稼働の差し止め仮処分の取消し決定文の中で、福井地裁は、「本件原発が具体的に何らかのテロ等(註:ミサイル攻撃も含む)の標的になっていることをうかがわせる疎明資料もない」と言い切っていることは、裁判所が、原発の弾道ミサイル攻撃の「具体的危険性」について、全く理解していないことよく表しています。

いずれの裁判所も「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」と判断しており、原子力規制委員会が弾道ミサイル攻撃について「あずかり知らない」というスタンスを示していることと併せると、原発の弾道ミサイル攻撃に対する「具体的危険性」について、裁判所は考慮していないし、原子力規制委員会も電力会社も対処していないし、するつもりもなく、誰も対処していない、ということなのです。
何もわかっていない、トンデモ裁判官たちは、何の役にも立ちません。


原発への弾道ミサイル攻撃のリスクに対する国のスタンスを確認します。
最近の北朝鮮の弾道ミサイル発射に対して、菅官房長官は「北朝鮮の脅威は一つステージが高まった」との認識を示しました。

2017.2.12 日米首脳会談を狙って北朝鮮の弾道ミサイルが発射されました。
標的は在日米軍基地ばかりではない、と私は思います。福島第一も含め18ある日本の原子力発電所(もんじゅ含む)も、当然、標的となっていると、認識すべきです。

韓国がTHAADの配備先として、南東部の星州郡を選定した理由は、韓国の人口の最大3分の2をカバーすると同時に、原子力発電所、石油貯蔵施設が防衛の対象に入るから、ということですから、韓国政府は原発が弾道ミサイルの標的となることを十分に認識していることがわかります。

当然、日本も、原発がターゲットとなり得ると考えるべきです。
もちろん原発は、弾道ミサイルだけでなく、配管・燃料プール等への「テロ」のリスクも、高まっています。


ところが、原発への弾道ミサイル攻撃に対する備えは、全く、なっていません。というか、「なす術なし」というのが現状です。

私は、現職の参議院議員時代から、ずっと、原発への弾道ミサイル攻撃のリスクについて、言及し続けていますが、一向に政府の対応は前に進んでいません。何故ならば、結局、なす術がないからです。

原発の安全性を判断する原子力規制委員会は、原発への弾道ミサイル攻撃は炉規法(原子炉等規制法)の範疇ではなく、あずかり知らないという立場です。

防衛省は、武力攻撃事態の一つとして、原発への弾道ミサイル攻撃を想定し、破壊措置、ミサイル防衛システム、要撃機インターセプター、地対空ミサイルなどの対抗手段を準備しているようですが、その具体的な内容については、「手の内を明らかにすることになるので答えられない」というのが防衛省の答弁です。実際には、有効な手段がないことがわかってしまうので答弁できない、というのが正直なところでしょう。

国民の安全・安心を確保するための内閣官房「国民保護計画」は、どうでしょう。

内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付の、国民保護・武力攻撃事態の類型は、主に4つに分類されています。着上陸侵攻の場合、弾道ミサイル攻撃の場合、ゲリラ・特殊部隊による攻撃の場合、航空攻撃の場合、です。

弾道ミサイル攻撃については、このように書かれています。

弾道ミサイル攻撃の特徴
●発射前に着弾地域を特定することが極めて困難であり、短時間での着弾が予想される。
●弾頭の種類(通常弾頭であるのか、核・生物・化学弾頭であるのか)を着弾前に特定するのが困難。
●弾頭の種類に応じて、被害の様相や対応が大きく異なる。

弾道ミサイル攻撃の〈留意点〉として、
「攻撃当初は屋内へ避難し、その後、状況に応じ行政機関からの指示に従い適切に避難しましょう。屋内への避難にあたっては近隣の堅牢な建物や地下街などに避難しましょう。」
と記されています。

つまり、原発への弾道ミサイル着弾について、事前に為す術なし!というのが現実なのです。


関西電力の国民保護業務計画を見てみましょう。
「弾道ミサイルは、発射後短時間で着弾することが予想されるため、迅速な情報伝達体制と適切な対応によって、被害を局限化することが重要であり、屋内への退避や消火活動が中心となる。」と書かれています。

たとえ、格納容器を破壊しなくても、周囲の配管などが損傷したら、それでも、ブラックアウトの可能性もあるのに、「消火活動」って、いったい、なんなんでしょう???

