ナオミ・クライン:「環境債務」気候変動について先進国が途上国に補償をするべき理由(1)

2009-12-15 18:19:57 | 世界
◎シアトルからコペンハーゲン気候変動サミットへ、公正を求める闘い
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1999年にWTO(世界貿易機構)閣僚会議の成立を阻んだシアトルの闘いから
10年が経ちました。12月7日から18日までコペンハーゲンで開かれる国連気
候変動枠組み条約第15回締約国会議にむけて、公正を求める声が会議の内外
で高まっているとナオミ・クラインは指摘します。歴史的責任に基づいて、先
進国に大幅な炭素排出削減と途上国への支援資金拠出という2つの義務を果た
すよう要求するものです。1990年比25%削減という日本の目標は不十分な上、
事業仕分けで温暖化対策予算が削られています。クラインはまた自著『ブラン
ドなんかいらない』出版10周年に重ね合わせて、オバマという世界最高のブ
ランドについても話します。[翻訳:荒井雅子/TUP]
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※凡例: [訳注]、邦訳のない書籍及び記事タイトルは[仮邦題]
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ナオミ・クライン:「環境債務」
――気候変動について先進国が途上国に補償をするべき理由
2009年11月23日(月)
デモクラシーナウ!


エイミー・グッドマン: では、ベストセラー『The Shock Doctrine: The Rise
of Disaster Capitalism [ショックドクトリン――勢力を伸ばす破局資本主義]』
の著者にお話を聞きます。フリージャーナリストのナオミ・クラインが、カナ
ダのトロントから、最近の経済を襲った激震、二週間後に迫ったコペンハーゲ
ン気候サミット、環境的公正を求めて結集する一つの世界的な運動について語
ります。クラインは、国境を越えてベストセラーになった第一作『ブランドな
んかいらない』[松島聖子訳、大月書店、2009年]出版10周年を迎えたところ
です。最新の記事には『ローリングストーン』誌掲載「Climate Rage [猛威を
ふるう環境問題]」、『ネーション』誌掲載「Copenhagen, Seattle Grows Up [コ
ペンハーゲン――シアトルからの発展]」があります。ナオミ・クライン、デモ
クラシーナウ!へようこそ。最初は気候変動の問題、あなたの言葉を借りれば
「猛威をふるう環境問題」から。今何が起きているのでしょう。


ナオミ・クライン: 『ローリングストーン』誌に書いた記事は、環境債務の
支払いを求める要求が高まっていることを見たものです。これは気候変動をめ
ぐる比較的新しい捉え方で、ボリビアなど南アメリカ諸国政府の主導で途上国
では主流になりつつあり、主にアフリカにある最貧国の一団も加わってきてい
ます。基本的にはその主張は、私たちの経験している気候変動が先進工業国に
よって生み出されたものだということです。工業化(私たちが発展と呼ぶもの)
と炭素排出の間には直接の相関があります。実際、現在までの炭素排出の75%
は、世界の人口のわずか20%が引き起こしてきたものです。ところが残酷な地
理的皮肉があって、気候変動の影響は圧倒的に途上国、つまり世界で最もこの
危機に責任のない場所が受けています。世界銀行によれば、気候変動の影響の
75~80%は途上国が被っています。原因と影響の関係が反対になっているわけ
です。


こうした状況があって、まさに気候変動の最前線に置かれた途上国から、気候
変動を引き起こした金持ち国は途上国に借りがある、この危機を招いたことに
ついて具体的な補償の義務を負っていると主張する運動が広がっています。こ
うした補償は3つの形で払われるべきです。第一に先進国、金持ち国での大幅
な排出削減。1990年の水準に比べて少なくとも40%の削減――これは何度も
言われてきた数字です。これに加えて、富裕国、G8諸国、工業国は、貧困国
が気候変動に対応する上で直面するコスト、莫大なコストを払うこと。さらに
途上国は、環境危機に拍車をかける汚いエネルギー、化石燃料を避けて一足飛
びにクリーンエネルギーに移りたいとも主張しています。でもこれには金がか
かる、よりクリーンな環境にやさしい技術に移行するのは、金持ち国がやって
きたように安上がりの汚い燃料を開発するよりも高くつくと彼らは指摘してい
ます。ですから、彼らはこういっているわけです。私たちは変わるつもりだ、
でも直面している問題のために余計なコストを負担しなければならないのはお
かしい、問題を引き起こしたのは私たちではないからだ。基本的に環境債務の
議論は「汚した者が金を出す」という論理です。米国の人間にはなじみ深い、
法の基本原則です。別の言い方をすれば、「物を壊したら弁償する」


