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陸上防衛作戦部隊論(第二八回):装甲機動旅団編制案の概要 特科連隊大隊編制

2015-08-25 22:36:24 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団特科連隊案
旅団特科連隊について。装甲機動旅団は特科火砲300門の防衛大綱下、特科隊ではなく特科連隊の維持が可能であり必要と考えます。

特科連隊は4個特科大隊を基幹とし、編成は、本部管理中隊・情報中隊・特科大隊・特科大隊・特科大隊・MLRS大隊、となります。特科大隊が自走榴弾砲を主装備としまして、直掩火力として連隊戦闘団に編入され、MLRS大隊が全般支援火力として旅団に直轄運用する、という視点で火力面では現行の師団特科連隊の3個大隊編成よりも強化する。

現在、特科連隊の編成は師団特科連隊に限定されています。従来の編成を見ますと、普通科連隊と同数の直掩に当たる特科大隊と全般支援に当たる特科大隊を基幹とし、全般支援特科大隊は特科中隊4個編成、直掩特科大隊は特科中隊2個を基幹とする編成を採っていました。普通科連隊3個基幹では第4大隊が欠け、全般支援大隊は第5大隊、となっていました。

しかし、更に現在進む師団改編では、全般支援大隊が編成から省かれ、更に4個普通科連隊基幹師団はうち1個を即応予備自衛官部隊基幹の普通科連隊を方面隊直轄の方面混成団へ移管する改編が行われており、基本的に特科連隊は3個特科大隊を基幹、FH-70榴弾砲乃至99式自走榴弾砲を30門装備する編成へ転換しているわけです。

提案する広域師団装甲機動旅団は、3個普通科連隊を基幹とする編成ですので、特科大隊は3個大隊を基幹としますが、全国の連隊編成に第4大隊が置かれる事はありませんので、全般支援に当たる特科大隊も第5大隊とはせず、MLRS大隊と呼称すべきでしょう。このMLRS大隊は、新編されるのではなく、方面特科部隊のMLRSを運用する特科大隊から管理替えとして対応します。

広域師団案、特科大隊装備は装甲機動旅団の運用特性に鑑み、99式自走榴弾砲に統一し、牽引式であるFH-70榴弾砲とその後継となる装輪式の火力戦闘車は航空機動旅団特科隊に集約する事が望ましいのですが、99式自走榴弾砲は生産数に限界があります。富士教導団等教育所要の上限がありますので99式自走榴弾砲は北部方面隊管区にのみ装備する事となるでしょう。

特科大隊の編成は現状通り、2個特科中隊の自走榴弾砲10門を基幹とし、連隊戦闘団へ編入します。99式自走榴弾砲と火力戦闘車では不整地突破能力に格差があり、火力戦闘車が開発開始となったばかりの現状では本土師団の主力はFH-70榴弾砲となります。99式自走榴弾砲と火力戦闘車は52口径155mm榴弾砲で、FH-70は39口径155mm榴弾砲では射程に格差がありますが、こればかりは更新されるまで対処不能です。

10門の99式自走榴弾砲とFH-70榴弾砲は緊急時の時間当たりの火力投射能力が毎分60発、TOT同時弾着射撃では300m×135mを同時制圧可能となります。子弾散布式の03式多目的弾が残っているならば一発で100m四方を制圧可能でしたが、クラスター弾全廃条約批准により装備不能となり、廃棄してしまいました。
問題は補給、これは戦車砲弾も含めてなのですが、自隊輸送小隊にて弾薬基数を2基数輸送するとしまして、それ以上の投射へは必要な輸送支援が無ければ膨大な弾薬を消費する際に補給不十分となり戦闘継続に問題が生じてしまい、可能であれば装甲機動旅団にもヘリコプター隊を配置し、輸送ヘリコプターによる空中補給が望ましいことは確かなのですが、それだけの輸送ヘリコプターに余裕がありません。

ただ、専守防衛の我が国では陸上輸送の限界以上の機動打撃が行い得るのか、という視点は有り得ますが。一方、装甲機動旅団は少数の多用途ヘリコプターを装備しますので最小限の空輸は部分的に可能であるほか、装甲機動旅団は広域師団に所属している為必要であれば師団長の命令により航空機動旅団が装備するヘリコプターを補給支援に充てる事は可能でしょう。

北大路機関:はるな くらま
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