中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

うつ病の「引き金」物質

2020年06月16日 | 情報

うつ病の発症 ウイルスが持つ遺伝子が関与している可能性

2020611日 NHK

 

うつ病の発症に、多くの人が幼い頃に感染する「ヘルペスウイルス」が関係している可能性があるとする
研究成果を東京慈恵会医科大学のグループが発表し、
うつ病発症のメカニズムや治療薬の開発などに役立つと期待されています。
この研究を行ったのは、東京慈恵会医科大学の近藤一博教授らのグループです。

 

グループでは、多くの人が子どもの頃に感染する「ヒトヘルペスウイルス6」というウイルスが
脳の一部に感染すると、ウイルスが持つ「SITHー1」という遺伝子が強く働くことを突き止めました。

そこで、マウスの脳でこの遺伝子を人為的に働かせたところ、
マウスの行動が変化し、うつによく似た症状がみられることが確認されたということです。

さらにグループが、うつ病の患者84人と健康な人82人の血液を調べたところ、
うつ病の患者では79.8%の人でこの遺伝子が強く働いている反応があったのに対し、
健康な人では24.4%だったということです。

このためグループでは、このウイルスの遺伝子が強く働くことが、
うつ病の発症に関係している可能性があるとしています。

近藤教授は「これまで、うつ病の原因は、はっきりとは特定されていなかったが、
ウイルスが関与している可能性が分かった

さらに研究が進み、発症の詳しいメカニズムが解明できれば、
新たな治療薬の開発などにつながるはずだ」と話しています。

 

うつ病の「引き金」物質、確認 疲労でウイルス覚醒→SITH1作る 東京慈恵医大

20.6.14 朝日

 

過労や強いストレスが、なぜうつ病を引き起こすのか
この謎の鍵を握るたんぱく質を、東京慈恵会医大が確認した。
このたんぱく質の存在が確認された人は、そうでない人に比べ12・2倍うつ病になりやすかった。
研究チームはうつ病の血液検査法の開発や発症の仕組みを調べる手がかりになると期待している。

 

慈恵医大の近藤一博教授(ウイルス学)らは長年、疲労とウイルスの関係を調べ、
疲労が蓄積すると唾液(だえき)中に「ヒトヘルペスウイルス(HHV)6」が
急増することを突き止めていた。

HHV6は、赤ちゃんの病気である突発性発疹の原因で、
ほぼ全ての人が乳幼児期に感染し、以降ずっと体内に潜伏感染している。
普段は休眠しているが、体が疲れると、HHV6は目覚め唾液中に出てくる。
その一部が口から鼻へ逆流する形で、においを感じる脳の中枢「嗅球(きゅうきゅう)」に到達し、
再感染を起こしていた。

近藤教授らは、再感染すると、嗅球で「SITH1(シスワン)」というたんぱく質が作られ、
この働きで脳細胞にカルシウムが過剰に流れ込み、死んでいくことを培養細胞やマウスの実験で突き止めた。
さらに、嗅球の細胞死によって、記憶をつかさどる海馬での神経再生が抑制されていた。

ストレス状態に置かれたマウスが、逃げる行動をあきらめるまでの時間を計る
「うつ状態モデル」とされる実験では、嗅球でこのたんぱく質が作られるようにしたマウスは
通常のマウスより早くあきらめ、抗うつ剤を与えると、通常マウス並みに戻った。

また、計166人の血液で、このたんぱく質があることの証明になる
「抗体」を調べるとうつ病患者の8割で確認され、量も健常人に比べ、うつ病患者で極めて多かった

成果は米科学誌「アイサイエンス」で11日公表された。

 

「アイサイエンス」誌

https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(20)30372-2

 

 

 

 

 

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(参考)上司が取るべき4つのサポート

2020年06月15日 | 情報

EAP大手のアドバンテッジ リスク マネジメント社HPより引用させていただきました。

本来であれば、厚労省や医師会から同様の情報を発信していただければ良いのですが。

 

在宅勤務の部下を襲う「コロナうつ」上司が取るべき4つのサポート

2020.05.19 

https://www.armg.jp/

 

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、従業員へ在宅勤務や自宅待機を指示する企業が増えています。オフィスへの出社が制限されることで、働き方が変わりストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。

