関西テレビ「なぜ、公園を離れないのか」/P-navi infoから

2006-01-31 21:59:03 | 社会
昨年、ひとりの知人が自殺した。新宿のビルから飛び降りたのだという。その人は事業に失敗し、野宿の生活になっていた。死後、彼が書いていた文章が届けられた。そこにはドヤでの苦しい生活が綴られていた。ドヤから野宿へ。その生活を続けることもできなくなったとき、彼は死を選び取ったのだろう。とにかく、ずっと悔いが残り続けている。なぜ、何もできなかったのか、と。こういう死を防ぐことはできないのだろうか、と。

大阪の公園から運び出されていく人々をニュースで見ていたら、涙がこみ上げてきて、また、この悔いが沸き上がってきている。

30日、午後6時の関西テレビ「FNNスーパーニュース ほっとカンサイ」で放映された「なぜ、公園を離れないのか」という特集をここに紹介してみたい。

「冬は寒いでしょう?段ボールのなかにばっかり寝ていて、どうします?」

(靫(うつぼ)公園の住民だったヤマさんによる)

FNN「ほっとカンサイ」での「ホームレス2006冬:テント生活の現実」より
アナウンサー:「……大阪市は今日、公園のテントの強制撤去に踏み切りましたが、追い出された人たちはまた新たな寝床を探すことになります」

アナウンサー(以下、「ア」):「そもそも彼らはなぜ公園に住みついたのでしょうか?そして、なぜ公園を離れたくないのでしょうか?」

(カメラ:大阪市靫公園のなかの様子。背景に高層ビルが覗いている。噴水やその周りを散歩する人々)

ナレーション(以下、「ナレ」):「都心のオアシスとして古くから親しまれてきたうつぼ公園。こんなオフィス街の公園にホームレスのテントが建ち始めたのは7年ほどまえのことでした。」

(噴水からカメラはその脇のほうの木の下に並ぶブルーシートのテントにパンする。木の枝の間に渡してある洗濯ヒモに干されている軍手)

ナレ:「最近まで22人が暮らしてきました。」

(公園のベンチにはくつろぐ人々や散歩するスーツ姿のサラリーマン。その後ろにブルーシート。ブルーシートのテントの入り口に入っていく一人の男性)

ナレ:「うつぼ公園のテントに6年も住んでいるヤマさんです。」

(男性がカメラ側に振り返る。テロップは「ヤマさん(53)」)

「汚い部屋ですよぉ。ろうそく一個ですぅ。」

(ヤマさんがテントの内部を指さす。コンロや茶碗。天井には段ボールがはりつけられている)


「もううちも金もないしなぁ、食い物もないし。冬は寒いでしょう。それだよナァ…」

(小さなちゃぶ台の前に座って語るヤマさん。一瞬、カメラをまっすぐ見据えて話すが、沈黙のところでは下を向く)

「段ボールの中ばっかりで寝とっても…寝とっても、どうします?……なぁ」

(噴水の上に舞い落ちる雪。樹木ごしに遠目に見るヤマさんのテント。白い犬がヤマさんにじゃれついている)

ナレ:「熊本から出稼ぎに来たヤマさんは建設現場を転々としていましたが、足に大けがをして以来、現場に立つのが怖くなりました。手持ちの金もなくなり、気が付けばホームレス状態に陥っていました」

(犬を連れて、公園内を散歩しているヤマさん。缶のなかのたき火。火の回りに公園生活者が集っている)

ナレ:「うつぼ公園で暮らす人たちの事情は様々です。借金を背負った人、勤め先が倒産した人。みんな初めは毛布と段ボールだけの路上生活でした。やっと手に入れたテントを手放したくないという気持ちが強いのです」

(カメラは公園から街中に移動。)

ナレ:「西成区釜が崎。早朝、その日の労働力が買われていきます。この国を底辺で支えている労働者たち。ひとたび病気や怪我をすれば、とたんに仕事にありつけなくなります」

(「現金、9000円、朝・昼飯付、一般土工」や「ガードマン、7500円、20日」などの札。仲介屋が人を集めている。白いバンに乗っていく日雇い労働者)