そして、〈応急の復旧〉として、
「武力攻撃災害が発生した場合は、国民保護措置に従事する者の安全の確保をしたうえで、その管理する施設および設備の被害状況等について、緊急点検を実施するとともに、被害の拡大防止および被災者の生活確保を最優先に応急の復旧を行う」
と書いてあります。

ドローンでも想定しているんでしょうか。復旧できると思っているんでしょうか。お話になりません。甘すぎると思います。


次に、原発銀座、福井県の国民保護計画を見てみましょう。
原子力発電所の武力攻撃災害への対処
【想定】
●弾道ミサイル攻撃は、発射準備の兆候の把握により、事前に予測することができるが、攻撃目標の特定は極めて困難である。
●攻撃目標が判明した場合でも、極めて短時間で我が国に着弾することが予想され、弾頭の種類を(通常弾頭であるかNBC弾頭であるか)を着弾前に特定することは困難であるとともに、弾頭の種類に応じて被害の予想および対応が異なる。
※NBC〔Nuclear(核)・Biological(生物)・Chemical(化学)〕
●弾道ミサイルは、技術的な理由から、目標となる施設に命中する確率は低いが、本県にある原子力発電所が目標となった場合、着弾する可能性は否定できない。

【対処方法】
●知事は、国および関係機関との連携を強化し、通信体制を維持するとともに、弾道ミサイルの発射に関する情報の把握および県民に対し冷静に行動するよう広報に努める。
●知事は、住民に対して、地下施設、堅牢なコンクリート施設、気密性の高い部屋等への屋内避難(or屋内退避)の指示を行う。

このように書いてあります。

対処方法は「冷静な行動」。なす術なし!ということですよね。

北朝鮮のミサイル攻撃能力は明らかに向上してきているのに、原発への弾道ミサイル攻撃に対しては、まるで、ドローンでも飛んでくる程度の発想でしかない。消火活動、応急の復旧を行う、復旧できると思っている、冷静に行動することが、対処方法だなんて、、、対処にもなんにもなっていません。

原発は、弾道ミサイル攻撃や、配管、燃料プール等も含めたテロなどに対しては、なす術なし、なのですから、一日も早く、原発を止めて、ドライキャスクで地下に燃料を保管するしかないのです。


一方、東京電力は、福島第一原発事故の処理費用を賄うため、東京電力が作成している再建計画の中で、「原発再稼働で、1基あたり500億円の利益となる」、というトンデモ認識を示しています。原発の再稼働を前提に1基あたり500億円の利益を見込んでいるというわけですが、福島第一原発事故の責任もとれないのに、再稼働で500億円の利益とは、どの口が言っているのでしょうか。よく言ったものです。

柏崎刈羽原発が立地する新潟県の国民保護計画には、このように書いてあります。
新潟県は、
(1)約624キロメートルにも及ぶ長い海岸線を有していること
(2)対岸諸国との往来の拠点となる港湾・空港を有していること
(3)世界一の発電量を誇る原子力発電所を有していること
(4)過去に北朝鮮による拉致被害事案が発生していること
(5)過去に国際テロ組織「アルカイダ」のメンバーが潜伏していたこと

2002~03年にかけて4回にわたり、偽造旅券で来日し、新潟市内のマンションに潜伏。
などから、新潟県がテロの標的とされる可能性は、必ずしもゼロとは言い切れないかと思います。「かと思います」って、何なのよ・・とつっこみたいところですが、
新潟県は、原発がテロの標的になっていることを、一応自覚しています。

柏崎刈羽原発を再稼働するということは、テロのターゲットとして自ら名乗りを上げるに等しく、弾道ミサイルが着弾しても、事実上、なす術なし、なのですから、東京電力は、まったく考えが甘いと思います。
東京電力の経営のために、国民をリスクにさらすことなど、許されません。


