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韓国、「反日」大統領は「正味」後2年で経済立て直しができるか

2014年03月09日 22時50分05秒 | Weblog

韓国、「反日」大統領は「正味」後2年で経済立て直しができるか

勝又壽良の経済時評

2014-03-07

朴大統領の苦衷


日本がお手本へ

朴大統領がきちんと仕事ができる期間は、今年と来年の2年間と言われている。

2016年は4月に国会議員総選挙が、2017年は12月に大統領選挙がある。選挙対策に忙殺され、落ち着いて政策に取り組める環境でなくなるからだ。

この2月で就任1年を経た。目立った活動と言えば、「反日・親中」くらいであろう。経済政策では、ようやく新年の演説で「経済革新3カ年計画」を明らかにしたが、目を見張るような斬新さはなかった。

朴大統領が、真に韓国経済の立て直しを図る強い決意であれば、就任直後に新経済政策を発表するはずであった。

その用意がなかったから結局、ズルズルと貴重な1年間を空費したのである。韓国経済を取り巻く環境は、日本と良く似通った面がある。

少子高齢化がその最大の障害である。この面では、すでに日本が経験を積んでいる。本来ならば、日本のノウハウを学ぶことがメリットになったはずである。

ところが、全くの逆の選択をしてしまった。経済問題に関心が薄かっただけに、日本との関係希薄化がもたらすデメリットに考えは及ばなかったのである。

前記の「経済革新3カ年計画」では、現在の財閥と輸出に偏る経済構造を改め、サービスなど新産業を育成し、内需拡大を通じた新たな成長モデルを構築する狙いである。

ベンチャー・中小企業の創業を支援する。将来の姿としては、「1人当たり名目GDP4万ドル、実質成長率4%」にすると言うのである。

現在の1人当たり名目GDPは2万5000ドル見当である。これを短期間に4万ドルへと引き上げる構想は、不可能と言うべきであろう。前大統領同様に、国民からの信頼を失うのは時間の問題と見られる。

韓国の財閥と輸出に偏った経済構造は、北朝鮮という「軍事国家」が38度線で対峙する緊張した関係が生み出した面もある。

確かに、一度は北朝鮮軍によって38度線を破られているから、一刻も早く経済力を付けて軍事的に対抗しなければならない。そういったせっぱ詰まった状況において、経済成長優先策が採用されたのである。

だが、米軍の駐留や日本が受け持つ地政学的役割を考えれば、もっと早く経済政策は転換すべきであった。今や韓国経済は、生産年齢人口(15~64歳)の減少が2017年から始まる。そういうぎりぎりの段階にさしかかっているのだ。朴大統領は、その心情を率直に次のように語っている。

朴大統領の苦衷


「(韓国経済には)輸出と内需、大企業と中小企業、製造業とサービス業の不均衡など解決すべき構造的な課題が山積していて、人口高齢化が経済協力開発機構(OECD)国家のうち最も速いペースで進行し、2017年からは生産年齢人口も減少する

これは音もなく迫ってくる恐ろしい災難である。経済の体質を変え、非正常的な慣行を改めながら、長期間続いてきた低成長のくびきを切ることができなければ、私たちの未来はない。

経済革新を強力に推進し、こうした慢性的な慣行と問題を解決してこそ、国民が幸せになり、希望の新しい時代を操り上げることができる」『中央日報』2月25日付け)。

ここで指摘されている「生産年齢人口」の減少問題は、もちろん日本経済にもそのまま当てはまる問題である。

日本の総人口に占める「生産年齢人口比率」の減少は、1991年から始まっていた。実は、こうした概念の認識は、ここ数年の話しであって、日本自体もその認識がなく、いたずらに時間を空費してきた。

韓国の場合、すでにこの概念が周知徹底化している段階に入っている。それだけに、朴大統領は就任最初の演説で取り上げなければならなかったのである。それが、方向違いの「反日・親中」へと逸れていった。

韓国は、前述の通り「輸出と財閥」に依存した経済運営であった。

いわば、「外需依存型」である。ここでは、「内需」がそれほどの重要性を持たずにきた。

家計の重要性が見過ごされてきたのである。

一つには、これまでの人口増加過程では、所得がピークを迎える40~50代の人口が絶えず増え続けてきたので、自動的に個人消費が韓国経済に寄与してきた。

だが、出生率の低下に伴う人口動態変化が、40~50代の人口を減少させ始めていたのである。

ここに、韓国の個人消費の基盤が揺らぎ問題化した。考えて見れば、人口動態は最も早く予測できるファクターである。これほど正直な経済データーは存在しない。

このように言われているものだ。それを見過ごしていたとは、なんとも迂闊な話しであった。

『中央日報』(2月26日付け)は、次のように報じた。

① 「朴槿恵(パク・クネ)大統領が2月25日、発表した『経済革新3カ年計画』の最終青写真は次のようなものだ。

今年から2017年までの3年間に1人あたりGDPを1万ドル引き上げる。昨年、2万4000ドルと推定されるGDPが、2017年には3万4000ドルとなる。2007年から7年間続いた2万ドル台を抜け出し、名実ともに先進国入りするという意味である」。

