イラク駐留米軍の死亡者実数は2万人以上 ヨルダン人研究家/アラビアニュース

2006-11-05 13:03:39 | イラク
イラクの米軍、多国籍軍、イラク人の死者数も一様に、米国国内に影響を及ぼし米国の政策に反映される可能性をはらんでいることに加えて、政治や世論と、イラク駐留米軍の兵士の士気と関わることで広範な議論を巻き起こしてきた。

 このレポートはイラクにおける米国人の死亡者数を主題とし、様々な出所の数字を検証、分析することで現実の死者数に迫ることを目指している。

『米国の公式発表』

 イラク駐留米軍の死者数は2006年9月に過去2年間で最も高い数字を記録した。米国国防総省の統計によれば、11月の米兵の死亡者は70人、負傷者は776人に達している。一方、インターネット・サイト「グローバル・セキュリティー」は同月の負傷者数をおよそ900人と見積もっている。

 米国国防総省発表の声明によれば、これほど負傷者発生率が高かったのは一ヶ月の死者数が140人、負傷者数が1429人に上ったファッルージャ市制圧戦のあった2004年11月以来のことである。

 しかし、10月には突然激しい戦闘の波が到来し、2003年以来駐留している米軍にとってこれまでで最も流血の多かった月となった。米国の公式発表によれば、10月1日から23日までの死者数は86人であり、2006年初めからの累計死者数は620人、2003年に占領が開始されてからの累計は2790人に達した。

 この米国の公式発表の数字は大きなものだが、多くのアラブ人及び非アラブ人のイラク・ウォッチャーやイラク事情研究センター、西洋諸国の諸研究、ニュース・サイトなどによれば、これは現実を反映した数字ではないという。

 ランセットの調査では、2003年に米国による占領が始まって以来のイラクの民間人の死者数が65万5千人であるとしている。この数字は控えめな見積もりの3から5倍で、「イラク・ボディー・カウント」の見積もりの13倍であり、当然のことながら民間人死者数を約3万人とする米国の公式統計よりはるかに多い数字(約23倍)となっている。このことから考えると、イラク駐留米軍の死者数の公式発表が正確でないと考えても不思議ではない。

『アラブ圏外の独立情報』

 イラク駐留米軍の死傷者数を追い、その数字を記事の中で公表し定期的に更新しており、数字が目立つように記されているインターネット・サイト「TBRニュース」は、10月23日付の「民衆の戦争:ありがとうジョージ」で、今年の10月19日までの米兵の本当の死者数は1万5千人、負傷者数は2万7千人を越えると書いた。

 同記事はさらに、イスラム軍をはじめとする複数の集団の作戦によって10月10日から11日にかけてバグダード南部のファルコン米軍基地が大規模に爆破され、第一報によれば300人の死傷者が発生した(サラーフ・アル・ムフyタール氏は2日前に532人と放送した)。因みに、ファルコン米軍基地内には約5千人の米兵がいるが、米国の報告は100人以上の兵士がいることを否定した。

 同サイトに掲載の軍事・戦略分野が専門の評論家で通信員のプライング・ハーリング氏の記事によると、米国防総省はイラクにおける死者の多くについて故意に発表していないと考えるに足る強力な証拠がある。同氏が入手した空軍輸送部隊によって「ドーヴァー」空軍基地へ輸送された米兵のリストのコピーによれば公式発表より遥かに多い兵士を輸送したと記されている。

同氏は、「米国防省が発行後すぐに回収したイラク駐留米軍の2003年3月から2005年11月までの期間の死者数が1万人に達していると指摘している公式文書を持っていると書いた」。(我々はその文書を入手しており、以下のリンク先で読むことが出来る。www.maktoobblog.com/alibakeer

 「1万5千人もの死者と2万5千人の負傷者が出ているとする米国政府の公式文書を認めるならば、米兵の死者数が3千人を超えないとする米国の公式統計が全く現実的でないと結論付けられる。レポートによれば5500人以上の米兵がアイルランドやカナダ、欧州諸国に逃亡している」

トリバー・チャーム氏は、10月11日に発表した「イラクで死んだ米兵の本当の数は」の中で、「国防総省は死者数で疑いなく嘘をついてる。複数のレポートを読んだ結論は、イラク駐留米軍の兵士の死者は1万人を超える。これはベトナム戦争の本当の死者数は当時の米国市民向の公式発表より2万人多いとする米国退役軍人協会が最近暴露した文書から考えても信憑性がある数値だ。公式発表ではベトナム戦争の死亡米兵は58182人だが、同文書が明かした本当の死者数は7万8千人だったのだ。

『イラクの聖戦諸グループ発表の数』

 イラクの抵抗組織や聖戦組織は、占領軍の被害実態を良く知る立場にいるが、問題なのは、組織数や声明数の多さだ。多くの組織が作戦をばらばらに実行しているので、全体数の把握を困難にしている。それでも、声明や組織が発表する数字などから敵が被った損害を推定することは可能だ。

 最大規模の抵抗聖戦組織の一つとされているイラク・イスラム軍は、作戦や統計収集、規律、編成の点で精緻で組織化された優秀な組織だ。他の組織と同様に実行した大規模作戦を撮影したビデオを定期的に発表している。