我が国の弾道ミサイル防衛BMD(Ballistic Missile Defense)は、イージス艦、PAC3、の二段構えに、現在、THAADやイージス・アショアなどを配備して、三段階とすることが検討されています。イージス艦は、大気圏外、高度100キロ以上となる最高高度500キロで弾道ミサイルを迎撃する「SM3」を搭載し、日本全域をカバーしています。現在、我が国は米国の84隻に次ぐ6隻配備しています。

地上配備型の「パトリオット」(PAC3)は、高度15~20キロで迎撃するもので、現在、航空自衛隊の高射隊に配備されています。

さらに、イージス艦とPAC3の隙間を埋める形で、現在、配備が検討されている、THAAD(Terminal High Altitude Area Defense missile/終末高高度防衛ミサイル)は、高度40~150キロの間を防護します。イージス艦SM3の地上版、イージス・アショア(Aegis Ashore)は、2~3基で日本全域をカバーすると言われていますが、いずれも、配備するとなると数千億円から1兆円と高額で、費用対効果の観点から、有効な配備について、検討されているところです。

しかし、これらのミサイル防衛システムは、能力的にそれほど期待できるものではありません。

配備そのものが一定の抑止力になっているにすぎません。北朝鮮が日本を標的として弾道ミサイル攻撃を仕掛けて来る、来たならば、日本の国民の安全は、どのように確保されるのでしょうか。
まずは、即刻原発を廃止し、燃料をドライキャスクで地下管理すべきだと、私は思います。


北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が一段階ステージが上がった現在、自民党内などで敵基地攻撃能力(反撃能力)の整備について議論が始まりました。

「敵基地攻撃論」の合憲性については、昭和31年2月29日の鳩山一郎総理答弁(衆議院内閣委員会、船田中防衛庁長官による代読)が、根拠となっています。

「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」

この答弁は、弾道ミサイルが日本を標的に、まさに発射されようとしていることを察知した場合、日本がその段階で敵基地を攻撃することは、専守防衛の範囲内である、ということを意味しています。

私は、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に対して、まず行うべきことは、標的となって、日本壊滅のリスクとなり得る原発を、直ちに廃止することだと思います。北朝鮮は、単発の発射ではなく、2発3発4発それ以上と連続でミサイルを発射する、しかも、固体燃料となり発射準備を察知してからミサイル発射まで、時間が短縮されたことなどを考慮すると、いまや、日本の原発は、その存在自体がリスクなのです。

日本国民の安全・安心を確保するために、原発に弾道ミサイルが着弾した場合、なす術なし、なのですから、即刻、原発を廃止し、燃料を地下管理すべきです。


日本のミサイル防衛については、指向性エネルギー兵器が開発中です。
民主党時代の鳩山由紀夫氏が、「レーザー防衛網構想」「アジア太平洋地域集団安全保障構想」を語っていた時は、「夢物語」と言われていましたが、今では現実味を帯びてきています。
専守防衛のミサイル防衛のために、実現を目指すべきだと思います。

●高出力レーザー
100kW級が試験中。数km以内の無人機、小型ボート等を無力化できる段階
●電磁パルス(実戦配備まで5~10年)
レーダの出力を倍加し、そのエネルギーを使って、突入してくる弾道ミサイルの弾頭部に集中することにより、その内部の電子部品等の性能を破壊し機能をマヒさせる。
●レールガン(実戦配備まで10年)
リニアモーターカーと同じ原理で、電磁誘導により砲弾を加速し、従来の数倍以上のエネルギーで打ち出し、直接敵のミサイル弾頭に命中させ破壊する。米軍では、近距離防御用の兵器として艦艇に搭載し試験中。

原発への弾道ミサイル攻撃の「具体的危険性」について、事前の備えも、対処方法も、まったくなっていない、なす術なしの状態です。北朝鮮の脅威はステージが上がり、北朝鮮の暴走を誰も抑止することができない現状を考えると、もはや、原発は即刻停止、全ての燃料を、即刻、ドライキャスクで地下管理するしかないと思います。原発は日本にとって全く必要性がなく、日本壊滅のリスクでしかありません。


はたともこのPPPA「原発必要なし、電力需給検証報告書より9電力検証

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