韓国は、2007年以降から7年間も「2万ドル台のワナ」と言われる状態で彷徨(さまよ)ってきた。

『経済革新3カ年計画』では、この停滞基調を打破して2017年までに3万4000ドル台へと引き上げると言うのである。

その具体策は、次のパラグラフで取り上げられているように規制緩和である。ここで不思議に思うのは、日本の「アベノミクス」には批判的な韓国が、自国のことになると「成功」という前提を置いているのだ。

日本の株価が急落するたびに、「アベノミクスの破綻」という大見出しを付けて報道している。それほど疑心暗鬼な「規制緩和」について、韓国も同じ手法を用いるのである。

② 「朴大統領は3大推進戦略として、具体的には『公共部門の改革』、『創造経済の実現』、『投資条件の拡充』など9大核心課題を達成すると述べた。

これらすべてに関係するキーワードは革新だ。政府主導の下、大企業が製造業分野を中心に経済成長を率いたのが過去50年間の過去の方式なら、3カ年計画は規制を果敢に撤廃し、中小企業とサービス業を新しい成長エンジンに飛躍させるという構想だ」。

韓国で中小企業とサービス業が未成熟である理由は、私が繰り返し主張しているように、歴史的な負の遺産によるものであろう。

韓国は中国と同様に儒教国家であり、専売制を敷き職人を蔑視した歴史がある。

つまり、商業は専売制であるから誰でも商うことはできなかった。

職人は軽蔑されて「科挙」(官僚)試験の受験資格さえ与えられない存在であった。現在、中小企業とサービス業が未発達である背景には、こうした歴史的な負の遺産が影響を与えているのである

私は、中国についても同様な歴史的な背景から、中小企業とサービス業について悲観的に見ているのだ。

歴史的なDNAとは、これほどまでに後世に影響を与え、無意識のうちに拘束するのである。

話題を変えれば、同じキリスト教でも旧教(カトリック)と新教(プロテスタント)では、資本主義形経済の発展において大きな差が出た。

カトリック諸国(仏・中南米)の経済発展は緩やかである。プロテスタント諸国(英・米・独・北欧)は揺るぎない先進国へと成長発展した。日本の「武士道」は、プロテスタントと同じ精神性が認められている。

こうした歴史的な視点から韓国を見ると、悲観的にならざるを得ないのだ。

儒教は墨子一派を排撃して根絶やしにしてしまった。墨子は中国では珍しい論理学の系譜にあった。

これを儒家と法家が挟み打ちにして消滅させたのである。

こうして中国には論理学が育たず、帰納法や演繹法という近代科学に不可欠な分析手法を育てなかった。

現在、韓国も中国も自然科学系のノーベル賞受賞者がゼロである。その背景には、思想的な不毛が災いしていると見るほかない。頭脳の優劣という次元の問題でなく、思考方式の問題なのだ。

③ 「政府はベンチャー・創業企業に4兆ウォン(約3800億円)の財政を支援する。

製造業に代わり、成長を主導する5大有望サービス業(保健医療・教育・観光・金融・ソフトウェア)の競争制限規制はなくすことにした。

朴大統領は、『規制総量制を導入し、ネガティブ方式(原則許容・例外禁止)でもなくしにくい規制は自動効力喪失制を導入してでもなくす』と強調した」。

韓国政府は、ベンチャー・創業支援に向けて約3800億円支出するという。

率直に言って、この程度の金額で新規事業が育つとは思えないのだ。

ましてや、歴史的に論理思考が「不毛」な韓国において、イノヴェーションに基づく新技術や新事業が育つとはにわかに信じがたい。

5大有望サービス業(保健医療・教育・観光・金融・ソフトウェア)を推進するという。実は、いずれも日本が韓国より一頭地を抜く存在である。

日韓関係が順調であれば、これらサービス産業において、日韓は大いに協力できる分野であったはずだ。それが、韓国から日本に向けられる度を越した「悪口雑言」は、日韓協力の芽を自ら摘んでいるのである。

