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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

弾道ミサイル防衛に関する前進と米軍再編

2005-11-24 13:21:18 | 国際・政治
 米軍再編問題と米国産牛肉の輸入再開を首脳会談において議論すべくブッシュ大統領が15日から16日にかけて訪日したことは周知であるが、あれから一週間、これを契機として幾つかの政策決定が為されたようである。
IMG_1031 厚木基地の第五空母航空団艦載機が広島県岩国基地へ移転する事は既に先月の日米ツープラスツー合意にて為された事であるが、CNNやABCの報道によれば、ついで日本配備となる原子力空母が、“ジョージワシントン”に内定したということである。太平洋艦隊所属空母などを俯瞰したところ、ニミッツかカールヴィンソンが有力と目されていた中で、ジョージワシントンに内定した背景は、“ハリーシップトルーマン”や“ニミッツ”は第二次世界大戦を髣髴とさせるもので、日本側の感情に配慮されたとされる。
IMG_2892 さて、米軍再編において最も大きく取り上げられるのが、航空総隊司令部の横田移転であるが、その最大の背景となされるのが弾道ミサイル防衛である。
 弾道ミサイルに関しては発射から着弾までが十数分でしかなく、そのタイムラグを如何に縮めるかが大きな課題となる。米空軍(宇宙コマンド)は静止衛星軌道に弾道ミサイルの発射を察知するDSP衛星多数を配置し、全地球規模のミサイル監視網を整備しており、これに関しての情報交換を迅速化させるには司令部を横田にある第五空軍司令部と隣接させる事という結論に至った事は想像に難くない。
IMG_4344 さて、これに関して日本側の独自弾道ミサイル監視網の整備が90年代から囁かれていたが、海上自衛隊の余剰となったP-3C哨戒機の改良型偵察機開発ということで前進があったことをお知らせしたい。
 写真は従来型のP-3Cであるが、95年の防衛大綱改訂に伴い定数を100機から80機に削減された事で、既に製造配備された20機のP-3Cがモスボールされ保管されている為、EP-3電子偵察機若しくはOP-3画像偵察機への転用などが予測されていた訳であるが、更に一歩前進していた事が昨日明らかになった。
1132718619481 写真は昨日報道された赤外線センサー実験機“エアボス”の写真であるが、これは日本版コブラボールとして紹介されていた。
 P-3Cの航続距離は6500kmと非常に長く、中国奥地の第二砲兵ミサイルサイロの監視には能力的に限界が予測されるが、北朝鮮に対しては能力的に可能な範囲である事が期待される。
 航空自衛隊としては要撃管制の中枢であるバッジシステムの情報開示を部分的なモノは別として全面開示にはかつてから難色を示していたが、今回の独自警戒網整備への航空機整備はこれに一石を投じるものとなる事が期待される。しかし、P-3Cという点からも明らかなように海上自衛隊所管の航空機であり、弾道ミサイル防衛に関してはイージス艦の搭載するSM-3ミサイルの役割が大きい事を思い出す。
FH030025 現在航空自衛隊が導入を進めているペトリオットミサイルPAC-3は射程が僅かに15kmでしかなく、より長射程のTHAADが完成するまではイージス艦が運用するスタンダードミサイルSM-3が最も重要な装備となろう。
 これに関して、ミサイル防衛に関しては果たして航空自衛隊だけによって行いえるものであるかが今後の大きな課題となるのは想像に難くない。というのも、イージス艦は横須賀の自衛艦隊隷下にあり、また、弾道ミサイル防衛に関しては陸上自衛隊が運用する射程60kmの03式中距離地対空誘導弾もその一端を担う事になるのは間違いない。
 従って、最終的には日本版NORADというべき統合司令部が必要となる可能性も生じてこよう。
IMG_2371 また中央即応集団や事実上の軽空母となる次期DDHなど、米軍再編と同時に、それ以上の変革規模を内蔵した自衛隊再編が極めて早く進展している事を、心に留めておく必要があろう。
 HARUNA


コメント (2)
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