一方で、医療従事者や自治体の担当者、生活必需品の販売従事者などで、「外出を控えたいけど、自宅で仕事をすることはできない」ために、感染への不安やストレスを抱えながら働いている人も増えています。

ここでは、このようなストレスを「コロナストレス」と呼ぶことにしましょう。人間はコロナストレスがたまると、気分の落ち込みや意欲減退や眠れないなどの症状が体に現れ、「コロナ疲れ」に陥ります。そして、コロナ疲れの対策を講じないと「コロナうつ」になる可能性があります。

そこで今回は、「なぜコロナうつになってしまうのか」「働く人がコロナうつにならないためにどんな対策をとったらいいか」についてお話しします。

 

人間は脅威に遭遇すると「闘争・逃走反応」が起きる

 

ストレスの原因を「ストレッサー」といいます。人間の脳はストレッサーを認識すると「闘争・逃走反応」が起こります。

たとえば、あなたが森の中を歩いていたときにクマに遭遇したら、どうするでしょうか。「クマに遭遇する」という日常生活では考えられない厳しい状況に置かれると、人間は脅威を感じます。

人間はこうした脅威に遭遇すると、自分の身を守るために(ロールプレイングゲームの世界と同様に)「たたかう」か「にげる」を選択しようとします。つまり、その脅威は脳から自律神経に伝えられ、すぐに動けるよう体が緊張して心臓の鼓動は速くなり、血圧が上がります。

また、相手をよく見るために瞳孔は拡大し、呼吸は激しくなります。さらに、手足の発汗や体の震えが止まらなくなります。これが闘争・逃走反応です。

「たたかう」を選択した場合、クマに勝てば闘争・逃走反応は解消されます。「にげる」を選択した場合、クマから逃げ切ることができれば闘争・逃走反応は解消されます。

 

「闘争・逃走反応」を我慢し続けると「うつ」状態に陥ってしまう

 

職場で「ストレッサー」に出会った時は、何が起こるでしょうか。職場では、「たたかう」や「にげる」を選択するのは現実的ではありません。上司から厳しいことを言われたときに上司と「たたかう」、つまりケンカをするわけにはいきません。

また、「にげる」ためにその場で辞表を出して仕事を辞めることも少ないでしょう。多くの人は、上司に厳しいことを言われても、「じっと我慢する」のではないでしょうか。

つまり、闘争・逃走反応を解消せずに我慢し続けるという選択を取ります。これがストレスを生み、ストレス状態が続くことで職場に来られなくなり、ついにはうつ病などのこころの病で休むことになるのです。

それでは、今世界中で大流行している新型コロナウイルスに対しては、どのように反応している人が多いのでしょうか。

 

「コロナうつ」の原因はコロナ疲れの長期化

 

新型コロナウイルスというストレッサー(脅威)に対しては、多くの人が「にげる」を選択し、外出の自粛や自治体からの要請による休業などを実行しています。また、企業は従業員へ在宅勤務や自宅待機を指示し、感染拡大を防止しようとしています。

しかし、「にげる」を選択してもストレッサーから完全に逃げ切るまでは闘争・逃走反応が続きます。すると、次第に従業員の間には次のようなネガティブな感情が増幅してきます。

・「この状況はいつまで続くのだろう」という不安感

・「自分ではどうしようもない(解決できない)」という無力感

・「在宅勤務はいつもとやり方が違って難しい」という負担感

・「自分は自宅で仕事をサボっている」という罪悪感

これらの感情がコロナストレスを生み、長期化することでコロナ疲れに陥るのです。そして、コロナ疲れを放置していると、コロナうつにまで発展してしまいます。

 

在宅勤務が「コロナうつ」の社員を生み出しやすい理由

 

このような非常事態の中、部長や課長などいわゆるマネジメント層と呼ばれる組織の管理監督者に求められているのは、部下のケアです。在宅勤務や自宅待機では、会議や「ホウレンソウ」などの情報共有を対面では行えません。多くの方は、メールや電話、オンラインミーティングで代用するでしょう。

こうした非対面のコミュニケーションには、デメリットがあります。今まで直接部下の顔を見たり、リアルな声を聞いたりすることで、「いつもと違うな」と部下の不調に気づくことができた人も、部下の不調を見落としてしまうケースが増えてしまうのです。

そこで、在宅勤務中でも部下の心身の健康状態を確認する具体的方法を紹介します。

 