グッドマン: こうした懸念の声を上げ、自分たちが負担するのはおかしいと
主張している国について聞かせてください。たとえばアフリカで。


クライン: そうですね。アフリカ諸国の連合組織であるアフリカ連合の立場
はとても明確です。コペンハーゲンに求めることは何よりも、大幅な排出削減
と気候変動対策のための本格的な資金提供です。アフリカ東部ではまさに今、
大規模な、深刻な干ばつが何百万人もの人たちを襲っています。これは気候変
動がすでにどのような犠牲をもたらしているかを示す一例にすぎません。です
から議論はもしこうなったらというような将来の話ではなく、今現在の話なの
です。


お話しした通り、主たる原動力は現在はボリビアから来ています。ボリビアに
は非常に優れた環境問題担当者がいます。『ローリングストーン』誌に引用した
アンヘリカ・ナバロという人で、私はジュネーブで初めて会いました。アンヘ
リカは現在、ボリビアのWTO(世界貿易機構)大使です。とても明晰で、と
てもタフで、数ヶ国語を話します。WTOでも現在の環境交渉でも、ボリビア
のような小国が直面する圧力に立ち向かうには大変な強さが要ります。アンヘ
リカ・ナバロは本当にその仕事を担える人で、コペンハーゲンに向けた準備サ
ミットで本当に力を与えるスピーチをしてきています。他の途上国にとって本
当に行動を起こす力を与える存在です。


でもそれだけでなく、アンヘリカは、サードワールドネットワークやフォーカ
スオングローバルサウス、ジュビリーサウスといった団体、NGOや環境的公
正を求める団体の連合から寄せられた要求を取り入れています。こうした団体
はサミットの外でこういう要求を行ってきました。でも、今おもしろいことは、
こうした要求がサミットの内部に入り、交渉のテーブルに乗っているというこ
とです。もちろん言うまでもなく、米国やEU、カナダ、オーストラリアには、
自分たちがただ善意や慈善からではなく法的な義務として、途上国の気候変動
対策資金を出すべきだという考え方に対して、猛烈な抵抗があります。想像が
つくと思いますが、これはぞっとする考え方です。


グッドマン: ナオミ・クライン…


クライン: 環境債務の主張の根拠はとても確かなものです、蛇足ですが。


グッドマン: 先週、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、コペンハーゲ
ンサミットが失敗に終わるだろうという、広く広がっている見方を否定しまし
た。


潘基文(パン・ギムン): 最新の報道を読むと、コペンハーゲンは失望に終わ
る運命だとお考えになるかもしれません。それは間違いです。反対に、コペン
ハーゲンでできる限り速やかに拘束力のある協定に向けた一歩を踏み出す合意
に到達すことができる、到達するだろうと、私は確信しています。


グッドマン: 潘基文(パン・ギムン)事務総長の言葉をどう考えますか。


クライン: そうですね、問題は、コペンハーゲンでの成功の定義が緩められ
続きてきたことです。数カ月前、コペンハーゲンでの成功とは、各国が、気候
学者の求める水準までの排出削減に合意することでした。科学的には、1990
年の水準より40%の削減がどうしても必要だということが明確です。成功のも
う一つの定義として、金持ち国が途上国に対してやはり現在の必要に見合うレ
ベルの資金を用意してテーブルにつく、というのもありました。これがどのよ
うな数字かはわかっています。たとえば世界銀行によれば、途上国が干ばつや
数を増した洪水に対処するなどただ気候変動に対応するためだけで、直面する
コストは年1000億ドルと推計されています。先ほどお話ししたように、汚い
エネルギーを避けて一足飛びにクリーンエネルギーに移行するコストは、年
5000億から6000億ドル。これは独立した国連の研究者が出した数字です。で
も今、国連から聞こえてくるのは、コペンハーゲンで先進国、金持ち国から年
100億ドル拠出の合意をとりつけられる望みがあるというものです。


ですから、人々は振り返って成功だというでしょうが、それは成功ではありま
せん。ただ成功の定義がどんどん緩められているのです。これは本当に厄介な
問題で、多くの環境保護運動家、環境的公正を求める活動家が立ち向かわなけ
ればならない問題になります。なぜなら、気候変動のような問題では、緊急性
が物を言う、この危機に直面して緊急性の意識を保つことが本当に物を言うか
らです。ですから、コペンハーゲンで問題への何らかの取り組みがなされると
いう幻想が生まれることには危険が、本当の危険があります。オバマを出向か
せてまたお得意の素晴らしいスピーチをさせたとしても、それで米国が2005
年の水準に比べて今の話で14~20パーセントの削減――ばかげた数字ですが
――を口にする画期的な一歩になると表明したところで、科学とは何の関係も
ありません。そして年100億ドルというこの数字。ここでもこの数字と、世界
銀行から聞こえてくる最低1000億ドルという数字との間には、あまりに巨大
なギャップがあります。