イラク・イスラム軍の指導者は9月に行なわれた同組織の中央報道局発行のインターネット・マガジン「アル・フルサーン」との会見の中で、「我々は何千もの敵兵を殺害し、何千も負傷させた。我々の独自の統計によれば、敵である米国人の死亡者はイラク戦争開始時から現在までの間に2万5千人を超えており、負傷者も数万人いる」と語った。この数字(2万5千人)は、本当の死者数は常に米国国防総省発表の数字の10倍であると指摘したあるロシア人軍事専門家の見積もりに近い。

『アラビア語のニュース・サイトの数字』

 我々の知る限りでは、「アルモホタサル・アルアハバーリー(ニュース概略)」が恐らく占領開始時からのイラク駐留米軍の死者数を発表しているただ一つのアラビア語のサイトだ。ここでの数字は米軍の人的損害を伝えるニュースなどを基に日々更新されている。ここでは日々発生する死亡者数と、ブッシュがイラクでの武装作戦の終結を宣言した2003年3月以来の米兵の総死者数を出している。

このカウンターは10月23日に米兵の総死者数が33693人であるとしており、米国当局が同じ日に発表した2790人のおよそ12倍の数字である。このサイトにEメールで上記の数字を数える際に依拠した情報源を尋ねたところ、「イスラム・メモ」(ご存知のとおり、同サイトは「英文のイラクレ・ジスタンス・レポートを発行するムハンマド・アブーナスル」及び「カナダ人ムスリム女性が運営する英語の電子ジハード・アンスパン」と並んで米国国務省が非難し、閉鎖を求めた3つのサイトのうちの一つ)をはじめとして通信社、イラクのウェブ・サイト、「アルジャジーラ」のサイトなどに依拠しているとの回答を得た。同サイトはさらに、カウンターを設置したのは占領が始まってから3ヶ月後で、それまでの期間はさかのぼってカウンターに数字を加えたという。

『これらの数字のどれが本当か』

読者の中にはこれまでに挙げたの数字毎の差が大きいことから、米国当局の発表と比べて数字が大きいと言って上記の数字を疑うむきもあるだろうが、死者の実数を見積もるには、以下の原則を意識することが必要だ。

1、国政府や国防総省発表の公式の数字は、以下の理由により真実であるはずがなく、真実に近いものでもない。
・ 同米国国防総省が毎日発表する死者数の記録には技術的な欠陥がある。報告書作成時から発表時の間の被害は記録されないのだ。そのため、日誌には記録されず発表もされない被害もある。
・ もし公式の数字が正しいなら、死亡した米兵の遺体をまずドイツへ搬送したり、米国へ直接輸送したりする際の儀式を撮影、報道を禁止する命令を国防総省が出す必然性がなくなる。
・ 間違いなく3千人を超える本当の死者数は、米国の世論に悪影響を及ぼし、戦争に反対する声が増大し、政界にも影響を与えて米軍のイラクからの撤退及び駐留継続の決定を左右することになる。そのため本当の数字が伏せられる。

2、米国発表の米兵の公式死者数の問題は、実数より過小な数字が発表されているだけでなく、救護活動中に死亡した兵士やドイツ及びイラクの近隣諸国の病院へ搬送される途中で死亡した負傷者は算入されないことにもある。更に国務省や情報機関の職員、米国人契約雇用者、米国人傭兵も数に入っていないばかりか、抵抗勢力の作戦により死亡した米国国籍未取得の米兵までも除外されている。

 ロイターは10月10日付で、運転手や通訳、電気専門家、コック、掃除人、そして事務や実際的な業務を通じて米軍を支援していると考えられる職種など、イラクにいる民間人契約雇用者は約10万人であるとの見積もりを発表した。

 米国労働省によると、2005年11月以降に死亡したこのような民間人雇用者は428人、負傷者は3963人であり、ロイター発表によれば死者数は647人であるという。これらの数字は当然米国が毎日発表するイラクにおける米国人死者数には入れられない。

3、米国人に対する攻撃の規模も考慮する必要がある。「ワシントン・ポスト」紙の米国人著名記者ボブ・ウッドワード氏によれば、一週間に米軍に対して行なわれる攻撃や作戦の数は8百件から9百件だ。これはイラク抵抗勢力の1組織が発表した声明の内容と比較すると、正確な数字に大変近いことが分かる。

 イラク・イスラム軍は9月に、過去4ヶ月間に行なった作戦の数は2600件に及んだと発表した。一日当たり約22件だ。1組織が一日に22件の作戦を実行し、同軍のほかにも聖戦士軍団、ラーシディーン軍団(訳注:最近米兵の死者数を3万人と発表した)、アンサール・スンナ軍、聖戦士諮問評議会、1920年革命旅団、ファーティヒーン(解放者)軍などがいることを考えれば、抵抗勢力が一日100件(訳注:イラク・バース党の報道官的な立場に居るサラーフ・アル・ムフタール氏は300件と言っている)攻撃を行なうことも可能である。