部下のコロナうつを防ぐため上司は「心身の健康状態」をチェック

 

まずは、部下へ次の3点を伝えましょう。「部下のプライベートを侵害するつもりはない」ということを理解してもらうことがポイントです。

・ 仕事環境の変化が心身の健康に影響を与えること、「今、あなたのことを心配している」ことを伝える

・ 「あなたの健康状態を確認したい」ことを伝え、本人の了承を得る

・ プライベートの事情や家族の内情など「話したくないことは話さなくていい」ことを伝える

そのうえで、部下の心身の健康状態を確認してください。ちなみに、労働契約法第5条で事業者には労働者に対する「安全配慮義務」が課されています。

部下の健康状態を確認せずに、部下が不調になった場合に「債務不履行」や「不法行為」で訴えられるケースがあります。

部下の心身の健康状態は以下の3点に絞って確認します。具体的に話を聞くことが大切です。

・生活習慣(睡眠の状況、食事の状況や食欲、運動の状況)

・体の症状(頭痛や肩こりがないか、消化器系の症状、疲れの状況)

・困っていることや悩み(仕事や家庭・プライベート)

もし部下の不調につながるような気づきがあった場合は、まずは部下自身からの相談を受けましょう。

普段の職場で相談を受ける場合は、上司が声をかければ、すぐに部下からの相談されることが多いかもしれませんが、在宅勤務の場合は家族の問題や家計の問題などプライベートの事情も絡んでいるので、部下から相談しにくいとも考えられます。そこで次の3点に注意して相談を受けてください。

・あらためて「今、あなたのことを心配している」ことを伝え、仕事上で困っていることがないか確認する

・併せて「仕事上でサポートできることがないか」を確認し、のちほど説明する「4つのサポート」を的確に与えるよう心掛ける

・プライベ-トの相談を受ける場合は、(ケースバイケースですが)「問題解決につながらないかもしれない」「聞くだけになるかもしれない」ことを前提に聞き、入り込みすぎないように注意する

相談を受けたうえで、自分では対応できないと判断した場合は、上長に相談してサポートを受ける、または組織内の産業保健スタッフにつなげます。なお、「部下の物理的な職場環境や情報リテラシーは個人によって違う」ことを理解し、特に部下が仕事におけるハード面で困っていることを詳しく聞き取るようにしましょう。

 

在宅勤務中、上司が部下にするべき4つのサポート

 

部下から仕事で困っていることや悩みを聞き取りしたときは、「4つのサポート」で部下のコロナストレスを緩和しましょう。4つのサポートとは、「情緒的サポート」「情報的サポート」「道具的サポート」「評価的サポート」です。

具体的に説明していきましょう。「がんばってるね」「お疲れ様」などと声かけをしたり、「大変だよね」「感染拡大が終わるまでの辛抱だよ」などと慰めをしたり、その人の愚痴を聴いてあげるなど、本人の情緒を安定させることを目的にしたサポートが「情緒的サポート」です。

そして、本人の普段の仕事のことで効率的な仕事の進め方についてアドバイスをしたり、「この仕事は○○さんが詳しいから聞いてみたら」と本人が必要とする専門家を紹介したりするなど、問題解決に役立つ情報を与えるのが「情報的サポート」です。

また、本人の仕事を職場のメンバーで手伝うなど、問題解決のために直接本人に物質的な手助けをするのが「道具的サポート」です。

さらに、「よくがんばったね」「いつも助かっているよ」と本人の努力をほめたり、仕事の結果を適切な人事考課で評価したりするなど、仕事の良い点や適切さを本人にフィードバックするのが「評価的サポート」です。

この4つのサポートを効果的に部下に与えることで、在宅勤務や自宅待機で部下が抱えているコロナストレスを緩和していくことが重要です。

 

部下とのリモートコミュニケーションで注意すべき3つのポイント

 

最後に、在宅勤務や自宅待機をしている部下とのコミュニケーションで注意すべきポイントを3つ紹介します。

1つ目は、「在宅勤務や自宅待機をすることの意義について理解させる」ことです。在宅勤務や自宅待機が感染拡大の防止につながること、組織としてのリスク対策として長期的な利益になることをしっかり伝え、「自宅にいることに意味がある」と自覚させてください。

