■国際信義,問われる情報開示
COVID-19新型コロナウィルスの情報を中国政府が隠蔽せず初期段階で発表していれば世界中で380万名も亡くならずに済んだのかもしれません、そして。
台山原発放射性物質漏えい。中国南部広東省の台山原発で放射性物質が大気中に放出されています。中国政府の中国国家核安全局は数値は示さないものの直ちに危険はない水準であるとしています。しかし懸念したのは、この発表が中国生態環境省の公式発表ではなく、事故発生から一週間近くを経てアメリカのCNNが公式よりも先に報道した事でした。
福島第一原発事故を筆頭に、原子力事故は発生し得るリスクとしてその是非を考えねばなりません、しかし、今回のCNN報道は台山原発を合弁企業として運営するフランスのフラマトム社が、内部告発に近いかたちで報道にリークした構図です。CNNではフラマトム社はアメリカ政府に事態鎮静化の支援を求めたと報道しています。事故よりもここが問題だ。
1986年にソ連のチェルノブイリ原発事故が発生した際、航空自衛隊はF-4ファントムへ放射性物質集塵装置を搭載し高高度での放射性物質拡散状況を偵察しました、この背景にはソ連がチェルノブイリ原発事故を公表せず、最初に確認されたのがフィンランド国内の原発での放射性物質検知で、当初はフィンランド自身が自国の原発事故を懸念していました。
欧州での放射性降下物観測、しかし点検を重ねても自国原子力施設からの放射性物質漏えいは確認されず、気象情報からソ連南部からの大量の放射性物質拡散が確実視され、各国政府に突き上げられる形で、ソ連政府はチェルノブイリ原発が、冷却材の黒鉛と共に炉心が爆発的破損に見舞われ、重大な原発事故発生を認めました。今から35年前のおはなし。
キセノンとクリプトンが漏えいしたと、中国政府が発表しています。漏洩したキセノンとクリプトンは原子炉爆発を防ぐベントと呼ばれる装置により、可能な限り有害物質を濾過し大気中に放出させたとのことですので、現段階では台山原発の原子炉については、炉心損傷、福島第一原発やチェルノブイリ原発のような状況には陥っていない事を意味します。
我が国の原子力規制庁は、今回の台山原発放射性物質漏えいを受け、日本国内での放射線物質観測状況に異常はないことを発表しました。原子力規制庁では沖縄県を中心に観測を実施したとしています。もっとも広東省は台湾やフィリピンの方が近く、原子炉ベント程度であれば、日本国内まで影響はないといえるかもしれません。問題は、情報公開姿勢だ。
ベント、台山原発はベントまで実施しているのか。驚いたのは原子炉から汚染物質を濾過して排出するベントは、日本では電気事業法原子力発電所安全規制では“重大インシデント”に定義されるものですので、周辺国への通知なしに、いや周辺住民にさえ通知せずベントを実施した点は、中国政府の原子力事故情報開示の姿勢に疑問を持たざるを得ません。
核燃料棒というものは、ロケット鉛筆に似た構造となっています。最近の子はロケット鉛筆を知らない、という話題はさて置き、ジルコニウム合金の筒状である燃料棒にロケット鉛筆でいうロケット部分がウランペレットとなっていまして、この燃料棒をチャンネルボックスという、爪楊枝の詰まった入れ物の様な構造の大きな容器に収容し原子炉に収める。
破損した燃料棒が数本、ここから放射性物質が漏れたということですが、そもそも燃料棒被膜の役割を担うジルコニウムが破損しただけでは放出されるのは水素化合物であり、放射性物質が拡散する事はありません、つまりキセノンとクリプトンの漏洩はウランペレットそのものが変形している可能性を示すのですね。重大インシデントそのものといえます。
中国政府は原子力事故については慎重であると考えられてきました、こう言いますのも、福島第一原発処理水の中で濾過できないトリチウムの海洋放出を我が国政府が決断した際、環境規制よりも希釈したトリチウムを総量も示したうえで放出する際に、原発への中国専門家立入りを求めたのですから。せめてベント実施前に日本政府へ通知があって然るべき。
COVID-19,中国政府の情報隠ぺい体質は、2019年に中国湖北省武漢市を中心に爆発的感染拡大が確認された新型コロナウィルスCOVID-19においても、その世界的拡大の要因となっています。故に中国政府の体質であるので、仕方がない、の見方も出来るのかもしれませんが、その視点に立つならば、我が国を始め世界は中国監視強化を強いられる事となる。
情報隠ぺい体質、勿論、安全保障上必要な情報、軍隊の作戦計画やテロ対策計画の概要など開示を迫るつもりはありませんが、COVID-19ならば公衆衛生、台山原発ならばベント実施の際の放射性物質拡散情報、これくらいは情報開示があって然るべきではないでしょうか、それとも情報開示は無いものとして日本が自ら情報収集せねばならないのでしょうか。疑問です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
