北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望③ 我が国で運用するということ

2012-09-01 22:49:04 | 防衛・安全保障

◆道路法車両制限令、車幅2.5mの規制

 第三回は、装備品について国産装備か輸入装備かを考える上で、当たり前でもあり、そして少々小さな点、しかし重要な点を少し触れたいと思います。

Img_9346 自衛隊の装備品は、我が国において運用する、という前提、これを忘れてはなりません。しかし、これを踏まえて考えますと、自衛隊装備に重要な要素があることを思い出させるわけです。その最たるものが、道路法車両制限令が提示する車幅規制、というものがあり、我が国の道路は例えば鉄道が世界基準の標準軌1435mmではなく狭軌1067mmが採用されているように、狭い道路となっています。

Uimg_3150 道路法車両制限令第三条では、車幅2.5m、総重量25t以下、軸重10t、輪重10t、高さ4.1m、長さ12m、最小回転半径12m、以上の通り。陸上自衛隊の96式装輪装甲車は、これに合わせ全幅2.48m、全長6.84m、重量14.5t、この車両制限令の範疇に収まっているのがわかるでしょう。

Img_2309 車幅2.48mの96式装輪装甲車に対し、唯一枠内に入るのは米海兵隊やオーストラリア軍などが運用するLAV-25の2.5mで、米陸軍の多数が量産される主力装甲車というべきストライカー装甲車は車幅2.72mあり、世界的に評価が高いスイス製ピラーニャ装甲車が全幅2.66m、ドイツが次世代の重防御力を志向し開発したボクサー装甲車で2.99m、安価で知られるロシアのBTR-80装甲車で2.9m、選択肢は多くはありません。

Fimg_8457 道路法車両制限令を超える車両が通行する場合の手続きは、主として交通事故を防止する観点から行われます。つまり車幅が大きすぎる車両が無理に道路を通行すれば対向車が衝突する危険が出てきてしまいますし、二車線道路であっても実質一車線しか利用できなくなるということ。

Img_5504 車幅2.5m以上の車両が通行するにあたって、第一に行うことは出発地から目的地までのすべての道路について、その道路管理者に申請するところからはじまります。すると道路管理者が特殊性に鑑み、自衛隊が用いるという事で申請が通るとします、止むを得ないと判断した場合に、通行許可が出されます。

Oimg_6056 通行許可が出ましたら、次は所轄警察署長への許可をもらう必要が出てきます。なにより、道路が設計限界を超える車両を通行させるのですから、事故防止の観点から必要なことで、この二つの許可が出て初めて機動が可能なのです。この観点から、例えば戦車部隊などは演習場に隣接した駐屯地に駐屯するわけですね。

Img_7964 軍事は安全保障上すべてに優先されるべき、という視点はもしかしたらば持たれる方がいるかもしれません。しかし、どう頑張っても車幅が大きすぎれば対向車が衝突して破壊されてしまう、この事実はどうにもなりません。これは道路を拡幅しなければ、結局衝突する、という事象から逃れることはできない。

Img_8997 日本の道路は日本の規格のものでしか運用できません。これは例えば海上輸送された民生用長物コンテナーの輸送車両が方荷にとなっていて、低速で緩やかなカーブを装甲しただけで脱落し、並走自動車が押しつぶされる、という事故が何件も報道されていますが、これは海外が3.2mの車幅を念頭に輸送車両での輸送を念頭に置いているためで、実は海外規格を我が国の道路にもちこむ弊害は民間の事故という形で表面化しているのです。

Kimg_8573 実際問題として、主要道路を全て2.5m対応から3.2m対応へと拡幅することが出来れば、自衛隊車両に海外装備を導入するうえでの選択肢は増えることは確かです。加えて前述の道路の事故や輸送力の問題を改善することにもつながるでしょう。しかし、これを行うには安全保障を超えた討議が必要ですし、費用面で数年十数年で達成できることではないでしょう。

Img_7195a 我が国で運用する、という事は我が国での運用に対応できなければなりません。道路法車両制限令には牽引車両の車両限界も明示されているのですが、この制限に基づき、陸上自衛隊はFH-70榴弾砲のような基幹装備の制式化にも影響を及ぼし、その範囲内で装備品を選定してきました。

Img_1795 こういいますのも、特に陸上自衛隊は駐屯地から演習場まで、どうしても一般道を利用して展開しなければなりません。しかし、道路法車両制限令を超える車両であれば、交通規制を発令し一般車両の、特に対向車などの通行を制限する必要が出てしまい、毎日のように駐屯地周辺の交通規制を行う、というのはあまり現実的ではありません。

Dimg_6039 防衛産業は、我が国で運用する念頭に立ったうえでの装備品を開発することが出来るのですが、海外製となりますと、特に車幅を2.5m以内とする必然性、例えば輸送機への搭載などからの制限が無い限り合理的になされるものではありません。海外製の装備の方が進んでいて安いのではないか、という視点を持たれる方は、まずその車両が日本の道路を平時通行できるか、注意せねばなりません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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はるなさま (ドナルド)
2012-09-02 01:45:12
はるなさま

ttp://www.dot.ca.gov/hq/traffops/trucks/trucksize/width.htm
によると、カリフォルニアのバスの車輛幅は2.6m (102 inch)、特殊車両は 3m (120inch) のようです。それなのに、ストライカー装甲車(というかピランハIIIシリーズ)は、幅2.7 m (by wiki)。これは、「少しであれば道路交通法の規定よりも幅広でも、実際上、道路を走れる」ことを意味していないでしょうか?