ですから、成功と呼ばれるものについて大いに注意しておく必要があります。
振り返って、「米国に2005年と比べて14%の削減を約束させたのは成功だ」
と言い、歴史的に責任があると口では認めつつただ善意から年に数10億ドル
を投げ与えるとすれば、この危機に立ち向かう上で決定的に重要な緊急性の一
部が失われることになります。環境的公正を求める運動にとって非常に重要な
ことは、政治家が失敗を成功と言いくるめるのを許さないことです。


グッドマン: ナオミ・クライン、オバマ大統領の出席の問題ですが、オバマ
は、北欧に行く、ノーベル賞を受賞しにオスロに行きます。コペンハーゲンに
もつい最近行きました。シカゴへのオリンピック招致のために行ったわけです。
でも65カ国の首脳が出席を表明しているのに、オバマはまだ行くとは言って
いません。三大炭素排出国である米国、中国、インドはまだサミット出席を表
明していません。どうお考えですか。


クライン: そうですね、ジョン・ケリーが公にオバマに出席を求めています
ね、こうなるとオバマは出席するのではないかと私は思っています。すでに出
席の方向でかなり固まっているのでなければ、ケリーはこのような発言をしな
いと思います。この成功の定義を緩めるというプロセス全体、つまり基本的に
失敗が成功としてまかり通るようにすることは、大部分は、オバマが出席して
失敗を成功と表明できる環境を整えているのだと思います。ですから、率直に
言ってオバマは出席すると思いますが、私たちはそれを成功の定義と認めるべ
きではないと思います。


グッドマン: もちろん私たちもコペンハーゲンに行きます。「デモクラシーナ
ウ!」も大挙して乗り込み、2週間にわたって何が起きているかをお伝えして
いきます。サミットで何が起きているか、街頭で何が起きているかをお伝えし
ます。さて、「シアトルの闘い」、ワシントン州シアトルでの抗議から10周年
を迎えています。私は何日かシアトルに行くつもりですが、シアトルの闘いが
何を意味したのかについてはいろいろな話がありますね。でも中断をはさんで
シアトル以後10年の話に移る前に、まずコペンハーゲンの街頭でどういった
行動の計画があるか聞かせてください。


クライン: そうですね、私が『ネーション』誌に書いた最新コラムは、シア
トルからコペンハーゲンまでたどれる道筋についてです。コラムを「シアトル
からの発展」と題した理由は、今見ているものが、シアトルの街頭で世界の注
目を引きつけた一つの運動の一つの発展でもあると考えているからです。主に
貧困、開発、債務に焦点を当ててきた団体と、従来環境問題に焦点を当ててき
た環境団体の間の連携が、真に深まってきたと考えています。シアトルでは、
あの有名な「チームスターと亀」連合[労働運動と環境保護運動の連帯]で、こ
の連携の始まりを目にしました。今私たちが見ているのは、ずっと深いもので
す。


この環境債務という考え方こそ、今お話ししたように、ジュビリーサウスやア
クションエイドなど貧困撲滅と発展に主に取り組んできた団体をも結集したも
ので、彼らは今では気候変動を世界中で人類の発展を阻むこれこそ最大の障害
とみなしています。彼らはまた環境補償の要求を、一つの機会とみなしていま
す。先ほどお話ししたボリビアの気候サミット大使アンヘリカ・ナバロが先進
国の環境債務支払い義務の必要について話したときの言葉を借りれば、もしこ
れが行われれば、地球にとってのマーシャルプランになる、と言っています。
とてもわくわくする展望です。なぜなら、人類にとって最も根深い難問、根深
い課題のうちの二つ、つまり、一つは環境債務、もう一つは不平等の問題に同
時に取り組む機会をもつことになるからです。こうした二つの力を結集するこ
と。コペンハーゲンで本当に期待が高まるのはこのことです。多くの人たち、
シアトルから発展した多くのネットワークがコペンハーゲンで活発に動くはず
です。ネットワークはここ数年、強固になる一方です。


