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【くらま】日本DDH物語 《第五〇回》ひえい竣工に大型艦は航空巡洋艦か拡大改良型の論争

2018-11-03 20:08:27 | 先端軍事テクノロジー
■しらね型護衛艦建造への道
 くらま、に至る海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦建造の歴史は、決して平たんであった訳ではありません。

 ひえい竣工と共に護衛艦はるな型を更に量産するのか、新型に移行するのか、これは当時ヘリコプター搭載護衛艦は二隻で一つの護衛隊を構成し対潜任務に当る為で、はるな型2隻では一個護衛隊群しか充足できません、既に1974年には第4護衛隊群が新編されており、海上自衛隊は2個護衛隊群を最新鋭艦で固める方針、ヘリコプター搭載護衛艦は4隻要る。

 船体を8m延伸するだけで格納庫に余裕が生まれますのでHSS-2規模の航空機も4機搭載することが現実的となります。これは一例ですが、飛行甲板下に格納庫を配置するだけでもやはり全長はそのままでも6機を搭載する容積を確保できます。ここで再燃するのは、はるな建造の際に飛行甲板をもう少し長く採り2機同時発着機能を配置する可否が再び。

 ヘリコプター搭載護衛艦はヘリコプターの運用が最重要です。格納庫容積を拡張し航空機運用能力を高めた場合でも発着機能はそのままで良いのか、という視点に展開してしまう。HSS-2の搭載能力を8m船体を延伸し、機関部のファンネルやマック構造を再配置するだけで、2機を並列に並べる格納庫内の配置を前後に2機並べることが出来ましたら、どうか。

 8mの船体延長、それだけで4機のHSS-2を搭載できるのですが、はるな型の飛行甲板長では1機づつしか発進できません、すると更に飛行甲板を10m延伸することで飛行甲板は理論上2機同時発着が可能となります。しかし、この変更を盛り込みますと、18mの延伸が必要となる、全幅も大きくなりますので必然基準排水量で6000t級後半までに拡大する。

 はるな型護衛艦にターターシステムを搭載し艦隊防空を担うという建造前の設計時点で検討がありましたが、6000t級後半といいますか、多数のヘリコプターを搭載し複数の航空機同時発着能力を有するように強化されますと、航空攻撃の一撃で機能不随となってはたまりませんので防空能力を強化する必要がある、今度こそターターミサイル、という訳です。

 はたかぜ型ミサイル護衛艦のMk13発射装置配置を思い浮かべていただくと早いのですが、例えば52番砲をターター発射装置に転換するか、艦首に波除けのブルワークを配置し、51番砲の位置にターター発射装置を搭載するなど、考えられるでしょう。すると、ターターシステムは当時でも高価でしたので、必然、護衛艦の建造費を押し上げることとなります。

 3機のHSS-2でどの程度のことが可能であるかを冷静に判断する、妥協案としては問題解決の順延です。運用研究をもう少し続け、その上で納得のいく護衛艦を設計するという。しかし、順延にも限界が生じました、それは高度経済成長の終焉です、1973年の第四次中東戦争を契機としたオイルショックにより日本は高度経済成長という急成長の終焉は痛い。

 毎年10%台の急成長、10%成長すれば7年間でGNP/GNI国民総生産は倍増する訳ですので石油危機は致命的だ。この急成長が突如翌年にマイナス成長となった衝撃は劇的なものでした。マイナス成長と共にインフレによる物価の乱高下が経済を悪化させ、右肩上がりの戦後という理念が瓦解してゆきました。するとやはり防衛計画も長期見通しが立たない。

 こうしますと、3機のHSS-2を搭載したヘリコプター搭載護衛艦の能力を見極める、という以上に第四次防衛力整備計画の計画未達成をどのように予算措置をおこなうのか、という難題を突きつけられました。その結果、高見を目指す大型艦の建造という視点よりも、現在ある装備で自衛隊はどこまでのことが出来るのか、と視点を転じることとなります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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