(作業着を着た男性がカップ酒を片手に語る。「日雇いで働く男性」というテロップ)


「ほら、景気が良くなったっていう話はあるけど、ここらは人生捨てた連中ばっかしやから──ワシもそうやで──…あのぅ、やっぱここまでは回らん。それは現実」


(カメラは黒い寝袋を両手に3個ずつ提げて歩いている男性の下半身を映す。全身が映し出され、アーケードのなかだとわかる)

ナレ:「路上生活者に寝袋を配る活動を続けている石黒よしひこさん。カンパを集め、1個1000円の寝袋を配って歩いています」

(アーケードのなかの段ボールの囲いのところで立ち止まる石黒さん。覗き込んでまた歩き出す。次の段ボールの囲いでなかの人に声をかける)

「寝袋はないの?つこうてください」

(寝袋を渡す石黒さん。「あ、これはどうも」「使い方、わかります?」「あ、はいはい」「こんなか入って。足、入れて」というような会話が交わされる)

ナレ:「商店街の軒下に並んで眠る野宿者たち。路上で野宿する人は公園でテントを張って暮らす人の3倍はいると見られています」

(野宿者に声をかけている人々。石黒さんがいきなり靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ出す。歩き出した先には野宿の男性が裸足で立っている)

「おっちゃん、これ履き。これ、あったかいねん。裏起毛やから」

(男性が「あっぁ」といような声を出して、靴下を受け取る。薄いズボンと裸足の足のクローズアップ)

「寒いわ、そりぁ。凍傷になるで」

(足をひきずりながら歩く男性に手を添える石黒さん。座った男性の裸足の足に靴下を履かせる。路上に敷かれた段ボールのうえに寝袋を置き、男性がなかに入るのを手伝っている。)

ナレ:「この日の最低気温は1度。この冬、氷点下を記録した日は5回もありました。毎年、大阪で200人前後のホームレスが、寒さや飢え、病気で命を落としています」

(石黒さんの上半身のクローズアップ。涙が頬を伝っている)

「毎日ね、食べれてね、横に家族がおって、それで毎日仕事に行けてね、それがいかにありがたいかって、当たり前やないんやって…。そういったものが失われたときにどれだけ辛い思いになるか…私も家族を病気で2人も亡くしているから、それが切実に感じられてね」

(人通りの少なくなった夜中のアーケード。寝袋で男性が寝ている。カメラは「自立支援センター西成」の看板にパンする)

ナレ:「大阪市がホームレス対策として入居を勧める自立支援センター。3度の食事と8人部屋が与えられ、6ヶ月を期限に就職先を探します」

(センターの建物外観から内部に。二段ベッドがならんでいる。奥に小さな棚。衣装ケース1つ分が1人のスペース。薄いカーテンがついているベッドの内部にも小さな棚がひとつ。センターの廊下。掲示板に張り紙がある)

ナレ:「ここでは常雇いの仕事をみつけるため、日雇いの仕事は禁止。(テロップでも「日雇い仕事禁止」「飲酒禁止」)酒も硬く禁じられていて、酔っぱらって帰ることも許されません」

(センターの食事風景。おかずが見えている。ごはんのほか吸い物、菜っぱのおひたし(or炒め)、焼いたサバ5~6センチ分位、きんぴらごぼう、ミックスベジタブル、揚げ5センチ、人参の何か(なます?)、桜漬けがひとつのプレートに乗っている。)

ナレ:「就職率42%と一定の役目は果たしていますが、これだけでは救えない人が多いのです(「就職率42.86%」のテロップ)」

(大阪の街なか。夜、アルミ缶を集めているうつぼ公園住民のヤマさん)

ナレ:「ヤマさんは現金を得るために週2回、空き缶を集めて回ります」

(より分けて集めた缶を自転車の荷台に載せてヤマさんが走っている。さらに捨てられている缶を集めているヤマさん。夜の街を缶を持って自転車で走るヤマさん。高速道路やきれいなビルからは光があふれている)

