熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ジム・ロジャース:今こそ日本買いの好機だと言う

2011年11月26日 | 経営・ビジネス
   何回かチャンスがあったのだが、初めて、ジム・ロジャースの講演を聞いた。
   「世界経済と私の戦略」と言う演題だが、中長期的な中国の将来性やコモディティ投資の有望性など、殆ど基本的な投資戦略については、これまでの理論展開とは変っていなかったが、今回は、特に日本株や日本円への投資の有望性について強調して居たのが印象的であった。
   騒がれている新興国については、現在の中国の直面する経済的な苦境についても、短期的には比較的悲観的な見方をしており、インドについては、観光は良いが投資はダメで空売りしたし、自分の冒険旅行本を読んでくれと言った調子で有望視しておらず、現下では、経済不況が当分続きそうなアメリカやヨーロッパと同じように、投資先としては、ペシミスティックな見方をしており興味深かった。

   私が読んだジム・ロジャースの著書は、2冊の自動車とバイクの世界発見冒険旅行本と、「中国の時代」と「商品の時代」で、娘のために書いた2冊は読んでいないが、ギネスブックにも載ったと言う116ヵ国を踏破した政治経済社会視察の冒険旅行は、大したものだと思っている。
   エール大とオックスフォード大(修士)で学んだ俊英で、ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンドを設立して投資業界で一世を風靡したジム・ロジャースが、第一線を引いた後、自分の脚で、苦労惨憺を重ねて世界中を回って、実地に政治経済社会の現状を視察したと言うのだから、その上での、世界経済論であるから、一寸毛色が変っているが深みがあり、それに、非常に重みがある。
   面白かったのは、フィアンセと旅を初めて途中で結婚し、その後、新世紀初めに、娘を授かり、時間の無駄だと拒否していた子供がこれほど大切なものかを悟って、100%自分の考え方が間違っていたと懺悔して、二人の小さな娘とのべたべたのシンガポール生活を目を細めて語っていたことである。
   「I'M The DADDY」と白く染め抜いた黒いTシャツを着て、愛娘と写した2ショットを、誇らしそうに披露していた。

   アジアが投資先として有望なのは、須らく、中国の将来性に大きく期待しているからで、カナダが経済的に成長したのはアメリカに隣接していたからだと言う例を引いて、いわば、昔、日本経済の驀進で東南アジア経済が発展を続けた時の雁行理論のようなことを語っていた。
   投資先としては、ミャンマーについては、ワクワクする程刺激的だが、アメリカ人だから国交断絶で投資できないが残念だと言い、スリランカも、魅力的だと言う。
   要するに、これまで、政治的な問題や戦争などで危機的な状態にあって沈滞していた国が、平和になったり政治的に安定してくると動き出すので、経済発展が大いに見込めると言うことである。

   日本経済については、今後の成長見込みや将来性については、一切語らなかったが、長らくの低迷で、28年前の株価に下がった割安の日本株は買いの好機だと言う見方を示し、また、アメリカやヨーロッパ経済圏が経済不況で混乱するなか、円は逃避先として資金流入が見込まれるので、当分、円高基調が継続すると言う。
   損をした円が、日本に還流してくるが、この資金は、投資には回らず、商品や株式に向かう。
   ただし、株なども安いからと言って買うのではなく、中国の場合にも言えるのだが、まだ、もっと下がる可能性もあるので、どこまで下がるのか、見極めが大切だと言う。
   日本株については、津波の後、買い増したと言いながら、少子化の将来を見越してか娘のためなのか、タカラトミーやサンリオ株も買っていると言う。
   面白いのは、中国株は、買っていないが、持ち株を売らずにホールドしているのは、娘や孫のためだと言っており、短期悲観、長期楽観の中国観が面白い。

   今回、興味深かったのは、アメリカ経済に対するかなりの悲観的な見方で、アメリカは、世界最悪の債務超過国であり、B/Sが最悪で、実態は、EUのどこの国よりも悪いと言う見解である。
   アメリカを見限って、ニューヨークの家を売り払って、中国の将来を見込んで、中国語が幅を利かせる治安や環境に心配のないシンガポールに移り住んでしまったのであるから、当然であろうが、バフェットなどと考え方が違っていて興味深い。

   投資先としては、まず、農業が最も有望で、次は、貴金属で、次は、日本のETFだと言う。
   投資判断は、何を基本に考えているのかと言うことだが、指標については、バランス・シートについては、かなり、チェック検討しているようだが、他のPERやPBRと言った投資指標などは参考程度で殆ど考慮していない感じで、もっと、根本的な経済状況や経営状況など基本的な歴史上のファンダメンタルを考えているようである。
   特に、そのような見方が顕著なのは、コモディティ投資への姿勢で、長期的には、天然資源不足、食糧不足のトレンドであるから、将来的にはブル相場が期待できるのだが、長期的な価格低下傾向が継続し、その業界での生産設備等の投資が長く滞っているようなコモディティについては、価格が低迷している割安の時に、投資を仕掛けているようである。
   本人は、船が傾いたら反対の方へ行くと言っていたが、世界や世の中の趨勢とは、全く違った逆の方向を目指すことで、特に、長期的なベア相場が続いて、世界全体が沈滞ムードに沈潜している時こそ買い時だと言うことであろうか。

   今、1970年代の状況に良く似た状況にあると言う。
   日本が、特にそうだと言うのだが、もう一度、ゆっくり振り返ってみようと思っている。
   いずれにしろ、10年で60%の円高でも、びくともせずに、いまだに貿易の黒字基調を続ける日本であるから、円高など乗り越えるであろうし、このまま、殆どの有望企業の株価が、帳簿価値よりもはるかに低い価格で推移して行く筈がなく、将来、必ず、ブル相場が復活してくると言うのが、ジム・ロジャーズの日本経済論であろうか。
   円も、日本株も買い時だと言うのだが、まだ、下がって行くような気がしている。
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