熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

美術品の盗難・・・世界遺産にならないか

2007年08月28日 | 生活随想・趣味
   日本では、古社寺の仏像がよく盗難にあっているが、世界の美術館や博物館からは、名画がよく盗まれて、話題になることがある。
   あのルーブルのモナ・リザだって、簡単に配管工によってイタリアに持ち帰られたことがある。自分たちの国のものだからと言っていたが転売目的であり、あまりにも有名な絵なのであっさりと捕まってしまった。
   もっとも、このモナ・リザは、レオナルド・ダ・ヴィンチが、晩年に、フランソワ一世王にフランスに招聘されて移住し、最後まで所持していた3点のうちの一つで、クロ・リュッセで亡くなりアンボワーズに埋葬されているのだから、イタリアのものとは言えないであろう。
   このモナ・リザ、三十年ほど前最初に見た時には、普通の額縁に入って壁にぶら下がっていて、前に1mほどの間隔をおいてポールが立って綺麗なロープが架けられていただけだったが、今は頑丈な防弾ガラスの厳つい箱の中に納まっている。

   ところで、このルーブルだが、1998年5月に、窃盗犯は、人気のない展示室からコローの「セーブル街道」を白昼堂々と額縁から外して盗み出した。
   空っぽの額縁に気付いた客が通報して分かり、出入りをシャットして客全員の身体検査をしたが後の祭り。驚くなかれ、ルーブルは収蔵品の点数や雇用している人数について、およその数字さえ把握していなかったと報じられている。
   ルーブルが、これであるから、世界の美術館や博物館の警備がどうであるかは推して知るべしで、お寒い限りであろう。
   とにかく、数十億円もするような絵画が誰にでも剥き曝しに展示されていることを思えば、危険なことであるが、現金のように金庫に保管するというわけには行かない。

   リレハンメル冬季オリンピックの開会式の日に、オスロの美術館から、ノルウェーの正に国宝ムンクの「叫び」が盗難にあったのは有名な話だが、一般的に、絵画の窃盗犯達は、今のハッカーのように難易度の高い技術に挑戦し自分の技量を世に知らしめることに快感があるのだと言う。
   従って、有名な絵画などを狙って成功すると同業者(?)が畏敬の念を持って見るとか、おかしな世界があるのである。

   博物館や美術館の警備が手薄になるのは、館に予算がないことにある。
   イギリスの場合には、殆ど入場料が無料だが、実際にはトイレットペーパーにも困るほど資金がショートしていると言う。
   警備に予算を振り向けると美術館本来の目的に使う資金がなくなってしまうのである。
   また、アメリカの警備会社では、美術館の警備員の自給を同地域のマクドナルドの自給より45セント低く設定しており、訓練は愚かまともに警備出来ないような人を安い賃金で雇って対応している。
   ところが、最新式のセキュリティ・システムを完備しても、敵も然るのもで、イラクのテロと同じで大胆にアメリカ兵を襲うようにアタックしてくるので手の打ち様がない。
   とにかく、何十億もするキャッシュが額縁に入って、無防備に壁にぶら下がっているのが美術館だからである。

   通常、美術館は収蔵品に対する損害保険はかけても、盗難保険はかけていないようである。(アメリカは付保している模様)
   日本でもよく行われる海外美術品の特別展では、釘から釘の盗難保険がかけられている様だが、地方の貴族の館の美術館などはまず保険には無関心である。
   大美術館が盗難保険に入っていても、それは、代わりの絵画を取得するためのようで、本当か嘘か分からないが、これが窃盗犯からの買戻し交渉のバーゲニングに利用されるのだと言うから驚きである。

   比較的、超有名な絵画は市場性がないので見つかる公算が多いようだが、盗まれた90%が永遠に闇に消えてしまっていると言う。
   偉大な人類の文化遺産が無防備にどんどん消滅して行く。
   恐ろしいことだが、歴史や自然遺産よりももっと儚くて弱い絵画などの美術遺産も世界遺産として保護出来ないであろうか。
   戦争が起これば、イラクのバグダッド美術館のように略奪に合うし、バーミアンの石仏のように爆破されてしまうが、その前に、文明国にある絵画などの美術遺産を守る方策をもっと真剣に考えてもよいと思っている。
   
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