北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報③ 普通科部隊車両観閲行進

2012-07-11 22:24:08 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
◆第10連隊・第18連隊・第28連隊
 真駒内駐屯地祭観閲行進は車両観閲行進へと展開しました。車両行進はかなりの車両が行進に参加しましたので、こちらも数回に分け掲載します。
Mimg_0012 車両観閲行進、第11旅団は隷下部隊として普通科連隊に真駒内第18普通科連隊、滝川第10普通科連隊、函館第28普通科連隊がおかれています。かつては第18普通科連隊のみが装甲連隊でしたが、師団の旅団改編に伴い、装甲車を各普通科連隊に分散させ、普通科部隊の任務遂行能力を均一化しました。
Mimg_1286 連隊長原田一郎1佐以下部隊の行進です。滝川駐屯地の第10普通科連隊、連隊旗と共に会場を進みます。第10普通科連隊の歴史は古く、1951年の警察予備隊時代に第10連隊として九州で創設され、陸上自衛隊創設と共に北海道防衛警備強化を期して真駒内駐屯地へ、この当時は15個中隊を基幹とする旅団並みの規模を誇っています。
Mimg_1294 連隊の駐屯する滝川駐屯地は旅団管区北部にあり、日本海に面する雄冬岬に暑寒別岳と夕張山地に挟まれた隘路にあり、北に深川市と南に砂川市、道北の第二師団との警備管区境界線にあり、最も脅威を受ける道北旭川と音威子府方面に対し、その背後に当たる留萌方面からの着上陸と内陸部への侵攻を阻止するのが滝川駐屯地駐屯部隊の使命です。
Mimg_1303 本部管理中隊の観閲行進。軽装甲機動車の行進です。斥候任務に当たる情報小隊に配備されているのでしょう。第10連隊は第10普通科連隊へ改編され、1962年の第11師団創設とともに普通科中隊以外を師団へ送り、一部普通科中隊は別の連隊へと改編されています。当時の連隊には戦車中隊まで配置され、連隊戦闘団を常設編成としていたようなものです。
Mimg_1308 軽装甲機動車は本部管理中隊のみの配置のようです。かつての重厚な連隊編成。指揮系統を考えた場合、即応性を考え連隊戦闘団を常設することも理想ですが、訓練環境を考えれば戦車大隊や特科連隊に配置し、必要な場合のみ抽出する方式の方が、訓練担当と運用担当という意味では理にかなっているのでしょうか。
Mimg_1325 第10普通科連隊第1中隊、高機動車により自動車化されている中隊です。高機動車により迅速な運用を行うのですが、同時に中隊には普通科小隊のほか、迫撃砲小隊が81mm迫撃砲を運用しています。イギリス製装備を我が国の豊和工業がライセンス生産した射程5kmの迫撃砲で、軽量ですがその分小回りが利く装備で、隊員の信頼はかなりのもの。
Mimg_1342 第10普通科連隊第2中隊、こちらも高機動車で自動車化されています。普通科中隊には小銃小隊と迫撃砲小隊に加えて対戦車小隊が編成されており、対戦車小隊には射程2000mの87式対戦車誘導弾が配備されています。通称中MATでレーザーを照射しその反射へ向けミサイルが飛翔し命中するもの。ミサイルの飛翔速度は速く、加えて発射器から離れた場所から照準も可能です。
Mimg_1351 第10普通科連隊第3中隊、96式装輪装甲車により装甲化された中隊です。小松製作所により開発されたこの装甲車は全長6.84 m、全高1.85m、全幅2.48 m、重量14.5 t。25mm程度の圧延鋼板で防護された陸上自衛隊初の装輪装甲人員輸送車で360馬力の三菱6D40液冷6気筒ターボチャージドディーゼルエンジンにより最高速度100km/h、航続距離500kmを発揮するもので約350両が調達され、生産は今も継続されている。
