◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「殴ったり暴行されたり」って?

2012-08-01 19:09:53 | 気になる言葉、具体例
                                 なにしとるん?

 あるとき、ニュース番組で、まあまあ日本語を話せる外国人が「殴ったり暴行されたり」と言うのを聞きました。久しぶりに聞く「~たり~たり」ですが、外国人は日本語を「学習」しているので一応基本は押さえているようです。寝たり起きたり、食べたり飲んだり、歩いたり走ったり、晴れたり曇ったり、殴ったり蹴ったり・・・放送業界で働く日本人の大半はこの基本を知りません。
 この記事を書いている最中に耳に飛び込んできたのは「捕獲されたり船と衝突することが多く」という「THE世界遺産」のナレーション( ̄д ̄)! ほかにも、「けがをしたり病気になったら」「風邪を引いたりインフルエンザにかかると」「雷が鳴ったり突風が吹くなど、荒れたお天気に」というように、「~たり」を1回しか言わず、むしろこれが普通だと思っているようです。
 放送業界というところはなぜこうも誤りが素早く広がって定着するのでしょうか。困るのは、いったん基本から外れると、やがて必ずその誤りの度合いがいっそうひどくなることです。「病気やけがになったりする可能性が」と言ったのはアナウンサーですよ。「途中で投げ出したり準備不足の勇み足などは気をつけて」なんて、意味不明。
 「捕獲されたり船と衝突したりすることが多く」「けがをしたり病気になったりしたら」「風邪を引いたりインフルエンザにかかったりすると」「雷が鳴ったり突風が吹いたりと、荒れたお天気に」ですよ。「病気になったりけがをしたりする可能性が」「途中で投げ出したり、準備不足で失敗ということになったりしないように気をつけて」ですよ。
 「集団で殴ったり蹴られたりの暴行を受け」と言ったのは日本人です。せっかく「~たり~たり」と言ったのに、惜しい(ー_ー)! 「殴った」と「蹴られた」だったら、暴行を受けたというより、ただのけんかです。複数の人間に暴行された、それは「集団で殴ったり蹴ったりという暴行を受け」です。
 日本人でさえこうなのですから、「殴ったり暴行されたり」と言った外国人を笑えません。いや、笑えないというより、おかしいと気づくことさえないでしょうね。けんかなら「殴ったり殴られたり」ですが、これは、ひどい扱いだった、何度も殴られた、ということで、けんかではないので、「殴られたり蹴られたり」とか、「意地悪されたり、殴られたり」とか、「ひどい言葉を浴びせられたり、暴行されたり」とか、このような言い方になるのですよ。日本に住む外国人が増えても日本語を教えられる日本人はいないかも。

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