2つ目は、「リアルなストレスとバーチャルなストレスがあることを理解させる」ことです。

慣れないリモートの仕事が難しい、お金に困っている、家族の人間関係がうまくいかないなどのストレスは、仕事に慣れる、お金を借りる、家族との関わり方を変えるなど、自分の行動を変えることで軽減できます。これがリアルなストレスです。

ところが、「自分も感染して病気になるのではないか」「外出の自粛はいつまで続くのだろう」「これから日本の経済はどうなるのだろう」などの不安は、行動ではなく「自分の考え方」を変えないと軽減できません。

このようなバーチャルなストレスについては、「連日状況が悪化しているようなネガティブな情報を刷り込むようなニュースや報道番組を見すぎない」ことをアドバイスすることも必要です。

3つ目は、勤務が元に戻ったときのために「出勤していたときと同じ規則正しい生活を送るのが大切だと理解させる」ことです。

「外出の自粛はいつまで続くのだろう」などというバーチャルなストレスに結びつくネガティブな考え方は、規則正しい生活を送ることを阻害する要因になります。

「出口のないトンネルはない」「春の来ない冬はない」「いつかは元の生活に戻れるだろう」というポジティブなつぶやきを自分で言い聞かせせるようアドバイスし、少しでも早く職場に戻る準備を促すことが部下に対して上司が今やるべきことでしょう。

 

 

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在宅勤務と「ズーム疲れ」

2020年06月12日 | 情報

アメリカの場合です。日本も同様でしょうか?

コロナ禍の新常態 在宅勤務と「ズーム疲れ」
ニューヨーク 河内真帆 2020/6/1 日本経済新聞

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)を機に人との付き合いが制限され、在宅勤務や遠隔教育が続くなか、精神的な疲労に悩む人が増えている。パソコンかスマートフォンがあればどこからでも参加できるビデオ会議が急増したことで、これまでとは異なる緊張を強いられるようになったからだ。米国では、最も利用されているビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」をもじった「Zoom fatigue(ズーム疲れ)」という新語まで登場している。

シカゴ市で公立のミドルスクールに通うコウボウ・ナカ・ミハエリ君(12)の学校は3月半ばに閉鎖され、オンライン学習に移行した。とはいえ、先生がライブで指導するのは多い日で1日3回ほど。1回の指導は40分程度で、あらかじめ出された宿題と課題を15人のグループごとにビデオで学習するだけで、あとは全て自習だ。自宅にパソコンのない家庭に公平を期すためで、学校と生徒の距離はすっかり遠くなった。

「先生がそばに居ないことがとても不安のようです」と母親のキミヨさんは話す。算数の問題の解き方がわからずに泣き出したこともあった。しかたなく動画投稿サイト「ユーチューブ」で検索し、解説を見ながら親子で解決したという。

オンラインでのミーティング予定などを忘れないようにグーグルカレンダーに記入するなど母親が一緒にスケジュールを管理しているため、キミヨさんの負担も増えている。そんな毎日にコウボウ君もリモート授業より「学校に行く方がずっと勉強しやすいな」とため息をつく。

■ビデオ会議、隣人にも筒抜けカナダのモントリオール市にある研究機関でリサーチャーとして働くミケーラ・ドルヤードさんは毎日、仕事の打ち合わせを上司と一対一でビデオ会議で行う。「ちょっとした音声の切断や画像のぶれ、対面ならあり得ない細かな障害」にストレスを感じるという。また、アパートをシェアして暮らす自宅では、他の住人にも会話が筒抜けになってしまい「隣人に聞こえていると思うと、仕事の内容やプライバシーに関して自己意識過剰になってしまう」と気疲れが絶えない様子だ。

人々のストレス解消を助けるはずの仕事も例外ではない。

ボストン郊外でヨガインスタラクターとして働くニール・タイラーさんは、従来のスタジオレッスンを「ズーム教室」に切り替えた。自らがカメラの前でしっかりとポーズをとって指導する必要があるため、「2カ月で3キロもやせた」と苦笑する。レッスン中に飼い犬が「教室」に飛び込んでこないようにドアにカギをかけたり、在宅勤務の妻とズームの時間帯が重ならないように調整したり、と毎日余計な手間がかかり、気疲れは募る一方のようだ。