Mimg_1369 第18普通科連隊の観閲行進。連隊長福增与志朗1佐とともに連隊旗が進みます。第18普通科連隊は真駒内駐屯地に駐屯する旅団司令部と同じ駐屯地の連隊で、1992年に73式装甲車部隊に改編、2004年に96式装輪装甲車で完全充足させましたが2008年の第11師団の旅団改編に伴い、他の連隊の高機動車充足部隊へ装甲車を再配置したという部隊です。
Mimg_1376 真駒内駐屯地は札幌市の駐屯地で、第18普通科連隊の絶対的使命は有事の際に道都札幌を死守すること。駐屯地は広大な面積から忘れられがちですが北部方面総監部まで2km、札幌駅や北海道庁まで直線距離にして5km、札幌市は内陸部ですが20kmで石狩湾に達し、冷戦時代空中機動部隊アンブルの強襲で小樽港が制圧され、重装備が挙げられれば道都札幌が危機に曝される可能性が大きく、第18普通科連隊の使命は重要でした。
Mimg_1385 本部管理中隊。この第18普通科連隊は本部管理中隊、第1中隊、第2中隊、第3中隊、という編成です。師団普通科連隊と比較しますと重迫撃砲中隊がありませんし、対戦車中隊はもちろん、ナンバー中隊の数も少なく、師団普通科連隊が定員1200名に対して、旅団普通科連隊は600名程度が定員となっており、少々小ぶりなのが旅団普通科連隊というもの。
Mimg_1407 第18普通科連隊第1中隊。高機動車により充足している部隊です。高機動車は1993年から配備が開始された小銃班の高機動運用のための車両で、火砲輸送及び牽引、対戦車ミサイルなどの搭載、対空レーダや地対空ミサイルの発射装置、電子戦に通信中継用と既に3000両以上が納入され今も生産が続く自衛隊の傑作車両です。
Mimg_1416_2 第18普通科連隊第2中隊、高機動車の中隊。この高機動車ですが全長4.91 m、全幅2.15 m、全高2.24 m、重量2.64 tの四輪駆動車、これまでトラックに揺られていた部隊が最高速度130km/hで400km先まで迅速に展開できるようになりました。装甲はありませんが、車高が非浮く不整地突破能力が大きいので、トラックで展開する場合は見つからないよう相当戦域から離れた場所で降車したのですが、こちらならば戦闘加入直前まで機動力が発揮できる。
Mimg_1431 第18普通科連隊第3中隊は装甲中隊です。装輪装甲車ということで、装軌式であった73式装甲車では長距離移動の際には頻繁な点検と整備を行うか、大型トラックに搭載して輸送する必要がありましたが、こちらですと高速道路を自走して素早く展開できます。しかし、泥濘や傾斜地に森林地帯での不整地突破能力や障害突破能力では73式の方がはるかに上、とのこと。NBC防護能力がありますが、浮航能力はありません。
Mimg_1438 96式装輪装甲車は搭載武装に12.7mm重機関銃搭載型と40mm自動擲弾銃搭載型があります。12.7mm重機関銃は自動車化された普通科中隊でも中隊本部に配備されていて、地上設置用の三脚や、73式小型トラック、今でいう1t半に搭載して運用できるのですが、装甲化されていると、こうした射程の大きい火器を同行させられるのが強力ですね。
Mimg_1440 40mm自動擲弾銃、正式名称は96式40mm自動擲弾銃で、豊和工業が開発し、96式装輪装甲車と共に制式化されました。対人対装甲車擲弾が発射でき、麺制圧が行えるのが特色なのですが、機関銃を面と共に点制圧に用いてきた陸上自衛隊に在っては、あまり馴染まない装備だった模様。どうせならば米海兵隊のAAV-7水陸両用車のように40mm自動擲弾銃12.7mm重機関銃併用銃塔にしてみたら、と思ったりします。
Mimg_1447 第28普通科連隊の観閲行進、連隊長賦勺義矢1佐とともに堂々の観閲行進です。第28普通科連隊、MiG-25函館亡命事件に際して非常警戒態勢を取ったことで有名なあの第28普通科連隊です。MiG-25は1976年当時世界最速で現在でもその記録は破られていない最新鋭戦闘機、ソ連特殊部隊がMiG-25破壊に展開するという情報が米国よりよせられ、第11師団より61式戦車及びL-90高射機関砲を受領し臨戦態勢に入っていました。
