平地治美の漢方ブログ 

漢方(漢方・薬膳・鍼灸...)全般についてのブログです。コメント大歓迎。

夏樹静子さんの断食体験「腰痛放浪記 椅子がこわい」

2014年02月04日 | 養生
腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


作家・夏樹静子さんご自身の、心身症による腰痛の闘病記です。
不謹慎かもしれませんが、とにかく面白かったです。

ある時腰に違和感を覚える程度の感覚から始まり、次第に悪化してついには椅子に座っていられないほどの劇痛が襲い始めます。その痛みの描写はさすが作家だけに臨場感たっぷりで鬼気迫るものがあります。

「……やむを得ず外出する時には、財布のコインをすべて除く。その財布もやめる。バッグに紙幣をむき出しに入れる。1グラムでも軽くしたいのである…..」

著者はありとあらゆる治療法を試し、しまいには霊の供養までするその治療遍歴を「ワンダリング」と名付けています。

3年にわたるワンダリングの果てにたどり着いた腰痛の原因は、作家・夏樹静子としての重圧に耐えきれなくなった潜在意識が引き起こした「疾病逃避」。
典型的な心身症という診断でした。

しかし、明るく行動的で書くことが好きな著者は、そのことを認めることがなかなかできません。

 そこで、凝り固まった頭を柔軟にし、他人の話に素直に耳を傾けさせるために主治医がとった療法が「絶食療法」、つまり断食でした。その時に主治医がスタッフに行ったミーティングの資料がとても興味深いです(以下、本文より抜粋、要略)


(絶食療法の歴史と意義)
もともと宗教的背景を持つ修行としての断食が医学的にも用いられるようになり、昭和二十四年以来、東北大学産婦人科が治療法に取り上げ、東北大学方式絶食療法として定着した。

(奏功のメカニズム)
食が絶たれることによりエネルギー源が糖質から脂質に転換し、急激な代謝経路の変化が引き起こされる。その結果、脳組織の代謝エネルギーも糖質からケトン体に転換せざるをえなくなり脳波はα波の増加、徐波化などの変化を生じる。
このような身体変化と平行して依存性、被暗示性が高まると経験的に言われている微妙な意識の変容状態が生じ、これまで病態になかば固着され、融通性を欠いていた意識は、微妙に柔軟性のある視点を抱くことが可能となのである(参考文献 鈴木仁一「心身症の最近の治療方法」〈心身医学〉日本心身医学会・1987年VOL.27No2)。


「頑固者には絶食を、ですか」
12日間の絶食を終えた著者の意識は変革し、次第に主治医の言うことを受け入れていきます。
そして作家・夏樹静子の葬式を出し主婦・出光静子として生きるという段階にまでなりました。

結局葬式ではなく「作家・夏樹静子の1年間の入院」、つまり1年間の全面休筆をし、その1年で
主婦・出光静子は五回の海外旅行と数回の国内旅行をし、完全な健康を取り戻します。

一時は自殺を考えるほど酷い痛みは、生き方・考え方を変えるための天からの
ギフトだった、そう考えられた時から指一本触れずに痛みは消えていったそうです。

著者がこの経験から得た学び、世間に与えた反響は予想を遥かに超えるものだったようです。
人間観察の鋭さや深みは増し、作家としても大きな飛躍をとげました。

病んでいた時に治った人の体験談が心の支えになったことから、闘病に関する講演は積極的に
引き受け、手紙への返信は必ずなさったそうです。


この作品には、病むことによる「気付き」という言葉が随所に出てきます。

病んだ原因をあるがままに受け入れ、生き方を変えた時が必要でなくなった
症状との別れの時なのです。


にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ漢方ブログランキングに参加しています。 
 ↑ このマークを1日1クリックをお願いします
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 断食と不妊症 | トップ | 内晴明 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

養生」カテゴリの最新記事