グッドマン: 中断をはさんで、シアトルの抗議の闘いから10年後を全体的
にみていきます。また著書『ブランドなんかいらない』の出版からも10周年
ですね、「世界のブランド化」についてもお話ししたいと思います。「デモクラ
シーナウ!」Democracynow.org、戦争と平和リポート、エイミー・グッドマ
ンです。オレゴン州メドフォードから放送中、間もなくシアトルに到着します。
続きもお聴きください。


(音楽による中断)


グッドマン: 『Breaking the Sound Barrier [音の壁を取り払って]』[2009
年10月出版のグッドマンの著書]キャンペーンでオレゴン州メドフォードに来
ています。南オレゴンパブリックテレビ(SOPTV)から放送中。SOPTVの最
初の全国放送で、非常にわくわくしています。


エイミー・グッドマンです。ゲストはナオミ・クライン。著書に『ショックド
クトリン』、『ブランドなんかいらない』があります。『ブランドなんかいらない』
は出版から間もなく10年を迎え、10周年記念版が出版されます。


シアトルの具体的な話に移る前に、気候サミットの行われるコペンハーゲンの
街頭でどういった行動が計画されているのですか。


クライン: そうですね、コペンハーゲンはいろいろなことが複雑に関わり合
うものになります。1992年のリオ地球サミットより大きな、史上最大の環境問
題会議です。街中でいろいろなことが起こるでしょう。


でも、シアトルとまったく違うと思うのはこういうところです。シアトルでは
WTOは街頭の活動家にとって不倶戴天の敵で、活動の目的は内外から会議を
閉会に追い込むことでした。街頭活動家たちは一つのメッセージ、「WTOなん
かいらない」というメッセージで注目すべき連帯を作っていました。そして会
議の中では、街頭での抗議に意を強くした途上国が連携して、EUと米国から
の圧力に敢然と立ち向かいました。そして最終的には、会議を決裂させたのは
こうしたいわば「締め付け」でした。


コペンハーゲンでは違った動きになります。街頭で活動する人たちは圧倒的に
コペンハーゲン会議の使命を支持しているからです。気候サミットというもの
を否定するのではなく、むしろ支持し、実は世界のリーダーたち、とくに米国
やカナダといった炭素大量排出国の首脳の方こそ、何にでも反対し「いやだ、
環境危機になど取り組みたくない、科学が求める必要な排出削減もしたくない」
と言っているのだということを明らかにし、浮き彫りにしています。


ですからある意味で、「サミットの使命を信じている」と言っているのは活動家
の方だという逆転現象が起きています。政治家は「イエス」と言っていると口
では言いながら、そして失敗を「成功」として売り込みながら、実は「ノー」
と言っている、ということをはっきりさせる必要があります。


こういうサミットとどう渡り合うかを考えるのは、活動家にとって一筋縄では
いきません。たとえば12月18日[16日]、活動家が、非暴力で市民的不服従に
訴えて、会議場におしかける予定になっている日があります。でもその目的は、
会議の閉鎖ではなく、会議を開催して、化石燃料――特にアルバータタールサ
ンドのような汚い化石燃料――を地中にとどめておくといった、気候問題の真
の解決を論じる議論の場を会議の中で開くことだと言っています。先ほどから
お話ししている環境債務のような解決策を議論し、市場が環境危機を解決でき
るというような話の欺瞞を暴くことです。


というのはもちろんコペンハーゲンでは、市場原理に基づいた解決策をたくさ
ん耳にすることになるからです。キャップアンドトレード、排出権取引、炭素
吸収源、基本的には環境破壊に巣食って巨大市場を生み出すことです。ゴール
ドマンサックスなど、世界経済を危機に陥れたのと同じ登場人物が、今度は炭
素で投機バブルを発生させられるという考えに舌なめずりして集まってくるか
もしれません。


これが今回の動きです。「ノー」と言わない。「会議を閉鎖せよ」と言わずに「会
議のテーブルについて真の解決を議論しよう」と言う。もう一つ別の例をお話
しすると、実はコペンハーゲンでも閉鎖を試みるものはあるのですが、それは
港――コペンハーゲン港――の一日閉鎖で、方程式の企業側の側面、船舶輸送
とそれがどれほど大量の炭素を排出するかに焦点を当てます。活動家自身が使
命を信じている会議を閉鎖するのではなく、産業自体を追跡する。こういう行
動がたくさん行われます。どうすれば本当に運動の目的と合致する行動を組織
できるか、思索と議論が重ねられています。
 (ナオミ・クライン:「環境債務」気候変動について先進国が途上国に補償をするべき理由(2)へ つづく) 


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