熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

台頭するブラジル(仮題 BRAZIL ON THE RISE)(16) 燃えるエネルギー その1

2011年09月30日 | BRIC’sの大国:ブラジル
   「神は、ブラジル人だ。」自分たちの国土を顧みて、恵み豊かな膨大な自然資源に感激して、ブラジル人が、好んで、口にするのは、この言葉だと言う。神がブラジル人でなければ、こんなに、大盤振る舞いをしてくれる筈がないと言うことであろうか。
   この無尽蔵のエネルギー資源にバックアップされて、ルーラ前大統領は、21世紀には、「ブラジルは、世界第5のワールド・パワー」だと豪語した。米国、EU,中国、インドで、日本など、更々、眼中にはない。
   いずれにしろ、石油に泣いたブラジルが、2006年には、エネルギー自給自足経済を達成したのである。
   

   今や、ブラジルは、巨大な海底油田の開発後は、エネルギー資源の輸出国に変貌しているが、それも、これも、すべて、きっかけは、1970年代の石油危機に始まる。
   私は、1970年代の後半、ブラジルに居たので、ブラジルの奇跡を謳歌して爆発的なブラジル・ブームを展開していた経済が、石油危機のために一挙にダウンした惨めな姿を知っているので、正に、今昔の感である。

   石油価格の高騰に大打撃を受けたブラジルは、幸いにも、広大な国土に栽培していたサトウキビを転用してエタノールを開発し、アマゾン川など世界最大の水資源を誇る3大巨大河川を活用して、水力発電に注力して、エネルギー不足に対処した。
   最も安くていくらでも増産できる再生エネルギーであるエタノールは、恰好のガソリン代替で、1990年代初めに、ブラジルを訪れた時には、アルコール車のタクシーが走っていて乗ってみたが、変った感じはなかった。
   石油、エタノール、水力発電のみならず、太陽光、風力など再生エネルギーを生み出すための余力は、世界屈指の豊かさで、ブラジルのエネルギー資源は、すべては、開発次第ということである。

   1953年に創設された国営石油会社ペトロブラスは、イラクやリビアに石油資源を求めたが、1980年代に、リオ沖のCampos Basinに巨大な油田を発見して以降は、国内油田の掘削生産に力を入れ、独自開発で得た海底油田開発技術を磨き上げ、TUPIでの深海油田開発に活用するなど、5~7000メートルと言う深海の膨大な埋蔵量を誇るプレサル油田への期待が高まっている。
   今後のブラジルのエネルギー開発については、経済的な歪みを引き起こさず、環境を破壊せずに、如何にして、この豊かな資源開発を管理運営して行くかであろうが、特に、2010年メキシコ湾原油流出事故(Deepwater Horizon oil spill)のような壊滅的な事故を起こさないためにも、プレサル開発の帰趨が注目されている。
   ローターは、一部の政治家が、水力やエタノール開発に走った時期に、環境や社会インフラなどを軽視した様に、かっての中東やヴェネズエラやインドネシアに似た、このタナボタ式のエネルギー資源景気に浮かれている傾向を危惧して、この膨大なエネルギー資源の開発には、ブラジルには欠けている厳格な規律と長期的ビジョンが、必須だと強調している。

   ところで、ブラジルは、石油やガス開発で、発見や開発が遅れたために、ラテンアメリカの資源大国メキシコやヴェネズエラから、大きく遅れを取っている。
   これまで、20年間、メキシコやヴェネズエラは、膨大な資源を開発して巨額の外貨を稼いで来たのだが、これが、ブラジルのエネルギー世界大国への成長と発展を妨げるのではないかと考えられてきた。
   しかし、これらの国々の資源の枯渇が始まっており、今後のエネルギー資源価格の高騰を考えれば、プレサル深海油田の開発が進めば、この10年くらいの間に、世界でもトップ5の石油産出国となるブラジルにとっては、むしろ、後発としての残り福を享受できるのではないかと言うことである。
   既に、ヴェネズエラの背中が見えており、凌駕するのは時間の問題だと言う。

   ガスについては、国産では不足なので、ボリビアの合弁現地法人から、大変な長距離のパイプラインで輸入しているのだが、2006年、エボ・モラレスボリビア大統領がボリビア国内の石油の国有化を発表し、ボリビア陸軍に油田の接収を命じてから、ボリビアとトラブルが発生して、不安定要因が出て来たので、ペトロブラスも拡大投資を控えている。
   そのために、ブラジルは、TUPIなどのサブ・サル鉱床の開発など、国内開発に力を入れていると言う。
   
   エタノール開発や環境問題などについては、次の回に譲ることとする。
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