北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

国籍不明潜水艦が沖縄本島付近久米島沖接続水域へ潜航侵入、P-3C哨戒機が追尾

2013-05-13 23:48:32 | 防衛・安全保障

◆接続水域を潜航、今月初旬に奄美大島沖でも確認

 防衛省によれば、沖縄本島近くの久米島沖の接続水域へ国籍不明潜水艦が先行したまま侵入し、警戒を強めているとのことです。

Simg_4290_1 海上自衛隊は12日深夜に、沖縄県沖縄本島近くの久米島近海の領海接続水域を先行したまま航行する国籍不明潜水艦を発見、P-3C哨戒機により警戒を続けました。国籍不明潜水艦は哨戒機の追跡を受け、久米島南方海域、13日朝までに接続水域を出て公海上へ移動したとのこと。

Pimg_4578_1 国籍不明潜水艦は5月2日にも鹿児島県奄美大島沖の接続水域へ潜航したまま領海接続水域へ侵入し、哨戒機の追跡を受け退去しています。防衛省では、二週間の間に二度の接続水域侵入事案を受け、事実関係の発表に踏み切ったとしており、異常事態であることを端的に示しています。

Pimg_1150 小野寺防衛大臣は、今回の接続水域侵入は、続いて領海内へ侵入へ展開した場合、海上警備行動命令発令を行うと共に防衛省として採る必要な措置について、所要の準備を進めていたと記者会見で発言しており、安倍総理への報告を行った上で不測の事態へ備えていた旨を同席上で述べています。航法ミスにより誤って接続水域への侵入の可能性ですが、短時間ではない一定時間を接続水域内を航行していたことから、この可能性はほぼありません。

Simg_4578 この海域の近くでは2004年11月10日に中国海軍の漢級原子力潜水艦が石垣島の我が国領海へ領海侵犯事案を起こしており、これを以て政府は海上自衛隊へ創設以来二度目となる海上警備命令を発令、航空機および護衛艦により追尾行動をとっています。

Pimg_4597_1 この2004年の事例では11月10日の海上警備行動命令から12日まで追尾が継続され、追尾開始と共に中国を含む周辺国に対し当該潜水艦の所属を問い合わせたところ、どこからも自国艦との返答は無く、国籍不明潜水艦として追尾が続けられましたが、海上警備行動命令解除後の16日に当該潜水艦は中国の青島基地へ入港、同16日に中国外務次官は国籍不明潜水艦が中国海軍艦であることをようやく認め、遺憾の意を表明しました。

Simg_4283_1 潜水艦が我が方の追尾を探知していたのか、についてですが、今回出動したのは那覇航空基地か鹿屋航空基地より展開したP-3C哨戒機であり、同機は潜水艦探知にソノブイ、洋上へ投下させ音波を発してその反響情報を航空機へ伝送することで海中の潜水艦を探知する手法か、ソノブイによる音響情報の収集を行い捜索する手法、潜望鏡深度であれば捜索レーダーによる捜索を実施します。

Pimg_4593_1 ここで音波を発するアクティヴソノブイを使用した場合、その探知音により潜水艦に捜索行動の実施が暴露されるのですが、音波を発しず情報を収集するパッシヴソノブイでは我が方の対潜捜索行動が暴露することはありません。2004年の海上警備行動でも領海接近間近まではパッシヴソノブイを用いていたと発表されていますので、接続水域への侵入後、海上警備行動命令などが発せられるまでは我が方の追尾を暴露しないよう警戒していた可能性は2004年の事例から考えられます。

Simg_5725 ただ、潜水艦が潜望鏡を露呈した場合には対水上レーダーを哨戒機は搭載しているため、これによる捜索が行われ、電波の照射を感知することはあったかもしれません。もっとも、接続水域に侵入する潜水艦がこうした行動をとることは、通常考えにくいのですけれども。

Pimg_6047 接続水域とは国連海洋法条約に定められたもので、領海12浬と公開を接続する海域の24浬に背呈されるもので、元々は国際慣習法時代に領海線外からの艦艇による陸上への火力投射手段が整備されるとともに、これらの行動を防止するための必要な措置を採る領海に準じた措置を採ることができるもの。

Simg_5744 ただ、接続水域は領海ではなくその接続する水域であることから必要な措置を採ることは出来ますが、必要な措置とは警戒態勢や追尾などに限られており、攻撃を受けるなどの例外を除いて、爆雷やそれに準じる対潜爆弾を用いての攻撃や魚雷による撃沈を行うことはできません。

