熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

B.リバート/R.フォーク著「チーム・オバマ勝利の戦略」

2009年05月20日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   冷静さを貫いたリーダーシップ・スタイルからインターネットのソーシャル・テクノロジー、そして基調に流れる変革のメッセージ。
   イリノイの片田舎から彗星のように現れた無名の黒人政治家バラク・オバマが、正に時代の申し子と言うべき選挙キャンペーンを展開して、奇跡とも言うべき逆転劇を演じて、超大国アメリカの大統領になった。
   全米を地殻変動のように動かしたネット戦略を駆使して勝利をおさめたオバマの選挙戦と政治哲学から、今こそ、ビジネス界は教訓を学んで、創造的破壊の大変革を志向して未曾有の大不況から脱出すべきだと、経営戦略学として書かれた小冊子が、このバリー・リバート&リック・フォーク著「チーム・オバマ勝利の戦略 BARACK,Inc. WINNING BUSINESS LESSONS OF THE BARACK CAMPAIGN」である。

   著者たちが説くオバマの傑出した特質であるとしてあげている3点の内、冷静さを貫いたリーダーシップ・スタイルと変革のメッセージについては、ある意味では、他の大統領や企業トップにも現れ得る条件なので、ここでは、正に、IT革命の発露とも言うべきソーシャル・ネットワーキングの巧みな活用が、如何に、オバマ選挙キャンペーンにおいて、破壊的なパワーとして炸裂し貢献したかについて考えてみたい。
   蛇足ながら、オバマ大統領が、未来志向の素晴らしい哲学と知力を具えた不世出の逸材でありトップ・リーダーであることは、疑いがないと思っているので、ソーシャル・テクノロジー活用のネット戦略選挙のみを強調しているのではないことを付記しておきたい。

   スマートフォン「ブラックベリー」愛用のネット世代であるオバマは、Facebook,Flicker,Twitter,YouTubeなどのウェブサイトと言ったソーシャル・ネットワーキングを巧みに使って、選挙には無縁であった数百万の若者たちに初めて有権者登録をさせ、皆が必ず投票に行くことを促した。
   ブログ、携帯メール、携帯電話網などインターネット技術をフル活用して、アメリカ全土にわたる草の根コミュニティ(My.BarackObama.com)を立ち上げ、支援者との瞬時のコミュニケーションを可能にし、一人一人の小さな協力者を献金者とボランティアの大軍勢に変えて、600億円を超える膨大な選挙資金を集めたのみならず、オバマの為なら何でもすると言う献身的な人材を糾合して結成された運動員チームを動員し、最初から最後まで徹頭徹尾オバマ・キャンペーンを推進し続けたのである。

   ヒラリー・クリントンが独走していたので、後を追うオバマには、草の根アプローチが残された唯一の道であり、オンライン・コミュニティを結成して、変革のメッセージを伝播して支持者の大津波を巻き起こす以外に選択肢はなかったのである。
   オバマは、フェイスブックの創業者の一人である24歳のクリス・ヒューズを引き抜いて、前述のMy.BarackObama.comを作成させた。
   アクセスした個人が、オバマ当選に協力の意思を示すと、エレガントでエンターテインメント性のあるフェイスブックと同じようなMyBoのページに飛んで、自分の個人ページを作成して独自にオバマ・キャンペーンが可能となり、これが、巨大な電子メガホンとなり、数億ドルの献金が集まり、数百万本の支持を呼びかける電話が架けられ、10万単位のオバマ支援イベントが組織されたと言う。
   とにかく、数え切れないほどのボランティアのオバマ・サポーターたちがが、寝食を忘れて、有権者たちに、携帯電話やインターネットで、オバマ支持を訴え続けて来たと言うのである。
   
   オバマのインターネットを駆使したソーシャル・テクノロジーを活用した選挙キャンペーンが、政治の世界を大きく変革してしまった。
   正に、フリードマンの言うフラット化した世界での大変革であり、ウイキノミクス時代におけるソーシャル・テクノロジーが大旋風を巻き起こしているグランズウェルの大波を如何にして乗り切って行くか、政治も経営も、全く新しい局面に突入してしまった。

   ところで、新生鳩山民主党が、選挙に抜群の威力を発揮すると言う小沢一郎氏を選挙担当の代表代行に指名したが、果たして、日本のために、そして、民主党のために、時代の潮流を見越した正しい戦術であったのかどうか、非常に興味深い問題でもある。
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