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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

台風19号東日本台風災害:東日本大半の大雨特別警報と筑摩-阿賀野-阿武隈-多摩-信濃川氾濫

2019-10-13 20:19:39 | 防災・災害派遣
■観艦式中止!災害派遣へ全力
 太平洋上に突如発生し急速に記録的名規模に成長し前の台風被害から復旧過渡期の地域を蹂躙する、複合台風災害というべき被害が昨日の台風19号でした。

 台風19号は首都圏を横断し鹿島灘から三陸沖へとぬけ、今日午後、温帯低気圧となりました。しかし、狩野川台風に匹敵するとして気象庁が注意を呼びかけていた台風は大きな爪痕を各地へ残しています。特に今回の台風19号は巨大な雨雲を伴っており、東海地方を首都圏とその近県から東北地方一帯へ次々と特別警報が発令される異常事態となりました。

 高潮、暴風、豪雨、今回の台風災害は全てに警戒が必要だと気象庁により厳重に警告されていましたが、突出していたのは豪雨だったよう報道から読みとれます。特に複数の川にて同時に河川氾濫、そして決壊、という状況は異例であり、河川氾濫の浸水が単一であればポンプ車等を全国から集中し排水が可能ですが、同時決壊となれば、そうもゆきません。

 自衛隊観艦式中止、河野防衛大臣は今朝、明日14日に予定されていました自衛隊観艦式本番の中止を正式に決定しました。実は自衛隊観艦式参加艦艇は周防灘や大阪湾と伊勢湾に避泊していたのですが、昨夜台風が伊豆半島沖に差し掛かったところで抜錨、由良水道から串本沖をへて熊野灘へ、そして台風を追い払うように東京湾へ帰港していました次第で。

 自衛隊災害派遣、観艦式とともにしかし台風被害が徐々に全容を示すようになり、自衛隊は259自治体へ連絡幹部を派遣し、即応体制をとります。昨日のうちに長野県より孤立地域への住民救助に関する災害派遣の要請が示され、徐々に北関東東北地方の県知事からの災害派遣要請が続出するようになります、このため、観艦式を中止し災害派遣へ集中へと。

 観艦式特別公開として明日、横須賀吉倉地区で、いずも、あたご、ちょうかい、こんごう、あさひ、はるさめ、たかなみ、むらさめ、はたかぜ一般公開、船越地区で、ふゆづき、さみだれ、ありあけ、あけぼの、しまかぜ、木更津港公共ふ頭では、うらが、いかづち一般公開が観艦式に代えて実施されるとの事です。フリートウィークを越える一大公開が行われる。

 台風19号災害、宮城県吉田川、茨城県久慈川、埼玉県都幾川、埼玉県九十九川、長野県筑摩川、以上六ヶ所の河川で堤防が決壊しました。決壊は堤防が増水により越水し浸食されることで破壊され発生します。決壊した場合、河川が平常水位に戻るまで流入が続くため、排水せねば冠水したまま、広範囲が浸水し且つ地域孤立が続くなど、影響が長期化します。

 千曲川の決壊は長野市の住宅街を濁流が洗い、陸上自衛隊ヘリコプターによる住民救出の様子が中継されました。しかし堤防決壊のほかにも、氾濫危険水位を超え越水した河川が数多く、また多摩川も一部で浸水被害が。浸水地域は個々の河川だけでも広い事例はありますが、全体として非常に広大、孤立地域の捜索が進めば、新たな被害も判明しましょう。

 利根川氾濫警戒水位へ。これは先ほど国土交通省より発表されました、上流に降り注いだ膨大な雨量がそのまま時間差で水位を押し上げているとして、台風が温帯低気圧となった現在も警戒が必要です。また、豪雨以外暴風も凄かった。四国四万十町では浦分防波堤灯台が波浪で倒壊、9m灯台ですが灯台倒壊は、暴風とともに波浪の大きさも物語っています。

 東京湾では貨物船JIADE号が沈没、これは暴風被害も実際のところかなり大きかったことを物語ります。JIADE号はパナマ船籍の1925t貨物船で乗組員12が乗船していましたが、3名を救助したものの1名が死亡、残る7名の行方を海上保安庁が捜索中です。東京湾に停泊していた船舶の三分の一が走錨したともされ、海上での暴風の大きさを物語っています。

 北陸新幹線車両基地水没、上田電鉄鉄道橋梁崩落、計画運休を行っていました最中でも鉄道被害は広範囲に及びましたが、鉄道に関する最大の被害は長野新幹線車両センターの水没でしょう。この水没により北陸新幹線は全体の三分の一の車両が使用不能となり、復旧へ影響が長期化する懸念があります。JR東日本は今夜から東京長野臨時列車を運行する。