なお、国内のバスやトラックも、幅2.49mなのは車体で、ミラーなどはそこからはみ出ています。町中を幅3m級の重量物運搬車が通る姿もよく見るので(もちろん広い道しか通らないのでしょうが)、2.5mを全ての戦闘車両に厳密に適用すること自体は、不合理だと思います。

#なお、73式装甲車の幅は2.9mなので、96式との幅の差はかなりありますね。これは73式はなかなか公道を通れないかも。。。

おそらく課題となるのは、

1:そうはいっても2.5mの規定ギリギリの道路も多数あるだろうから、2.5mを「大きく上回る」車幅(例えば2.9mとか)だと不具合は出るだろう。装甲車のような多数そろえる車体は、これは避けたい。--> 2.6mくらい、あるいは 2.7mくらいなら、検討の余地はあるのでは?(というかそういうオペレーションリサーチはしたのか?)


2:自衛隊の社会的地位が低いために、車両幅について、「自衛隊車両は特例」という「当然あるべき扱い」ができていない。しかし、これは昨今の情勢からすると、法改正できるのではないでしょうか?-->もちろん自衛隊の内規で、慎重な運転を規定するのは当然ですが。なにしろ、道路が考慮していない「太い車両」を運転するのですから。

背景にあるのは、例えば、ピランハIIIシリーズをそのまま購入できないか?(比較試験&一部部隊用でよい)。例えば、NLAVの売りに出てる奴。

もう一つは、96式に安心して増加装甲をつけられないか?ですよね。

日本の道路は、カリフォルニアの道路よりも実感として狭いので、幅3m近い車両をばんばん導入せよ、とは思いません。しかし、世界の装甲車両の幅を見ていると、96式や次期装甲車の、「幅2.5mの制約」はたしかに防御力の上できつい。例えば「自衛隊車両だけは2.7mまで無許可での通行を許す」などの包括的特例ができると良いですね。。。

その上で、輸入か、ライセンス生産か、国産かを決めれば良い。道交法云々ではなく、オペレーションリサーチとしてもっとも有効な車両を導入したいものです。

一番良いのは、国内の道路事情に合わせた国産車を開発し、その性能が海外の同等品にほとんど劣らず、「かつ」その価格差(運用経費や、国産した場合にめぐりめぐって戻ってくる税金も含む)も2-3割以内に収まっていることです。

なんらかの必要性能が欠落していては、国産の正当性は苦しい(ここで「必要性能」には、当然、価格も含みます。だって、安く作ることこそ、軍事製品の基本なのですから)。
まずは、自衛隊に限り、3Mまたは3.2MまでO... (軍事オタク)
2012-09-03 09:52:23
まずは、自衛隊に限り、3Mまたは3.2MまでOKと法改正すればいいのです。
すぐにできます。

教育の行き届いた自衛隊の輸送であれば事故の確率がものすごく低いです。
政治がやる気を出せば済むことです。
逆に、改正していないのはやる気が無い証拠。

国土防衛は二の次、防衛庁時代から、国土交通省やその他の省から軽んじられているから今の姿があると思います。

自衛隊は暴力装置なので、がんじがらめしてなるべく動けないようにしてあるのです。
まさに異常な状態ですね。


はじめまして。。 (ミッツ)
2012-09-15 14:23:46
はじめまして。。

偶然ネット検索で発見しました。。

突然の質問ですが・・

96年の今津駐屯地の記念行事の写真は持っておられますか??
当方、元自衛官なのですが自分が参加した観閲行進の写真が無く・・もし持っておられるなら頂く事できないものかと思いまして・・><

突然の質問で申し訳ありませんm(__)m
ドナルド 様 (はるな)
2012-12-05 13:35:37
ドナルド 様

海兵隊のLAV-25なら2.5m幅ですので、ヤスリで両端のとがった部分を0.005mつづ削れば2.49mとなり通行できると思うのですが、これではだめですか、ね?、海外製だと、これくらいなのかな、と。

実は物流の海上用40ftコンテナ積載車通行の増大に伴い、幹線道路網29000kmについて2020年ごろまでに国土交通省は9000億円の予算でもう少し幅が広い車両が通行可能と出来るよう整備を9行っていますので、国土交通省によれば全国の道路は1268743km、全体の2.28%の道路はもう少し幅広の車両でも通行できるようになります。しかし、駐屯地を幹線道路沿いに新設して演習場まで幹線道路から自衛隊専用道を建設する、というのは、ちょっと意味が違うのでは、とも思います。

96式と増加装甲ですが、問題となるのは平時の訓練における車両交通で、有事の際の防衛出動では、幅がさらに大きな90式戦車も戦闘地域と駐屯地を交通規制の下きどうします。ですから、平時はクレーン付き3t半などで増加装甲を輸送し演習場で装着、一般公道を走る場合は取り外す、という脱着容易なほう式が模索されるべきでは、と思うのですがどうでしょうか。

現状ですと、千歳市のように予め余裕のある道路を建設し、自衛隊車両通行情報をHPに明示し、短距離であれば通行する、という方法は考えられます。
軍事オタク 様 (はるな)
2012-12-05 13:38:33
軍事オタク 様

現状でこれをやると、普通に自衛隊車両はセンターラインをはみ出して対向車と衝突してしまうのですよ、2.5mの車両しか通れない幅の道路を2.5m以上の車両が通れば、歩道かセンターラインを越えてしまうのは、文字通り物理的にどうにもなりません。道路を広げるしか手はないのですが、まさか映画みたいに片輪走行して狭い道路を走るわけにもいかず、無理の一言以外方法はありません。
ミッツ 様 こんにちは (はるな)
2012-12-05 13:40:18
ミッツ 様 こんにちは

申し訳ない、その頃は一部航空祭や駐屯地祭に行き始めたばかりの頃ですが、もっと近場か、インターネットで情報収集をやっていませんでしたので、実施日がわからない行事は足を運んでいなかったのですよ。

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