Mimg_1452 函館駐屯地に第28普通科連隊は駐屯していますが、この函館は津軽海峡という重要海峡に面しており、冷戦時代に日ソ開戦となった場合には本土からの増援部隊が通行する絶対必要な戦略上の要衝であり、当然空挺特殊部隊等の攻撃にさらされる地域です。第28普通科連隊がここを抑え、東北の第9師団と連絡し、本土からの第6師団や第10師団、第13師団に第8師団の増援を受ける事が北海道と我が国の防衛に絶対必要だったのです。
Mimg_1457 第28普通科連隊本部管理中隊。連隊本部管理中隊ですが、任務は色々とありまして、中隊本部に本部班と人事班に対射撃班が置かれ、情報小隊、通信小隊、輸送小隊、管理整備小隊、施設小隊、迫撃砲小隊という編成になっており、実はかなりの種類の車両を保有しています。災害派遣にも活躍する装備の数々は連隊の最小限の自己完結能力を担保する部隊と言えるやもしれません。
Mimg_1462 本部管理中隊の役割を見てゆきますと偵察と斥候を行う情報小隊、連隊の指揮統制を繋ぐ通信小隊、中隊の戦闘支援任務に当たる輸送小隊、第一線と後方の救急搬送と応急治療を行う衛生小隊、連隊に配備される第一線車両整備支援を行う管理整備小隊、陣地構築を行う施設小隊、それに迫撃砲小隊が配置されています。
Mimg_1463 軽装甲機動車。情報小隊に装備されている車両のようですが、北海道以外の陸上自衛隊普通科連隊ではこの軽装甲機動車によって編成された中隊が装甲中隊としての任務に当たっています。一個小銃班を二両に分ける運用で、火力拠点の多様化を図り柔軟な運用を担保するものです。普通科中隊の対戦車中隊へ配備し、機動運用できると強力だろう、と思うのは当方だけでしょうか。
Mimg_1468 本部管理中隊迫撃砲小隊。フランス製を豊和工業がライセンス生産した120mm重迫撃砲RTを4門装備しています。通常最大射程8100m、射程延伸弾使用時の最大射程13000mで榴弾のほか照明弾なども発射できる野砲並の射程と威力を備えた迫撃砲です。師団普通科連隊では重迫撃砲中隊に16門装備しているのですが、旅団普通科連隊では重迫撃砲部隊を本部管理中隊へ配置し、運用しています。
Mimg_1474 第28普通科連隊第1中隊。第28普通科連隊も本部管理中隊、第1中隊、第2中隊、第3中隊、という編成です。自動車化で、もう少し軽装甲機動車は多いのかな、と思っていたのですが、そんなことはありませんでした。ただ、高機動車化とはいっても部隊は強力です。中隊は三個小銃小隊に対戦車小隊と迫撃砲小隊ですが、小銃小隊の火力がかなり大きくなっていることを忘れてはいけません。
Mimg_1488 第28普通科連隊第2中隊、こちらも高機動車。小銃小隊は小隊長と小隊陸曹に通信手を本部として三個小銃班を基幹としていますが、小銃班は分隊長と組長以下小銃手3名が89式小銃を携行し、機関銃手が5.56mm分隊機関銃MINIMIを携行、対戦車手が射程1500mの国産装備01式軽対戦車誘導弾を装備、これに必要に応じ弾薬扱いの110mm個人対戦車弾通称パンツァーファウストⅢを携行、火力はかなりのもの。
Mimg_1505 第28普通科連隊第3中隊は他の連隊と同じく96式装輪装甲車を装備しています。ところで、今回の真駒内駐屯地祭記事の最初に撮影位置のことを記載しましたが、普通科部隊の観閲行進、完全に真正面から撮影することとなりました。もう少し、右側によって撮影したらば、観閲台と観閲行進の車列、という構図になったのでしょうか、ね。
Mimg_1508 96式装輪装甲車を以て普通科部隊の観閲行進は終わり。いやあ、かなりの迫力でした、と思われるかも知れませんが第11旅団の観閲行進において普通科部隊はほんの最初に過ぎません、まだまだこれからで、施設、特科、機甲科、続々と続く観閲行進の様子は次回に掲載したいと思います。お楽しみに。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする