財政再建への一歩 3月13日

横田めぐみさんの「遺骨」をめぐり、DNA鑑定という最新のサイエンスで北朝鮮をやりこめて以降、北朝鮮の日本に対する敵視政策は輪をかけて露骨になった。日本単独での経済制裁は、益々、北朝鮮を硬化させることになる。外国籍船舶への損害保険料の義務化は、北朝鮮籍の漁船の事実上の締め出しにはつながっても、中国や韓国を迂回するなどあの手この手を駆使する北朝鮮。何を言っても何をやっても、北朝鮮との関係はいたちごっこだ。

更に、北朝鮮問題に一丸となって取り組まなければならないはずの中国や韓国でさえ、最近は日本に対する風当たりを強くしている。竹島の領土問題を機に再び戦後補償問題を持ち出したノムヒョン大統領。尖閣諸島やODA円借款をめぐり、中国との軋轢も加速する一途だ。延び延びになっていたロシアのプーチン大統領の訪日も、北方領土問題での日本の姿勢の変化が見られないうちの来日は、ほぼなくなった様子。

極東地域との連携も言ってみるばかりで、むしろ日本と周辺諸国との関係は冷えゆく一方だ。そして、小泉総理の独壇場であった最後の頼みの綱であるはずの日米関係も、牛肉輸入再開問題で一気にクールダウン。とうとう、小泉外交も行き詰まりを見せ始めた。

内政に眼をやると、小泉総理の掲げる郵政民営化は、国土の7割を占める中山間地域の住民にとっては、すなおに支持できるものではない。郵便局員は、公務員であるが故に信頼も厚く、自らの給料を自ら稼げる唯一の公務員である。郵便局がこれまで培ってきた信頼と実績を、今後も更に発展飛躍させる方策を探るべきとき、民営化という選択肢はあり得ないはずだ。

構造改革の最大の目玉は、財政投融資が垂れ流される特殊法人の全廃にある。小泉総理のキャッチフレーズが、「郵政民営化」ではなく「特殊法人全廃」であったなら、迷わず支持していたし、国民の理解と支持も圧倒的だったに違いない。しかし、今更、突き上げた拳をおろすわけもなく、小泉総理は、このまま国民のみならず多くの国会議員の理解も得ることなく郵政民営化をお題目のように唱えていくのだろう。もはや、政権は末期の装いだ。

ライブドアが700億800億とニッポン放送株の買占めに投資する株式市場を横目に、日本の政府債務は刻々と増えつづけている。30兆円の赤字国債と地方の赤字10兆円で、合計40兆円にものぼる国と地方とを合わせた毎年の財政赤字。40数兆円の税収に対してプライマリーバランスを実現するためには、20兆円近くのギャップの穴埋めが必要だ。政府の本音は、税収増加の見込みと増税にある。

しかし、一方で依然として続くムダな公共事業。国と地方とを合わせて40兆円にものぼる公共事業費の例えば3割を削減することは、決して不可能なことではない。我が国の公共事業費は、GDP比で欧米の2~3倍を占めている。いかに、政治と公共事業がズブズブに癒着しているかがわかる。更に、公務員給与総額の削減も至上命題だ。郵便局員は、自ら給料を稼げるが、その他の公務員は居眠りをしていても国家や地方自治体が給料を保障してくれる。既に民間レベルを超える公務員の所得水準を、1割はカットしてもらわねばならないし、団塊の世代の大量リタイアの後は、新規採用の抑制による人員削減も必要だ。公共事業の3割削減と公務員給与総額の3割削減で、ほぼ20兆円を捻出できるはずだ。

地方分権や教育問題も含め、我が国が取り組むべき課題は山積している。政府は言うに及ばず、現政権にこれらの課題を現状から大きく一歩踏み出す能力があるかというと甚だ疑問だ。誰がやっても難しい問題であることに違いはないが、議員生命をかけて命がけで取り組む覇気と姿勢が必要なのだ。民主党が政権をとれるとすれば、10年間で40兆円の国と地方とを合わせた財政赤字をゼロにするという決意と実行力を、国民に認められる時でしかない。
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