米労働省の2018年の調査によると、米国でテレワークをしている人の割合は労働人口の23.7%だった。調査会社のギャラップによると、3月中旬時点で職場から自宅勤務かフレックスタイム制度を選択肢として与えられた人の割合は39%だった。だがこの数字も、3月末時点では57%まで急増したという。また、4月上旬時点でのテレワークの割合は62%となり、同社が調査を始めた3月中旬時点から倍増したという。

データ分析会社スタティスタが3月に行った調査では、米国で最も利用されている仕事仲間との通信手段は1位のメールに続き、2位にはズームやグーグルハングアウトのようなビデオ会議が浮上した。

■至近距離で顔を見続けるストレス

実際、ズーム利用者は過去4カ月で30倍の3億人超と急成長を遂げた。メールアドレスなどを登録してアカウントさえ作れば無料で利用できる簡易さもあって、仕事以外での用途が広がったことも利用者増に拍車をかけた。米国内で外出制限が始まった3月半ばには、ズームを介したリモートでの「飲み会」や「ダンスパーティー」など多くのイベントが開催されるようになった。米グーグルや米フェイスブックもビデオ会議システムの開発・導入に乗りだし、利用者の選択肢も増えた。

ではなぜ、ビデオ会議ツールを使うとストレスがたまるのだろうか

スタンフォード大学のコミュニケーション学部教授でバーチャルリアリティー(VR)の専門家、ジェレミー・ベイレンソン氏が、「ズーム疲れ」のメカニズムを解説してくれた。同氏は「ズームでの会議中は参加者の顔をずっと凝視することになる。ずらっと並んだ他人の顔を見続ける一方、自分も常に凝視される」ことが誘因になっていると指摘する。

脳は人の顔に特に注意を払うようにできている。しかも実生活の中でクローズアップされた顔を見るのは、ごく親密な関係にある人だけに限られる。画面上でこれをずっとやり続けることは、相当な疲労につながる」と分析するベイレンソン教授は、こんな結論を引き出した。「仕事の生産性を高めるソフトウエアは、社会的な人間関係を模倣するのには向いていないということだ

■まだ不慣れな日常とデジタルツール

だが、パンデミックが収束しても在宅勤務へのシフトは続き、ビデオ会議の利用機会も増えそうだ。同時に、自宅待機の長期化をきっかけに、米国でも精神的不安やうつ病、アルコール依存症、家庭内暴力など心と体への影響が多岐に広がっている。プライバシーを確保できずに、家族との関係が悪化したという話も多く耳にする。コロナ禍で一変した日常に、慣れないデジタルツールが入り込んで来たとなれば、人々が抱えるストレスが増幅してもおかしくない。

コロンビア大学国際公共政策大学院のスティーブン・コーエン教授は「世の中がどんどん変わればコミュニケーションの方法も変わる。ビデオ会議もその一つだ。新しいことを学ぶという好奇心が大事だ」と話す。

本来、デジタルツールは仕事の効率アップや日常生活を豊かにするためにある。ビデオ会議ツールは職場だけでなく、学校や様々な社会活動でも活用が広がっていくだろう。コロナ禍を契機に「ニューノーマル(新常態)」が問われるなか、ズーム疲れに屈することのないよう、ビデオ会議ツールとも上手に付き合っていく必要がありそうだ。

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「Zoom」の奴隷

2020年06月11日 | 情報

小職も「Zoom」のお世話になっていますが、確かに、奇妙なストレス感がありますね。

在宅勤務の新技術、奴隷にならずに済むには?
2020/5/22 日本経済新聞

石油メジャーの英BPが新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)中にリモートワーク用ソフトウエアの利用を拡大して以来、リチャード・ヘロン氏はマイナスの影響を軽減することに専念してきた。同社の最高医療責任者として、米マイクロソフトの対話アプリ「チームス」やインスタントメッセージを使ったオンライン会議の量が、全社で過去3カ月間に3倍に伸びる様子を追ってきた。

「技術の奴隷にならずに、技術の力をうまく生かすことが難しい」と同氏は言う。「我々は、人がノートパソコンを使って働く時間を増やすのを容易にするのではなく、端末から離れて休憩するのを手助けすべきだ

ビデオ会議や電子メッセージ通信、データへの遠隔アクセスは多くの人が自宅で働く助けになり、ある意味では顧客や同僚、上司、経営幹部との接触を増やすことに貢献した。だが、ヘロン氏は、身体的、精神的な健康に与える影響を抑えるために、もっと多くの管理職がこうした技術の利用を見守るべきだとくぎを刺す。