 長野新幹線車両センターは氾濫した千曲川に近く、ハザードマップによれば河川氾濫時に水没するとの被害が想定されていました。台風当日は新幹線も計画運休となっており、車両の多くは車両基地へ待避していました、高架部分などへ待避していたならば結果は違ったのでしょうが、多数の新幹線車両を一カ所に固めたことで、その拠点が水没したかたち。

 土砂災害も各所で発生し、12日夕方には神奈川県相模原市で住宅三棟が呑み込まれる土砂災害、山梨県上野原での土砂家屋流入、山梨県道志村では土砂崩れが民宿を直撃し負傷者が、群馬県富岡町では土砂が住宅四棟を押しつぶし死者が、夜になり福島県二本松市での土砂崩れにより行方不明者が発生、土砂崩れや崩落等による被害は拡大してゆきました。

 また、増水した河川に流される被害も御殿場市を筆頭に相次ぎました。なかには栃木県薗部町にて、避難所へ避難する最中に道路上で流され、犠牲となった事例もあります。一方、国土交通省はダムへ流入する雨量がダム設計限界を超えたとして越堤や崩壊を阻止する緊急放水を実施しましたが、幸いにしてこの緊急放水による二次災害は、ありませんでした。

 広い範囲で発生した水害。堤防やダムなどの治水対策、無論千数百名が亡くなる台風被害が相次いだ昭和中期と比較するならば、我が国防災インフラは非常に整備されたといえます、過去の水準であればこの被害では済まなかったでしょう。ただ、気候変動の影響や海洋水温上昇の影響により台風被害や豪雨被害の脅威は巨大化しています、どう取り組むか。

 防災インフラを更に整備する公共事業再編を行うか、もしくはハザードマップの浸水予想地域には防災強化建築基準等の法整備を行うか、災害重点警戒地域指定のような避難指示を確実に進める法整備が必要となるのではないでしょうか。少なくとも既存の橋梁や水道等の生活インフラ老朽化も進む中、防災インフラと公共事業は社会的命題といえましょう。

 避難所、今回の台風に伴う水害では決壊地点に近い学校など避難場所が水害被害に見舞われる事例が発生しています、無論、ハザードマップには洪水避難所と台風避難所等が分けられているものなのですが、過去には2011年東日本大震災のように避難所被災が多数の犠牲者を出した事例もあり、避難所として用いられ得る体育館や被災者車輌水没は痛ましい。

 避難所については、例えば水害が想定される地域の学校や役場のグラウンドや駐車場をもう少し嵩上げする事が出来ないか、と考えてしまいます。例えば最大規模の水害や暴風被害に耐えられる、沿岸部では高潮被害など、無論津波も想定した、公共シェルターといえるような水準の、高規格の大規模避難施設を真剣に検討する時期が来たようにも思えます。

 広域避難、江東五区の広域避難見送りは結果として正解でした、実施していたならば想像を絶する混乱でしょう。広域避難は上陸時に910hPs規模の台風を想定しているとのことで、今回の台風は935hPs、巨大台風ではありますが広域避難を決断する勢力ではありませんでした。しかし、上陸時910hPsという規模の台風、将来的に想定の必要があるのでしょうか。

 千葉県の防潮扉、いったん閉鎖したならば海側の住宅地を事実上見捨てることになる沿岸部の大型防潮扉は今回閉鎖されることはありませんでした、4m規模の高潮に耐える4.2m級の防潮扉という。広域避難というものは5m規模の高潮を想定していると言うことですので、今回の異常潮位も2mに収まっていましたので、在る意味冷静な判断といえます、が。

 巨大台風について留意せねばならない視点は、今回があれほど脅威度を強調された台風であり、確かに河川氾濫と決壊が相次いだ災害ではあったのですが、東日本大震災や阪神大震災と比肩する被害か、、西日本豪雨災害と比較したとしても感覚は異なるでしょう。台風巨大化、第二室戸台風や伊勢湾台風と勢力で比較するならば、一考の余地があるようにも。

 伊勢湾台風から60年、という本年の台風19号は、しかし台風シーズンの終わりに突如といえる急速な発生と猛烈な成長が不安を感じさせたのも事実です。逆に暴風が猛烈な台風15号と豪雨が記録的な台風19号を経験したことで、台風災害怖れるに足らず、という認識が広がらないか、気象庁はいつも大袈裟、という視点が定着している印象があり、逆に不安を感じてしまいます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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