TPP・ISDS条項と多国籍製薬メジャーワクチンについて

TPP協定が発効したら、協定第9章投資の第B節・投資家と国家との間の紛争解決
いわゆるISDS(Investor-State Dispute Settlement)条項によって、日本政府による子宮頸がんワクチンの勧奨中止政策に対して、投資家であるワクチン製造販売元の外国法人2社(GSKグラクソ・スミスクライン社とMSD社・米国メルク)が、それぞれ数百億円規模以上の損害賠償請求をする可能性があり、仲裁裁判となれば、WHOの勧奨再開を求める再三の声明もあるので、日本政府に不利な裁定となるのは、ほぼ確実ではないか、と思います。

実は、日本の予防接種法で法定接種となったワクチンで、TPPのISDS条項発動の可能性のある外資・多国籍製薬メジャーが製造販売するワクチンは、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)以外にも沢山あります。
2013年4月、HPVワクチンと同時に法定接種となったHib感染症ワクチン・アクトヒブは、
フランスが本拠地の多国籍製薬メジャーであるサノフィ社の製品であり、小児用肺炎球菌ワクチン・プレベナーは、世界最大の製薬会社であるファイザー社の製品です。

また、2014年10月から定期接種となった高齢者の肺炎球菌ワクチン・ニューモバックスはMSD社(米国メルク)、今年10月から定期接種となったB型肝炎ワクチン・ヘプタバックスもMSD社(米国メルク)です。

また、定期接種ではない任意接種ですが、ロタウイルスワクチン・ロタテックはMSD社(米国メルク)、同じくロタウイルスワクチン・ロタリックスはGSK社です。

2013年以降に、新たに法定接種となったワクチンを外資・多国籍製薬メジャーの製品がほぼ独占するのには理由があります。アメリカ政府からの強い要求があったからです。

アメリカ政府が日本政府に対して、日本国内での規制緩和を、2001年以来一貫して求め続けた「日米年次改革要望書」は、2009年、政権交代を実現した鳩山由紀夫内閣によって廃止されました。しかし、次の菅直人内閣によって、2011年2月に「日米経済調和対話」として復活したのです。

2011年2月の「日米経済調和対話」の米国側関心事項「ワクチン」の項目には、
【ワクチンに対するアクセス】
日本全国におけるワクチンの供給を促進する長期的解決策を見つけて、2010年に採用されたHIB、肺炎球菌、HPVワクチンについての措置を拡充する
【透明性】
推奨ワクチン特定のための明確な基準およびスケジュールを設け、新ワクチンの日本の患者への導入を迅速化する
【ワクチンに関する意見書】
二国間の協力および意見交換を通じ、国のワクチン計画の策定に対する日本政府の取り組みを促す、
と書いてあります。

2012年1月の「日米経済調和対話協議記録・概要」の「ワクチン」の項目には、
【ワクチンに対するアクセス】
日本国政府は予防接種制度の改正を進めているが、厚生労働省は、Hib、肺炎球菌、HPVワクチンを定期接種の対象に含めることについて十分考慮しつつ、2010年以降実施し、これら三つのワクチンへのアクセスを改善した緊急促進事業を踏まえ、対応していく
【ワクチンに関する意見交換】
2011年7月26日、日米両国政府は昨年に続き2年目となる日米ワクチン政策意見交換会を開催し、日米双方のワクチン政策の短期的・長期的目標への理解を深めるための対話を行った。議題には、米国予防接種諮問委員会(ACIP)や、日米両国でのワクチンの安全性に関する論点が含まれた。日米の当局者は、ワクチン政策に係るこのような意見交換を継続することへの関心を共有した、と書いてあります。
最近の多国籍製薬メジャーのワクチン導入について、米国政府の強い要求があったことは間違いありません。

※「日米ワクチン政策意見交換会」は、「PhRMA米国研究製薬工業協会」が大きく関わっています。2014年6月18日には東京で記者説明会を実施し、「日米ワクチン政策意見交換会」の一環として、ブルース・ゲリン氏(米国保健社会福祉省保健次官補 兼 国家ワクチンプログラムオフィス所長)と、メリンダ・ウォートン氏(米国公衆衛生局大佐 CDC国立予防接種・呼吸器疾患センター所長)が子宮頸がんワクチン推進を強く呼びかけています。

現在では、定期接種で30回超、任意接種も含めると約40回のワクチン接種に、保護者の皆さんも不安を持っていると思います。いまや、ワクチンは、「人間の安全保障」の問題です。多国籍製薬メジャーの利益追求活動に、日本の赤ちゃんの生命をあずけることはできません。日本国の責任で、ワクチンの安全性・有効性・必要性、費用対効果を全面的に再検証して、日本のワクチン政策を抜本的に見直すことが必要なのではないでしょうか。


TPP・ISDS条項と子宮頸がんワクチンについて


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