同氏の警告は、世間に広がる大きな懸念を反映している。技術は生産性維持・向上の手段となり、スタッフの福利を改善する新しいツールを提供している。だが、これまで試されたことがなく、マイナスにもなりえる影響ももたらす。その多くは、今になって初めて明らかになりつつある。

英キングス・カレッジ・ロンドン教授で、軍隊でのメンタルヘルスを専門とするニール・グリーンバーグ氏は、技術は「人々が今、自分は自宅で働いているのか、オフィスで寝ているのか疑問に思う」ところまで在宅勤務生活を一変させたと冗談まじりに言う。


2年間分の技術変化
「新型コロナは2週間で、2年分の技術的変化をもたらした。メンタルヘルスの観点から言えば、その適切な使い方を理解することがうまくいっていない。我々は技術には慣れた。これからは、心理的に健全な働き方に適応していかなければならない」

最初の課題は、間に合わせの環境での在宅勤務が身体の健康に与えるプレッシャーに取り組むことだ。ロックダウンの開始以来、700人以上の従業員を対象に実施した英雇用研究所(IES)の調査では、回答者の3分の1以上が普段よりも首、腰、背中の凝りや痛み、違和感を感じていることが分かった。

「多くの場合、台所のテーブルでノートパソコンを使って仕事をしている」。英職業医学協会(SOM)のウィル・ポンソンビィ会長はこう話す。「ここから多くの難題がでてくる。ノートパソコンは、18時間も使うように設計されていないからだ」

同会長は、雇用主はパソコンのキーボード、スクリーン、マウスから人間工学的に設計されたデスクやオフィスチェアまで、仕事に適した設備をスタッフに提供するか、あるいはスタッフが経費請求できるようにすべきだと薦めている。

医療専門家は、筋骨格疾患などの身体的な症状は往々にして、根本的なメンタルヘルス問題の引き金であると同時に代理指標でもあると説明する。姿勢を変えたり、集中したパソコン作業を中断したりするために、スクリーンから離れる時間を設け、体を動かす必要があると指摘する。

英ロンドンを拠点とし、職場のダイバーシティー(多様性)と思いやりを訴える活動をしているピンキー・リラーニ氏は、リモートワークは思いやりを行動で示す必要性をさらに高めたと主張する。「みんなの本当の様子を知るために、私は毎日5回電話をかけている」。「ウィメン・オブ・ザ・フューチャー」というプログラムを立ち上げ、代表を務めているリラーニ氏は、「技術はとても人間味がないように感じることがある」と語る。

 

■「Zoom」でストレス

英サセックス大学で産業・組織心理学の上級講師を務めるエマ・ラッセル氏は、「Zoom(ズーム)」のようなオンラインビデオ会議ツールは、従業員に普段の仕事に加えてストレスの多い「感情労働」を強いると強調するスクリーン上での自分の反応と同僚の反応に集中するからだ。

同氏は、仕事と私生活を区別するために、日中に明確に定義された時間割を設け、理想的には自宅内の別の場所で過ごすことを推奨している。定期的にスクリーンから離れること、「ソーシャル・エチケット」の新たな規則を設けることも勧めている。こうした規則には、「人が絶えず自分の振る舞いを規制する必要を感じなくてもいいよう」、会議中にビデオをオフにすることも含まれるかもしれないという。

ラッセル氏の同僚のチディエベレ・オグボンナヤ氏が手がけた研究は、在宅勤務のインパクトが人によって大きく異なることを示している。多くの内向的な人を含め、在宅勤務を歓迎する人もいる。だが、あまりきちょうめんでない人などは、職場での監督がある場合よりも精神的ストレスが大きいと報告している。

デジタルツールは在宅勤務者の助けになり、マインドフルネス認知療法や認知行動療法を提供するアプリや、不安感、うつ、メンタルヘルス問題に対するオンライン支援を提供する「ビッグ・ホワイト・ウオール」のようなサービスが増えている。

だが、従業員向けオンライン福利厚生ツールを提供する英ベター・スペース創業者のジム・ウッズ氏は、「汎用的な解決策は存在しない」と強調する。瞑想(めいそう)アプリなど、大半の個人向けツールはスタッフのうち比較的少数にしかアピールせず、アプリの利用は一般的に時間とともに減っていくという。企業は従業員に予算を与え、広いサービスの選択肢から長期間にわたり自分で自由に選べるようにすべきだと話す。

