スマトラ大津波のその後 2月25日

スマトラ大津波のその後の復興は、難題山積だ。日本や欧米諸国から見るとまだまだ復興の道筋すらついていないような状況なのに、諸外国の軍隊やNGOが、インドネシアから撤収しつつある。

1月末にようやくバンダアチェに到着した自衛隊の医療支援部隊は、ドイツ軍が既に手術もこなす大型医療テントをはって活動していたことに比較すると、完全に遅きに失した感を否めなかった。それでも、行かないよりは良く、自力復興が極めて困難であることが予測された現地においては、自衛隊の活躍の場は大いにあったはずだった。しかし、防衛庁は今日、バンダアチェの主力部隊を3月10日には撤退することを正式に決定した。インドネシア政府が、外国部隊の駐留は3ヶ月間としたことを受けてのことだ。

現地バンダアチェで取材を続ける日本人記者によると、寸断された道路網の復旧工事は、一向に進まず、運良く生き残った点在する村々への物資の供給は、ヘリに頼るしか術はなく、外国軍隊が撤退することは、現地住民にとっては死活問題ということだ。それでも、当初からインドネシア政府は、外国部隊の排除に躍起だ。インドネシア政府は、被災した自国民の立場には、立っていない。世界中から集まった63億ドルにものぼる善意の募金が、今どのように分配されているのか、考えるだけでも恐ろしい・・・。

アチェ州は、独立武装組織「自由アチェ運動(GAM)」が、インドネシアからの分離独立を目指して20年以上闘争を繰り広げている地域だ。インドネシア政府にとって、海外からの支援を受けるGAMの動きを封じ込めるには、復興がままならなくても1日も早く外国人部隊を撤収させることが最優先なのだ。そのようなインドネシア政府の事情に呼応して、まったく初動の鈍かった自衛隊が、僅かの期間でそそくさと撤収することが、真の人道支援と言えるだろうか。被災し苦しむ人たちを見殺しにできるほど、日本人は冷徹ではないはずだ。しかし、インドネシア当局の方針に逆らって、諸外国の部隊が援助を継続することは無理だ。

ここは、国連のリーダーシップが問われる時だ。津波の襲来を、内政統治の手段として、これ幸いと利用するインドネシア政府の誤った方針を、ただせるのは国連しかない。このままでは、インドネシア政府だけが、「TSUNAMI太り」するだけだ。日本政府も、目をそらすことなく、当局に対して言うべきことは言い、人道支援の真髄を極めて欲しいものだ。パフォーマンスだけの政治は、うんざりだ。

アナン事務総長の名すら挙がった、国連執行部の利権不正には、正直あいた口がふさがらないが、それでも腐っても国連は国連なのだ。国連はこのような事態にこそ、唯一無二の存在意義を発揮して、人命救助と最低限の社会生活を営むことができるまでの復興への道筋を、迷わず打ち立てていかなければならないのだ。日本政府も、拡大P5入りへの志をあらためてかみしめて、被災者に心を寄せ、国連への働きかけを惜しむことなく、果たすべき任務をしっかりとまっとうしてもらいたいと強く願う。
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