Pimg_4574_1 国連海洋法条約は中国も批准しており、この中で接続水域について24浬を基本とする一方で、一部の国では異なる主張を行っていることがあるのですが、我が国は24浬という基本的な立場を取っており、中華人民共和国も24浬という立場をとっています。

Simg_1033 しかし、この接続水域では艦艇は無害通航権を有するものの国籍を明示する必要があり、これが不可能となる潜水艦などの潜航しての接続水域侵入は認められていません。他方、2004年の海上警備行動命令以降、潜水艦へはソナーなどの潜水艦捜索手段を有さない海上保安庁ではなく、防衛省海上自衛隊が主管すると転換されており、今回はその方針が効果を発揮したといえるでしょう。

Simg_5723 他方、今回、潜水艦の探知情報を発表したことで、我が国の潜水艦探知能力の水準を知られるのではないか、という危惧が一部にあるかもしれません。ただ、これは幾つかの理由が考えられ、一つは推測ですが前述のパッシヴ方式で暴露しない範疇での追尾を行い、追尾できるという技術的誇示を行う抑止の方法。もう一つは先行したまま接続水域への侵入は非常に稀有な事例であり、外交的に解決するべく公としたもの。考えられるのはこの二通り。

Simg_5735 様々な理由は考えられるのですが、2004年の海上警備行動以後、中国潜水艦による日本近海での潜航しての航行は激減しており、接近する場合でも浮上航行していました。これがあからさまな国連海洋法条約に反する先行しての接続水域侵入を行い、今回の二週間で二件という事態へ転化したことは、繰り返す事ですが異常事態に他ならず、警戒が必要といえるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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24 コメント

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国際法上、接続水域内を潜水艦が航行するのは何ら... (市民の目)
2013-05-14 00:37:15
国際法上、接続水域内を潜水艦が航行するのは何ら問題がありません。にもかかわらず自民党のタカ派勢力が中国のイメージを悪くさせようと印象操作をしているだけです。
中国にとってこの海域や島は核心的利益です。日本がどうのこうの言う権利はありません。

国際法上問題があると言うなら論拠を示すべきです
返信する
市民の目 様 (はるな)
2013-05-14 01:11:55
市民の目 様

潜航しての接続水域へ侵入は認められていません

>中国のイメージを悪くさせようと印象操作をしているだけです。

スマン、本文中、今回の事案、中国潜水艦とは一言も書いていないのですが、よくご存知ですね
返信する
>>国際法上、接続水域内を潜水艦が航行する... (ぬるねこ)
2013-05-14 02:03:30
>>国際法上、接続水域内を潜水艦が航行するのは何ら問題がありません。
ホント、平気な顔で嘘を垂れるな、こいつ
何が問題ないだ
自分勝手な拡大解釈をするな
接続水域内を航行する際、『国籍を明示する事』が条件だって書いてるだろうが

>>にもかかわらず自民党のタカ派勢力が中国のイメージを悪くさせようと印象操作をしているだけです
現実に起きている潜水艦の潜航侵入問題を無視して、自民非難を始める市民の目氏のコメントこそ印象操作なんですけどw(この記事でなんで、いきなり自民のタカ派とかでてくるんだ?w 意味不明すぎるw)
少しは自分の行動を振り返り、反省したら?

>>中国にとってこの海域や島は核心的利益です。日本がどうのこうの言う権利はありません
はいはい、核心的利益核心的利益
その言い訳は聞き飽きたから、別の言い訳を少しは考えたら?
まあ、語彙が貧相な君にそんなのは無理かw
市民の目氏は中国の利益は日本の主権より上だと思っているんだろうけど、普通の人はそうは考えていないってのを少しは理解しましょうね
はっきりいって、日本の主権をないがしろにするあんたの言葉は誰も賛同しないよ

>>国際法上問題があると言うなら論拠を示すべきです
記事には>>国連海洋法条約は中国も批准しており、この中で接続水域について24浬を基本とする一方で、一部の国では異なる主張を行っていることがあるのですが、我が国は24浬という基本的な立場を取っており、中華人民共和国も24浬という立場をとっています。
>>この接続水域では艦艇は無害通航権を有するものの国籍を明示する必要があり、これが不可能となる潜水艦などの潜航しての接続水域侵入は認められていません。
きちんと根拠を書いてるじゃん
ろくに記事も読まずに、コメントするのは止めろ


しかし、市民の目ってこのサイトで何がやりたいの?
書き逃げして楽しいの?
市民の目氏がこれまでやってきた間違いや差別発言・暴言といった数々の問題行為に対して、謝罪しろといっているのに、いまだにしようとしない癖に、他人には偉そうにあれをしろこれをしろと要求するんだからな
返信する
みなさん (KGBtokyo)
2013-05-14 13:30:05
みなさん