COVID-19新型コロナウィルスの情報を中国政府が隠蔽せず初期段階で発表していれば世界中で380万名も亡くならずに済んだのかもしれません、そして。
台山原発放射性物質漏えい。中国南部広東省の台山原発で放射性物質が大気中に放出されています。中国政府の中国国家核安全局は数値は示さないものの直ちに危険はない水準であるとしています。しかし懸念したのは、この発表が中国生態環境省の公式発表ではなく、事故発生から一週間近くを経てアメリカのCNNが公式よりも先に報道した事でした。
福島第一原発事故を筆頭に、原子力事故は発生し得るリスクとしてその是非を考えねばなりません、しかし、今回のCNN報道は台山原発を合弁企業として運営するフランスのフラマトム社が、内部告発に近いかたちで報道にリークした構図です。CNNではフラマトム社はアメリカ政府に事態鎮静化の支援を求めたと報道しています。事故よりもここが問題だ。
1986年にソ連のチェルノブイリ原発事故が発生した際、航空自衛隊はF-4ファントムへ放射性物質集塵装置を搭載し高高度での放射性物質拡散状況を偵察しました、この背景にはソ連がチェルノブイリ原発事故を公表せず、最初に確認されたのがフィンランド国内の原発での放射性物質検知で、当初はフィンランド自身が自国の原発事故を懸念していました。
欧州での放射性降下物観測、しかし点検を重ねても自国原子力施設からの放射性物質漏えいは確認されず、気象情報からソ連南部からの大量の放射性物質拡散が確実視され、各国政府に突き上げられる形で、ソ連政府はチェルノブイリ原発が、冷却材の黒鉛と共に炉心が爆発的破損に見舞われ、重大な原発事故発生を認めました。今から35年前のおはなし。
キセノンとクリプトンが漏えいしたと、中国政府が発表しています。漏洩したキセノンとクリプトンは原子炉爆発を防ぐベントと呼ばれる装置により、可能な限り有害物質を濾過し大気中に放出させたとのことですので、現段階では台山原発の原子炉については、炉心損傷、福島第一原発やチェルノブイリ原発のような状況には陥っていない事を意味します。
我が国の原子力規制庁は、今回の台山原発放射性物質漏えいを受け、日本国内での放射線物質観測状況に異常はないことを発表しました。原子力規制庁では沖縄県を中心に観測を実施したとしています。もっとも広東省は台湾やフィリピンの方が近く、原子炉ベント程度であれば、日本国内まで影響はないといえるかもしれません。問題は、情報公開姿勢だ。
ベント、台山原発はベントまで実施しているのか。驚いたのは原子炉から汚染物質を濾過して排出するベントは、日本では電気事業法原子力発電所安全規制では“重大インシデント”に定義されるものですので、周辺国への通知なしに、いや周辺住民にさえ通知せずベントを実施した点は、中国政府の原子力事故情報開示の姿勢に疑問を持たざるを得ません。
核燃料棒というものは、ロケット鉛筆に似た構造となっています。最近の子はロケット鉛筆を知らない、という話題はさて置き、ジルコニウム合金の筒状である燃料棒にロケット鉛筆でいうロケット部分がウランペレットとなっていまして、この燃料棒をチャンネルボックスという、爪楊枝の詰まった入れ物の様な構造の大きな容器に収容し原子炉に収める。
破損した燃料棒が数本、ここから放射性物質が漏れたということですが、そもそも燃料棒被膜の役割を担うジルコニウムが破損しただけでは放出されるのは水素化合物であり、放射性物質が拡散する事はありません、つまりキセノンとクリプトンの漏洩はウランペレットそのものが変形している可能性を示すのですね。重大インシデントそのものといえます。
中国政府は原子力事故については慎重であると考えられてきました、こう言いますのも、福島第一原発処理水の中で濾過できないトリチウムの海洋放出を我が国政府が決断した際、環境規制よりも希釈したトリチウムを総量も示したうえで放出する際に、原発への中国専門家立入りを求めたのですから。せめてベント実施前に日本政府へ通知があって然るべき。
COVID-19,中国政府の情報隠ぺい体質は、2019年に中国湖北省武漢市を中心に爆発的感染拡大が確認された新型コロナウィルスCOVID-19においても、その世界的拡大の要因となっています。故に中国政府の体質であるので、仕方がない、の見方も出来るのかもしれませんが、その視点に立つならば、我が国を始め世界は中国監視強化を強いられる事となる。
情報隠ぺい体質、勿論、安全保障上必要な情報、軍隊の作戦計画やテロ対策計画の概要など開示を迫るつもりはありませんが、COVID-19ならば公衆衛生、台山原発ならばベント実施の際の放射性物質拡散情報、これくらいは情報開示があって然るべきではないでしょうか、それとも情報開示は無いものとして日本が自ら情報収集せねばならないのでしょうか。疑問です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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