中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

大量精神薬で搬送156病院

2014年02月24日 | 情報
大量精神薬で搬送156病院
読売 14.2.11

本社調査 患者興奮 6割が経験

精神科の薬を一度に大量に服薬した患者の搬送を受けた救急医療機関が、2012年は全国で少なくとも156病院に上り、
うち約3割にあたる46病院は年間50件以上搬送されていることが、読売新聞の調査でわかった。
服薬したのはいずれも医療機関でしか処方できない薬で、抗うつ薬、睡眠薬などの処方のあり方が問われそうだ。
昨年11月、全国の救命救急センターと日本救急医学会の救急科専門医指定施設の計498病院にアンケートを送り、
164病院から回答を得た(回収率33%)。大量服薬患者を年間100件以上受けている病院も10病院あり、最も多い病院では約500件と回答した。
うつ病で処方される三環系抗うつ薬では大量服薬によって1年間で計5人が死亡したほか、
52人に不整脈、23人に長時間にわたるけいれんなど、命に関わる症状が見られた。
依存症や副作用が強いため、現在は推奨されていないバルビツール酸系の睡眠薬を大量に服用する人も後を絶たず、
10~12年の3年間で死亡患者が少なくとも23人に上った。同薬の影響で、肺炎を起こしたり、
筋肉組織が壊れたりするといった重い合併症を起こした患者を受け入れた病院は、86病院(52%)あった。
搬送先で医師や看護師に暴力を振るう患者もいた。102病院(62%)が、不安、不眠などに処方されるベンゾジアゼピン系の薬を大量に服用し、
入院中に興奮状態となって暴れるなどの患者を経験していた。

大量服薬招く 安易な処方
精神薬で救急搬送

抗不安薬や睡眠薬などが医療機関で過剰に投薬され、患者が命を落としたり、重症に陥ったりしていることが、
読売新聞の救急医療機関への調査で明らかになった。安易に薬を処方する精神科医療のあり方が問われている。(医療部 佐藤光展)

年50人以上

大阪市守口市の関西医大滝井病院救命救急センターには、睡眠薬や抗不安薬などを大量に飲んだ患者が、毎年50人~100人近く運び込まれる。
意識を失うなどして倒れ、家族や周囲の人に発見され通報される。
精神科ではかかりつけ患者でも「身体は診られない」と対応せず、一般病院は「精神疾患に対応できない」との理由で受け入れを拒むことが多い。
同大救急医学科の中谷壽男教授は「患者の大半は命に別状はないが、どこの医療機関でも断られるので、うちで受け入れることになる」と話す。
意識がはっきりするまでの間に、残存する薬の影響で問題行動を起こしそうな患者は、スタッフの多い集中治療室(ICU)で対応せざるを得ない。
中谷教授は「大量に薬を飲んだ患者の入院でICUの空きがなくなり、深刻な救急患者を受け入れられない場面が頻発している」と訴える。

米の6倍・重症・死亡例も
長期処方

精神科の治療は、薬物治療とカウンセリングなどの心理療法が両輪とされているが、
欧米に比べて日本では手間のかかる心理療法を行う施設が少なく、安易に薬を出して対応されがちだとの批判がある。
1回の受診で長期にわたる薬の処方もできるため、思い不眠症に使われるバルビツール酸系睡眠薬など、
薬によってはまとめて飲むと、死亡することがある。
不眠や不安、頭痛などに使うベンゾジアゼピン系薬剤は、即効性があって便利だが、使い続けると薬をやめにくくなる。
海外の治療指針では、依存症などが問題視され、処方は4週間程度が目安とされているが、日本では半年、1年間と長期処方されることは珍しくない。
薬を入手しやすい環境が大量服薬の温床になっている。日本は人口当たりのベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用量が世界一で米国の6倍とされている。

厳しい批判
今回のアンケートでは、回答した救急病院の95%が2012年の1年間に大量服薬患者を受け入れたと回答、うち3割は年間50件以上の搬送を受けていた。
回答した救急医からは「1回の処方期間や処方剤数を厳しくするべきだ」「患者が複数の医療機関で薬を入手できない仕組みが必要」
「自殺未遂を繰り返すなど、感情が不安定な人にまで大量の薬を処方する姿勢が問題」など精神科医療に対する厳しい批判が相次いだ。
精神科医から救急医に転身した北里大学病院救命救急センターの上條吉人特任教授(日本中毒学会理事)は「処方する医師の側に大きな問題がある。
国は精神科関連学会などの自浄能力に任せるのではなく、命に関わる薬の処方を制限するなど、強制力のある対策を講じるべきだ」と指摘する。

依存症 社会生活に影響

睡眠薬や抗不安薬の多くは依存症があり、ふとしたきっかけで処方薬依存に陥り、大量服薬につながることも少なくない。
九州地方の40歳代の元看護師の男性は、病院の不規則勤務で不眠に陥り、院内の精神科で睡眠薬を処方された。
次第に睡眠薬なしには眠れなくなり、薬の効き目が落ちると医師は量を増やした。男性は薬に不安を感じ、医師に何度も質問した。
「このままで大丈夫ですか」。答えはいつも「長く飲んでも安全」だった。
やがて男性は、薬の酩酊感を求めて複数の医療機関で睡眠薬を入手し始めた。昼間から服薬し、集中力低下で仕事のミスが続いた。
退職せざるを得なくなり、生活保護に追い込まれた。
「死にたい」。衝動を抑え難くなり、自宅で大量の薬を飲んだ。一命をとりとめ、今は専門病院の外来で薬を減らしているが、
不安などが強まる離脱症状に苦しみ、断薬に至らない。「医師が出す薬でこんな目に遭うとは想像もできなかった」と悔やむ。
東北地方の40歳代の男性は、会社でトップの営業成績を上げるセールスマンだった。
だが実は、人前で声が震える症状で不安障害と診断され、10年以上ベンゾジアゼピン系薬剤を飲み続けていた。薬によって、男性の人生は暗転した。
抗不安薬は当初から効果を感じなかった。だが「ないよりはまし」と信じ、会議前などに頻繁に服用した。
次第に量が増え、複数の精神科で薬を入手するようになった。そして強い睡眠薬が追加された直後の3年前から、万引きが始まった。
スーパーのかごに食品などを山盛りに入れ、レジを素通りするなど不可解な行動を繰り返した。昨年秋、懲役1年6か月の実刑判決を受け、収監された。
男性が収監の1年前、入院治療で薬を全て絶つと、万引きは止まった。薬の影響は裁判では認められなかったが、
妻は「夫の変わりようは薬の影響としか考えられない」と訴える。
処方薬依存の患者は多いと見られている。だが、減薬治療の経験がある医療機関は少ない。
患者数などの実態調査も行われておらず、早急な対策が求められる。
コメント
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