さらば! 共謀罪――心に手錠はかけられない 足立昌勝編/社会評論社

2010-05-30 18:39:54 | 新刊・新譜情報
前田 朗です

足立昌勝編『さらば! 共謀罪――心に手錠はかけられない』(社会評論社、
2010年)

1800円+税

「共謀罪制定はこうしてつぶされた―生きる自由・闘う自由を圧殺する現代の治
安維持法への反撃の軌跡」(オビより)

編者・足立昌勝さんは、1943年東京都生まれ。中央大学卒業後、静岡大学を
経て、関東学院大学法学部教授、著書に『近代刑法の実像』『国家刑罰権力と近
代刑法の原点』『警察監視国家と市民生活』(いずれも白順社)、『Q&A心身
喪失者等処遇法案――精神医療と刑事司法の危機を招く』(現代人文社)、『共謀
罪と治安管理社会』(社会評論社)。

執筆者は、各地で共謀罪つぶしに「みんなで共謀しよう!」とたたかった30人
以上の市民、弁護士、活動家、NGOメンバー、冤罪被告人、労組活動家、国会
議員などです。

       

第1部 共謀罪をつぶさなければならない理由

第2部 このようにしてつぶしてきた共謀罪

第3部 国会見聞記

第4部 共謀罪を取り巻く情勢は変わったか

巻末の治安立法関連資料も充実しています。

私が個人的に注目したのは、足立昌勝さんによる「御用学者批判」です。

例えば法制審議会刑事法特別部会です。まともな議論もせず、当局作成の法案を
しゃんしゃんと手打ち式で通した刑事法学者の実名が書かれています。

委員は、宮澤浩一慶応義塾大学名誉教授、川端博明治大学教授、椎橋隆幸中央大
学教授、芝原邦爾学習院大学教授、中森義彦京都大学教授、西田典之東京大学教
授、山中敬一関西大学教授、安富潔慶応義塾大学教授、

幹事は井田良慶応義塾大学教授、佐伯仁志東京大学教授

足立さんは次のように書いています。

「学者委員の数は実に8名に及び、委員総数の過半数を占めていた。これらの委
員は、採決から明らかなように、すべて修正案に賛成し、弁護士委員提出の修正
案に反対している。/ところで、これらの者たちの体系書を読んでみると、既遂
処罰が原則であり、構成要件に規定されている場合のみ未遂も処罰できるとし、
予備罪処罰はまったくの例外であるという。また、思想そのものの不処罰も認め
ている。これらの考え方を基本とした場合、予備よりもはるか前に行われる共謀
段階での処罰を認めることはありえないことである。しかし、彼らは、共謀罪法
案に賛成し、自らの原則を踏みにじってしまった。/果たしてこれらの者たちを
研究者・学者と認めることができるのであろうか。研究者・学者は、自己の学問
的良心に基づき学説を立て、体系書を書いているはずである。その見解と矛盾す
る場合には、自己の見解を改説しない限り、絶対に賛成することはない。彼ら
は、どのような頭で共謀罪法案を推進しているのであろうか。/彼らのとった行
動は、徹底的に批判されなければならない。彼らの講義を受けている学生達がか
わいそうである。彼らの真実がどこにあるかが分からずに、うそを真実と教えら
れているのである。まずもって、彼らは学生の前で、自己の学説の愚かさを自己
批判すべきである。」(20~21頁)

実は、法制審議会委員の議事録では、発言者名が公表されません。それをいいこ
とに無責任な御用学者たちが、表ではきれいごとの刑法理論を得意げに喋りなが
ら、密室で自分の学説とまったく反する立法に加担するということは、長年続い
てきたことです。いつものことです。

今回、足立さんは実名を公表して、厳しい批判をしています。

足立さんは、さらに、国会参考人として共謀罪推進に一役買った藤本哲也中央大
学教授の「重大な虚偽」「事実を捻じ曲げ」と指摘し、説明責任を求め、「その
説明ができないのであれば、国民の信託を受けた国会で虚偽の発言をしたことに
なり、その責任をどのように取るのであろうか。同じ刑法学会員の一人として、
その動向に注目している」(50頁)としています。

もっとも、反省するような人たちではないと思いますが。





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