4、上記のウェブ・サイト「アルモホタサル・アルアハバーリー(ニュース概略)」が出した33693人という最大の数字は、イラクに駐留する米兵の数や抵抗勢力の人員及び軍事作戦の数を考えると決して過大な数字ではない。

 ロイターによれば、2006年10月時点で14万4千人の米兵を含む16万2千人の多国籍軍兵士がイラクにおり、それに加えて10万人の契約雇用者や米軍に勤務する人々がいる。イラクにいる米国人の総数が24万4千人だとすると、ウェブ・サイト「アルモホタサル・アルアハバーリー」が見積もる死者数はその13.8%に達していることになる。この割合は、死亡率が駐留米軍兵士の僅か1.9%、在イラク米国人全体の1.1%であるとする公式発表と違って、現実的にあり得る数字だ。

5、抵抗勢力の作戦を撮影したビデオは、米国の公式発表の数字が虚偽であると断ずる上で、大きな影響力がある。これは、敵に与える実際の作戦以上の大きな心理的影響やメディア上の影響もさることながら、数や装備において動揺する敵の状態を映し出す鏡の役割をも担っていると言うことが出来る。

 イラク・イスラム軍が発表している「バグダードの狙撃手」などの短いビデオは、米国の公式発表の数字が捏造であることを示そう。イラク・イスラム軍の狙撃旅団はおよそ666人の米兵を殺害したと述べている(その多くの模様はビデオに撮影されている)。この組織による狙撃作戦だけで米国の死傷者数の公式発表の四分の一を占めることはあり得ない。米国人の死者数は公式発表よりずっと多いだろう。特にメディアや米国当局が狙撃による死者を全く発表しておらず、よってまず間違いなく元から数に入れていないだろう。

6、米国当局の数字を正しいと仮定するなら、14万4千人の兵士の僅か1.9%しか死亡していないのであるから、米軍には全く問題が無いことになる。しかし、公式発表の諸指数は本当に何も問題がないことを示しているといえるだろうか、それとも逆なのか?

①国防総省が好条件を提示し新兵を勧誘しているにもかかわらず、兵員の補充が不足しているのはどう説明するのか。国防総省は新たに入隊する者に2万ドルの報奨金を与え、教育費に一人あたり6万ドルを支出している。加えて、特殊部隊に加わる者の一部には15万ドルの報奨金を出し、さらに特権を享受させている。

 また、米国当局は米軍に勤務する外国人に米国籍を付与している。ブッシュ大統領は2003年11月に、それまでの新兵勧誘策が不調だったことから、米国国籍を得るまでにかかる期間を3年から1年に短縮させた。2004年には7千5百人の兵士がこの政策のお陰で米国籍を取得した。これはベトナム戦争以来最高の割合である。

②我々が以前発表した「イラク駐留米軍が崩壊した場所」と題したレポートでは、兵員補充だけでなく、米軍は兵士の辞職問題も深刻だと書いた。新兵の約3割は半年以内に任務を放棄し、その一部は入隊前の生活と訓練中の軍隊生活との落差だけを理由に辞めている。そのため、兵士の勤務規定を緩和し、「病人以外、体力・体格や能力、妊娠、アルコール中毒、麻薬中毒を理由に除隊を認めない」という軍布告が出される羽目になった。

③もし米軍の損害が少ないなら、任務を放棄して逃亡する兵士の問題をどのように説明するのか。国防総省はイラク戦争開始以来5千5百人以上の兵士が原隊から逃亡したと認めている。辞職希望兵士を支援するホット・ラインによれば、現在兵士からの電話の数は2001年の倍で、昨年は3万3千通話に達した。

④米軍にとって事態が好ましく推移し死者数も少ないとすれば、なぜ任務終了のイラク駐留兵士の帰国を許可しないのか。「米国政治研究所」が2005年8月31日に発表したレポートによれば、イラクからの帰任禁止命令は1万4千人以上の兵士(イラクに駐留する兵士の約10%)に影響を及ぼした。これらの兵士はイラク出国の申請書に記入する準備をしている。

『イラクの米国人死者概数』

 ここまで述べてきた情報に鑑みた結論として、イラク駐留米軍の死者数には4つの主要な数字がある。
・ 米国の公式発表、2790人
・ アラブ圏外の独立情報源による見積もり、1万5千人以上
・ 抵抗勢力「イラク・イスラム軍」による見積もり、2万5千人以上
・ アラビア語ニュース・サイト「アルモホタサル・アルアハバーリー」による見積もり、33693人

 これらのうち後ろの3つの数字を平均すると、2万4千人「以上」の米国人が死亡していることになる。これはイラクにおける米国人の死者数として筋の通った受け入れられる数字であり、これまで述べてきた様々な事実や情報、文書との整合性もある。2万4千人はイラクにいる米国人全体の9.8%にあたる。

http://www.albasrah.net/ar_articles_2006/1006/baker_301006.htm#_edn1
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1981年生まれの著者のバーキール氏は戦略問題を中心とした国際関係論が専門でアラブ各紙に掲載されている。同氏の写真は下記の彼のブログにある。
http://www.maktoobblog.com/alibakeer

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