ポンソンビィ氏は、アプリは良い職場関係の代わりにはならないと警鐘を鳴らす。「福利にとって最も重要なのは上司との関係だ。自分が評価され、よく処遇されているという感覚、公平感といったことが大事になる」と言う。「管理職は手っ取り早い解決策を求めているため、失望している」

同氏をはじめとした専門家は、技術は短期的には在宅勤務の難しさを和らげたかもしれないが、長期的な影響は不透明だと指摘する。人事評価管理コンサルティング会社マインド・ジムのオクタビアス・ブラック最高経営責任者(CEO)はこう話す。「人々が燃え尽き、対処できず、疲弊し、脱落するにつれて、生産性が劇的に落ち込むリスクがある。そうした事態がかなり進むまで企業は気がつかず、立て直すのは難しいかもしれない

 

By Andrew Jack2020521日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2020. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

 

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産業医活動の留意点

2020年06月10日 | 情報

専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務するには、

産業医の職務の遂行に支障を生じない範囲内において行われ、

産業保健活動をそれら事業場で一体として行うことが効率的であること等の
一定の要件の下に認められています。
(平9.3.31付け基発第214号「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて」)

また、当該要件の一つである、専属産業医の所属する事業場と非専属事業場との
「地理的関係が密接であること」ついて、

「当該2つの事業場間を徒歩又は公共の交通機関や自動車等の通常の交通手段により、
1時間以内で移動できる場合も含まれるものとして取り扱うこととされています。
(平25.12.25基安労発1225第1号「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務する場合の
事業場間の地理的関係について」)

 

今般、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴って、
遠隔産業衛生研究会から嘱託産業医の皆様に向けての提言」が公表されました(20.4.6)

https://www.sanei.or.jp/images/contents/416/Information_JSOH-telemed.pdf

 

以下、メンタルヘルス対策を中心に概要を紹介します。

 

◎新型コロナウイルス感染症流行下において、訪問での産業医業務を行うことには次のようなリスクとベフィットがある。

リスク:嘱託産業医は臨床医を兼務したり、複数の事業場を巡回したりすることが多いため、事業場に感染を持ち込んでしまうリスクがある。さらに事業場訪問の際に感染し、院内感染を引き起こすリスクがある。

ベネフィット:事業所の現状の把握、さらに3密(密閉・密集・密接)の回避など感染予防対策の実施状況の確認については、現場・現物でのほうが行いやすいこと等が挙げられる。

 

◎産業保健の 3 管理、総括管理

1.作業環境管理

作業環境管理のうち産業医の職務として義務となっている職場巡視については以下のように提言する。

1-1)工場等有害作業またはそれに類する作業が行われている事業場に対する職場巡視

1 回の職場巡視を行うことを原則とする。ただし出務前に必ず産業医の体調確認を行い問題なくともマスクなどの着用下での実施を原則とする。また産業医の体調が不良の場合は巡視を延期する必要があるが、その場合でも労働安全衛生規則十五条はやむをえない場合(例えば産業医自身が感染者やその濃厚接触者である場合など)を除いては順守するべきである。

1-2)いわゆるオフィス等危険が少ない事業場の場合

労働安全衛生規則十五条を満たし、巡視以外の方法で労働者のおかれた作業環境に関する情報(たとえば、労働者の出勤割合、出勤している人の役職や業務内容、感染者発生に備え座席のレイアウトなど)を十分に把握できる場合は、2 月に 1 回の巡視にすることを検討する。
360 度映像リアルタイム配信サービスやスマートフォンによるビデオ通
話等は、ほぼ視覚情報のみに限られることやセキュリティについて配慮すれば、職場巡視の補助としては考えられるとする学会発表がある(黒崎ら第 29 回産業衛生学会全国協議会)

現状、職場巡視の代替にはなりえないが、情報把握の補助としてこのような方法を検討してもよいだろう。

2. 作業管理

作業管理についても、職場巡視については作業環境管理と同様に考えられる。

3.健康管理

健康診断事後措置や健康相談、長時間労働者やストレスチェック高ストレス者に対する面接指導などの健康管理については、遠隔での代替可能性を検討するよう提言する。
遠隔で
の代替方法としては、メールや書面郵送による指導、電話での面接、TV 電話や Web 会議システムを用いた面接などがある。