韓国に独創的な企業が生まれない理由は何か。

サムスンは確かにIT関連では売上高が世界一になったが、サムスンが独自で生み出した製品でもなければ技術でもない。

技術の模倣である。ソニーは今でこそ経営が不調であるが、ソニーが生みだし育てた「ウォークマン」は、現在のアイフォーンに引き継がれている。

このように見てくると、日本の独創技術は枚挙に暇がないほどである。

日韓のこうした差はどこから生じたのか。突き詰めれば、論理的思考方式の有無に帰せられるはずだ。

日本には、論理学が根付き帰納法や演繹法が定着した。

儒教の「格物窮理」(事物の道理を知ること。格物到知ともいう)は、江戸時代に蘭学と交わって「物理学」という科学へと発展した。

これを見ても分かるとおり、日本と韓国(中国も)は、科学的精神構造において完全に異質であった。韓国には、論理学が生まれなかったのである。

韓国は、日本からまだまだ大いに学ぶことがあるはずだ。

その日本を足蹴も同然の扱いをしていることは、韓国にとってこの上ない損失である。

ここで、現在の日本の経済成長が「輸出・製造業」依存でない成長パターンであるという分析結果が出てきたので紹介したい。

韓国の「輸出・財閥」依存経済でなくても成長できる。そういう一つのひな形が日本にあることを知って欲しいのである。

日本がお手本へ


宮尾龍蔵・日本銀行政策委員会審議委員(前・神戸大学教授)は、「消費主導で自律的成長へ」(『日本経済新聞』2月26日付け「経済教室」)で、次のように論じている。

④ 「現在の景気回復の大きな特徴は、従来の『輸出主導』ではなく『消費・非製造業主導』という点である。

消費の回復は、株高による好調な高額消費だけが要因ではない。

その底流では、身近な消費・非製造業関連の分野で、潜在的な需要を喚起する取り組みが幅広く進展してきている。

それは雇用・所得環境を改善し、物価上昇圧力を高めているとみられる。こうした見方にたてば、先行きも消費主導による自律回復のメカニズムは持続するだろう」。

⑤ 「従来の『輸出主導』の景気回復パターンは、2002~08年の拡張局面に顕著に表れている。

その後輸出は、リーマン・ショックや東日本大震災に伴う大きな落ち込みからは回復してきたが、やや長い目でみれば横ばい圏内で推移している。

一方、消費支出は、様々な影響を受けつつもスムーズに成長し、12年1~3月期以降は伸びを一段と高めてきた。

消費の改善基調は、企業設備投資、公共投資と比べても際立っている。

企業設備投資は、足元では持ち直しの動きにとどまっている。

景気回復の初期段階において、輸出や国内設備投資の増加を伴わず、消費が一段と伸びを高めていることは特筆に値する。

非製造業が回復を主導している姿も確認できる。大震災の影響がほぼ一巡した12年以降では、製造業の活動が弱含む一方、非製造業は明確に活動水準を高めてきた」。

⑥ 「どのような活動が消費・非製造業主導の回復を支えているのだろうか。

非製造業では、潜在的な需要を喚起する新しい取り組みが、小売り、飲食、観光、運輸、建設など、様々な分野で進展してきている。

それは、コンビニやショッピングセンターの積極出店、高齢者向けマンション建設、宅配サービスやネット通販、高度な物流センターの増設など幅広い。

非製造業の活動の活発化に伴い、労働・雇用環境においても変化が生じてきている。非製造業企業の労働需要は高まってきており、特に中小企業の労働力不足は顕著である。パートやアルバイトの賃金の上昇なども見られ始めている」。

いちいち解説の必要もあるまい。

従来の日本経済の回復過程では、輸出と製造業が牽引した。超円高が続いた結果、製造業の海外進出が進んでいる。円安に修正されても、輸出がにわかに増加して景気を引っ張る従来型のパターンが消えたのである。

だが、高齢化社会を背景にして、国内の需要構造が一変した。

消費が主導して、非製造業企業の労働需要は高まってきており、特に中小企業の労働力不足は顕著である。

パートやアルバイトの賃金の上昇なども見られ始めている。現に、賃上げの動きが非正規従業員にも及び始めた。

人材派遣大手のテンプスタッフやパソナグループは、料金を現在より3~5%引き上げる交渉を顧客企業と始めている。パートタイム労働者の時給引き上げの動きも広がっているのだ。

消費の盛り上がりは、関連する小売り、飲食、観光、運輸、建設などの非製造業の投資を増やしている。

これまで地方の景気回復はまだらで遅れるのが通り相場であった。

それが、今回は様相が異なっている。地方経済も温もりを感じ始めているのだ。北海道では、外国人観光客の増加でこれまで冷え切っていた経済に明かりが灯っている。

こうした日本国内の経済動向を見れば、韓国経済も一つの回復手がかりを得られるに相違ない。

ただ韓国の場合、個人債務が1000兆ウォン(約955兆円)にも達し楽観は禁物である。

高齢化を考えれば、産業構造をこれに見合ったものに変えて行けば、自ずと需要にマッチする供給構造が成立する。

短期間に成果を上げることはできなくても、おいおい需給関係のバランスが取れるであろう。

(2014年3月7日)



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