ナレ:「自立支援センターに入っても先の希望が見いだせません。公園のテントを手放したら、またつらい路上生活が待っています」

(缶をより分けて集積していくヤマさん。明け方、また自転車で走っている)

ナレ:「別れた二人の子どもにももう会えないだろうと思っています」

(朝の街中に立っているヤマさん。後ろに梅田の高層ビルが見えている)

「もう親んとこに戻ろうとは思わないですよ。もう親はいないですからねぇ…。兄貴がおるだけで。こういう形ぃ、見せたくないから。もう…犬が嫁御と思ってますから(にこっと笑う)。今日、帰ったらメリーがうるさいですからねぇ。「どこ行っとったー?」て吠えますからね。(フフと笑う)」

(リヤカーを後ろにとりつけた自転車を押して歩くヤマさん。リサイクル業者の作業場。リヤカーに満載されている缶を入れた巨大な袋が機械で引き上げられる。)

ナレ:「一晩がかりで集めたアルミ缶、38キロ。4900円になりました」

(お金を受け取っているヤマさん。「じゃ、すいません」と業者に声をかける。「ありがとう」の返事を後に歩き出す。公園の我が家に帰り着く。木の間に見える青テント。犬のメリーがしっぽを振り、飛び跳ねている。「メリー」と言って顔を撫でてやるヤマさん。笑顔がこぼれる)

「いろんな人がいましたからなぁ。ハマチとか肉じゃがとか何遍か料理して……もう、ろうそくみたいにみんな消えていきますから。どんなに涙 出たですか ここで…… なんでこんなことになったかなぁと思えば…」

(夜、ヤマさんがカップ酒を片手に語る。最後はうつむいてしまい、言葉がでてこない)

(ヘルメットをかぶった市職員、ガードマン、それに警察と野宿者や支援者が押し合いをしているうつぼ公園)

ナレ:「大阪市は今日、行政代執行に踏み切りました」

(テントを解体していく職員。金網のフェンスごしにそれをみつめているヤマさん。骨組みがはずされていく。ヤマさんは表情がないように見えるが、顔がクローズアップされると、顎の筋肉が小刻みに動いているのがわかる。ヤマさんは唇を噛みしめている。)

ナレ:「6年暮らしたヤマさんのテント、10分足らずで解体されました。公園に住みついたホームレスに世間の厳しい目があることは事実です。ヤマさんはまた新たな寝床を求めて歩き始めました」

(公園内で野宿者や支援者が押し出されそうになっている。その横を歩きだしているヤマさん)

(スタジオ)

ア:「この問題に関して、大阪弁護士会は『寒さの厳しいこの時期に立ち退きを強制するのは人道上きわめて問題である。また、事前に十分な話し合いもなく、期間が限定され、プライバシーも保護されていない住居しか与えられておらず、法律違反だとしています』

(アナウンサーのコメントは割愛。約15分)

─以上─


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追加05.1.31 午前12時

うつぼ公園に野次馬に行っていた人から報告が入った。うつぼに住んでいたオッチャンと見に来ていた近所のおばさんとの会話を横で聞いたという。

おばさん:
「公園を追い出されても、どこか入れてもらえるところがあるんでしょう?」

オッチャン:
「センターとかあるけどな。あそこじゃ、缶集めはできへんのや」

おばさん:
「あぁ、そうなんやねぇ」

このオッチャンがヤマさんかどうかはわからないが、けっこうのんびりとしたいい感じの会話だったという。(追加終わり)



ちょっとゆるりとしているヤマさんの話しぶりのなかで、もっとも熊本弁が感じられたのが、

「ろうそくみたいにみんな消えていきますから。どんなに涙 出たですか ここで」

という箇所で、とつとつと語っているのに突き刺すような重みを持っていた。今夜からヤマさんはどこに行くのだろう?他の無数のヤマさんたちは?
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200601301932.htm
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野宿者追い出し 大阪城公園でも靫公園でも
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200601301317.htm

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http://0000000000.net/p-navi/info/column/200601302155.htm

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