”腐った目”とかいうのは典型的な釣りですので相手にしないのが一番!
無視していればいずれ消えていきます。
返信する
>腐った目 (専ら読む側)
2013-05-14 19:31:50
>腐った目
どーぶつの目とも言いますな
返信する
ブログ主は潜水艦が接続水域内を潜航するのが国際... (市民の目)
2013-05-14 21:13:14
ブログ主は潜水艦が接続水域内を潜航するのが国際法違反である論拠を何も示していない。領海内は無害通行権のセットとして、浮上航行する義務を負うが、今回は領海侵犯はしていない。

国際法に違反していないにもかかわらず大袈裟に書くのはいかがなものか?

慣習法から実定法まで十分に調べた上で記述するべきだろう
返信する
領海条約第14条1項及び国連海洋法条約第17条... (はるな)
2013-05-14 22:39:28
領海条約第14条1項及び国連海洋法条約第17条には無害通航権を有する船舶の定義が定められていますが、潜航した潜水艦はこれには含まれません

国連海洋法条約第33条1項では、接続水域は領海でないため、沿岸国の主権行使は大きく制約されているものの、予防的警察措置などを執る権限は認められています

公海条約第23条1項、ここで接続水域における不法行為に対する継続追跡権が認められているため、接続水域は公海と言えども領海に準じた国家の権限が及ぶことを示しています

つまり、分かりやすく言えば、潜航した潜水艦は無害通航権を行使できない領海条約、これをもとにした国連海洋法条約では接続水域は強制措置が行使できないだけで沿岸国の主権は存在する、公海条約に或る通り接続水域は公海であるが公海は接続水域でないため別物である、よって有害通航を領海に準じた海域で行ったことが、国連海洋法条約に反している、ということ

そして、もともと、無害通航権は公海で適用するものではなく、領海と接続水域か国際海峡を通行する際の概念ですので、無害通航権という概念を持ち出す時点で、黄海にはいない、という事です。そして、潜水していましたので、予防措置は取れるのです

更に言えば、領海と公海の間に或る接続水域、ここで公海と同じように外国艦船が何をやってもいいのならば、そもそも国際法上、接続水域、という概念は必要ないですよね、それなのに概念が厳格に定められている、つまり、公海ではなく接続水域なのですよ、そして予防措置として警告を行うことも日本は出来ましたし、継続追跡を行う権限も持っていました

ただ、今回の事案は継続追跡権の行使を行うに必要な要件を満たしているにもかかわらず行使されなかったことは、我が国の国内法が継続追跡権に関する法整備の努力を怠っているためで、過去の武力攻撃事態法以前の超法規を容認せざるを得ない危険な状況を回避するために、継続追跡権行使に関する自衛隊法改正の研究を進めねばなりません

ところで、今回の潜水艦は未だ国籍不明潜水艦なのですが、書き込まれました“中国にとってこの海域や島は核心的利益”という意味が不明確なところ

併せて言えば、国籍不明潜水艦の旗国は、我が国の管轄権が限定的ながら及ぶ海域において有害通行と見做される潜航しての航行を行ったわけですが、これ自体は批判される要素を大なり小なり含んでいる反面、我が国のとった行動は監視であり、予防措置に含めるかも議論が分かれるもの

かりにどこかの国が我が国の立場に問題がある、とする立場をとるならば、国籍不明潜水艦の旗国が、まず潜水艦の所属を提示し、その上で立場を示すのが筋でしょう
返信する
KGBtokyo氏 (ぬるねこ)
2013-05-15 00:33:40
KGBtokyo氏
>>無視していればいずれ消えていきます
市民の目は、他人の言葉に耳を傾けない、自分の都合の悪い事は一切見えない典型的な人格障害者だからね
飽きるまで続けるんでしょうね
返信する
市民の目殿へ。 (通りすがりの者。)
2013-05-15 00:34:40
市民の目殿へ。

レスすればする程、恥さらすよwww潜水艦の場合、接続水域内を航行する場合、浮上航行し国籍を明示する義務が有る事は、海洋法に記載されてるだろうが。
返信する
焦点が狂った市民気取りの目は眼科に行って治療し... (眼科)
2013-05-15 00:43:58
焦点が狂った市民気取りの目は眼科に行って治療してもらいなさい。
弾道ミサイル搭載原潜を保有する国が近くにある以上、日本周辺で潜行中の潜水艦らしき物体を発見したらマークするのは当たり前の事です
返信する

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