韓国経済ウォッチ~内需の不振(後)
日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
2015年1月20日07:04
韓国は輸出依存度がかなり高く、輸出で韓国経済が成り立っていると言っても過言ではない。
しかし、本当に韓国経済は、輸出なしでは成り立たないのだろうか。
たまにこの認識は韓国国民に間違った判断を迫り、輸出企業に特典を与える口実になった側面もあるのではなかろうか。
今、韓国政府が力を入れているFTA協定にしても同じ論理であるが、果たしてFTA協定は、韓国の一般庶民にどれだけの所得増加をもたらしてくれただろうか。
FTAが締結されると韓国経済の経済領土が拡大することになると宣伝されたが、その成果は一部大手企業を潤しただけで、内需の成長にちっとも貢献していないのが現実である。
韓国の貿易依存度は現在110%であるが、
アメリカと日本の貿易依存度は20%前後、
イギリス、フランス、ロシアは35~40%、
中国は45%、ドイツは60%ほどである。
他の国と比較してみても、いかに韓国の貿易依存度が高いかはよく理解できる。
ところが、政府の主張通りに貿易を拡大すれば、韓国経済は豊かになれるだろうか。
韓国の経済統計を見ると、それは事実でないことがすぐわかる。
韓国経済は初期には輸出ドライブ政策を展開することによって経済成長を成し遂げてきたことは事実である。
1970年度の初め頃までには、貿易依存度と経済成長は脈を1つにした。
しかし、70年代の後半から、様相が変わってきた。
輸出で稼いだ外貨は所得を増大させ、所得の増大は内需の成長をもたらしたが、輸出は増えても貿易依存度は伸びない現象が発生した。
80年代の初めに石油ショックなどで一時的に貿易依存度が高くなる時期もあったが、80年代の後半には好況にも関わらず貿易依存度はむしろ低下し50%になった。
この時期は、韓国経済において本当の黄金期だったかもしれない。
しかし、アジア通貨危機の後、大手企業中心の経済構造に転換し貿易依存度は高くなったが、内需は冷え込み、個人消費もずっと低迷していて、一向に良くなる気配がない。
貿易依存度は高くなって輸出は増えているのに、企業収益は増えても個人の給与所得は減少する傾向が顕著である。
すなわちそれは、輸出が増えて経常黒字額が大きくなっても、家計の所得につながっていないことを意味する。
87年から96年までの10年間は、貿易依存度が高くなると同時に、所得も増加するパターンであった。
しかし、アジア通貨危機以降はそのようなチェーンは断ち切られ、輸出は増えているのに家計所得はむしろ減少する傾向すらある。
その理由は、輸出企業を応援するあまり、為替レートを人為的に引き下げることによって輸出企業にはプラスになったが、一般庶民は輸入物価上昇などで所得は返って目減りする現象が起こったからだ。
また、輸出だけに頼っていては、韓国経済はいつも外部要因によって振り回されるし、成長にも限界がある。
とくに今のように世界経済が低迷している時期には、内需の重要性は痛感せざるを得ない。
それにこれから韓国経済は、低成長時代に突入するのは間違いないので、内需を育てないといけない。
また中国不動産バブルの崩壊など、今後、いろいろな外部ショックも予想される。
外部で何か起こったときに踏ん張れる力の元になるのも、やはり内需であるため、内需は一国の経済においてとても大事である。
今までのような輸出支援策をやめて、これからはもっと内需育成に力を入れるべきである。
安定的な雇用の創出、非正規社員の正社員への転換、最低賃金の引き上げなどを通じて、韓国経済の足腰を早期に固めないといけない。
少数企業によって達成された輸出成果は、今、韓国国民にも錯覚を起こしていて、韓国経済にどのような危機が訪れようとしているのか、気づいていない。
経済の底辺を育てるのは、社会の安定にも大事なことである。
低所得者の場合、収入を全部支出に回すので、消費も活性化する。
消費が活性化すると企業も良くなる。
企業が良くなると、所得も上がるという好循環が生まれる。
景気浮揚のため公共工事、株式市場などに税金をつぎ込むよりは、
庶民が潤うような政策を検討して内需を育てていくのが、韓国経済にとっては急務である。