熟年の文化徒然雑記帳

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ジェネラルパーパス・テクノロジーITを使えない日本の経営・・・野口悠紀雄教授

2008年11月06日 | 政治・経済・社会
   ジェネラルパーパス・テクノロジーとは、一般汎用技術で、例えば、電気がそうだが、イギリスでは、この電気をうまく使えなくて、イギリス病を引き起こして経済の成長を阻害したと言うのである。
   イギリスでは、革新的なエネルギーである電気が普及し始めた時に、蒸気機関車を運転する釜焚き組合が強くて、電気機関車の導入が遅れてしまったのである。
   そう言えば、私がロンドンで始めて仕事をし始めた時、ニューヨークタイムズの植字工がストを打って休刊していたし、家を建てるのに建設労働者が組合の指令でレンガを数個積んだだけで帰るので何年もかかったと言う嘘のようなことが起こっていて、ロンドン中がごみの山に包まれた深刻な英国病の真っ只中であった。
   尤も、その後、サッチャー首相が、組合活動を徹底的に叩き潰して、ウインブルドン現象を厭わず外資を導入し、ビッグバンを行うなど、英国経済を蘇らせた。

   こんな話から、野口教授は、今日、世界中を大きく変えつつある重要なジェネラルパーパス・テクノロジーであるIT技術を、日本の企業が十分に活用出来なくて、企業の発展と経済成長を阻害していると説き始めた。
   このジェネラルパーパス技術を活用するためには、経済社会なり企業なり体制全体の仕組みが大きく関係しており、適していないと使えないのだが、日本の企業の体制は、産業のIT化を推進出来る体制になっていないので、このままでは駄目だと言う。

   90年代以降から、グローバル社会は大きく変革を遂げ、パラダイムシフトした。
   冷戦の終結によって、市場経済が倍以上に拡大し、安い労働力が参入して、工業製品の価格がどんどん下落し、
   また、IT革命によって、グローバル・ベースで、通信コストや情報処理コストがゼロにまで下落し、これらが相俟って、脱工業化社会となり、
   ものづくりを中心とした国家経済は、没落して行き、逆に、IT技術を駆使して、産業構造を、金融やITソフトなど知識情報産業化にシフトした国へ、経済発展と成長のトレンドが移ってしまったと言うのである。
   実際、日本のみならず、ドイツやイタリアやフランスなどの工業大国の凋落と対照的に、北欧などヨーロッパの小国の成長には目を見張るものがある。

   野口教授は、時価総額で、企業を3つのグループに分ける。
   Aグループ:グーグル、ヤフー、エクソン・モービル、アップル、マイクロソフトetc.
   Bグループ:トヨタ、キヤノン、IBM、ソニー、三菱重工、日清紡etc.
   Cグループ:富士通、日立、NEC、GM、フォード
   夫々のグループ間で、従業員一人当たりの時価総額の値が、一桁づつ違いがあるのだが、この産業構造の成長格差は歴然としており、今回の世界危機においても、アメリカは、風前の灯火であるデトロイトを抱えてはいるが、Aグループ企業を多く持った産業構造と社会進歩の高位の位置づけにあるので、将来への心配はないと、野口教授は言い切る。

   ところで、何故、日本は、IT技術を活用して産業構造を改革して、経営を革新して生産性を高めて、成長を志向出来ないのか、野口教授は、2つの理由を挙げた。
   一つは、日本の企業や経済組織において決定権限を持つ人間、大体、年寄りだが、ITを敵と考えており、これが大きな障害となっていること。
   もう一つは、企業なり組織内で情報を囲い込んでしまって、外部とのコネクションを嫌うこと。
   経営者が、日本企業のIT化への抵抗勢力だと、伊藤洋一氏も語っていた。
   また、IT技術に対する障害を取り除いて、フリーアクセスを推進しない限り、ITの有効活用など有り得ないと言うのである。

   日本企業のトップの多くは、若者に情報を握られて負けるのが嫌であり、
   自社の情報データ等が、IT技術の活用によって外部に流出するのに強い恐怖感を持っているので、競争に負けない為に、最低限度のIT化は進めるが、IT技術を武器に使って経営革新をする意思は全くないと言うのである。

   クラウド・コンピューティングの時代である。
   自分で情報を抱え込むより、その管理をプロに任せた方がはるかに安全であると、野口教授は、グーグルのGmailを活用していると言う。
   今日では、外部のシステムを活用すれば、無尽蔵に情報やデータを蓄積出来るので、とにかく、情報データの整理や分類など一切必要はなく、どんどん手当たり次第に溜め込む事で、必要な時に、検索して活用すれば良い。

   尤も、コンピュータの検索の技術が、まだ、未熟なために、人工頭脳的な検索は出来ないので、検索技術を磨くことが大切であると言うことでもある。

   今日、別なセミナーで、マイクロソフトの五十嵐光喜氏が、日米のIT活用の比較で、日本の場合は、殆ど、部門間や企業内部の活用程度に止まっており、グループ企業間や外部とのIT活用など、野口教授が指摘していたように、殆ど、オープンなIT化へは進んでいないと言うことを報告していた。
   ITが、電気のようにジェネラルパーパス・テクノロジーであるならば、完全に外部も内部もなくオープンに、情報なりデータが移動しない限り、或いは、企業の意思決定体制そのものが、企業のトータル・システムとして構築されたIT技術によって実装されない限り、その果実を摘むことは難しいと言うことであろうか。

   野口教授の指摘は、日本が、IT技術さえもフル活用出来ないような製造業に執心している限り、国際競争力の強化など望むべくもなく、その経済社会の発展は望み薄だと言うことであろう。
   こんな状態であるから、オープンソース・マネジメントなど夢の夢、要するに、フラット化した世界において、パラダイムシフトした新しい経済社会体制に適応出来ない日本製造業のガラパゴス化の進展は、避け得ないと言うことである。

(追記) 本件は、EMC Forum 2008における野口教授の講演による。
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