なお産業医の業務は医師法ではなく労働安全衛生法 14 条で規定されており、

その職務は医師法が規制する診療や治療などの医療行為に該当しないと解釈されている。
また、オンライン診療指針において、遠隔産業医面接は医療行為である「オンライン診療」ではなく、
「遠隔健康医療相談(医師)」の一つとして例示されている。
したがって、遠隔産業医面接は原則として医療行為に該当せず、非対面診療の禁止を定めた医師法 20 条との関係でただちに違法となるものではないと考えられている。

ただし面接に関しては、以下の点について注意が必要である。

3-1) 長時間残業、ストレスチェックの面接指導に関して

平成 27 年9月 15 日付け基発 0915 5 号の要件を順守すること。


 3.3-1)
以外の面接について

画質の確保、適切な音質、接続の安定性などが問題であるため対面のほうが遠隔面談に比べ優位であり、遠隔面接が直接対面に比肩するようになるにはまだ時間が必要であるという研究があり(北田 精神科治療学 34(2) 181-4,2019)、適応対象を選定する必要があることが指摘されている。また、診療分野では「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が存在しており参考にできる。以下に、準用可能な順守事項の抜粋を示す。ただし、初診は原則対面とする点については、オンライン診療自体も緩和される動きがあり、面接の内容によっては初回であっても良いものと考える(例:健康診断事後措置での保健指導など)。

*オンライン診療指針から準用可能な遵守事項

「適用対象」

・初診は原則として直接の対面による診療を行うこと

・急病急変患者については、原則として直接の対面による診療を行うこと

「診察方法」

・患者の状態について十分に必要な情報が得られていると判断できない場合には、速やかにオンライン診療を中止し直接の対面診療行うこと

・同時に複数の患者の診察を行ってはならないこと

・医師のほかに医療従事者が同席する場合は、その都度患者に説明を行い、患者の同意を得ること

・騒音のある状況など、患者の心身の状態に関する情報を得るのに不適切な場所でオンライン診療を行うべきではないこと

・第三者に患者の心身の状態に関する情報の伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならないこと(患者側も同様)

3-3) 対面で行う必要があると判断した場合は、感染防止に留意して実施するようにする。


4
総括管理

事業場の労働安全衛生マネジメントシステムの構築や運用に関して、産業医として適切な意見をのべる総括管理は、遠隔でも対応できることが少なくない。特に訪問回数が月に 1度程度の嘱託産業医は、日々刻々と変化していく科学的知見や現場・社会の状態にあわせ、積極的に遠隔で対応していくことが望まれる。

コロナウイルスによる生物学的曝露に伴う、労働者の安全衛生リスクを適切に評価してリスク低減を図るべく、産業医は、ウイルスを事業場に持ち込ませない、万が一持ち込まれても事業場内で感染連鎖を起こさないために適切な指導をすることが期待される。

また生物学的な災害ともいえる今回の事態に対する BCP 対応(感染者や疑い者が発生した場合に備えたチーム編成、事業場内のゾーニング等)に関する専門的意見も期待されよう。

 

4. 衛生委員会・安全衛生委員会(以下衛生委員会等)

衛生委員会等については以下の通り提言する。

4-1) 衛生委員会等が対面のみで行われる場合

令和 2 5 月末までは出席せず、議事録等で衛生委員会の内容を精査したのち意見を述べることを考慮に入れてもよい。

4-2) 衛生委員会等が TVWeb 会議等で行われる場合

産業医は衛生委員会に参加すべきである。ただし TVWeb 会議を利用するために出勤等を伴う場合はリスクとベネフィットを考慮に入れてどうするかを事業者と相談の上決めること。


5.
補遺

日本医師会においては産業医活動の優先順位があげられている。その中で産業医が行うべき業務については以下の 4 つである。【日本医師会「産業医契約書の手引き」P16 より】

・職場巡視を行うこと

・衛生委員会(又は安全衛生委員会)に参加すること

・健康診断およびストレスチェックに関する労働基準監督署への報告書を確認し、捺印すること

・職業性疾患を疑う事例の原因調査と再発防止に関し、助言や指導を行うこと

 

 

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