福島第一原発は「PSA報告」の想定通りに壊れました/山崎久隆

2011-05-09 08:03:59 | 社会
これまで東電社長などは「想定外の津波に襲われたから」とかなんとか言い
逃れに汲々とし、なんとか賠償額を抑えようと必死の様子ですが、そう世の中
甘くはありません。
 ちょうど米国のニューレグ1150と同様の確率論的安全評価(PSA)
の手法を使った津波の影響評価がされており、とっくに一定の確立で炉心損傷
することは分かっていたのです。

 福島第一原発の津波被災については、
平成21年度
地震に係る確率論的安全評価手法の改良
=BWRの事故シーケンスの試解析=

という表題の報告書に、地震や津波により原子炉炉心損傷が起きる確率の解析
が載っています。(122ページあります)
http://www.jnes.go.jp/content/000117490.pdf

 この中の「3.津波PSA の試解析」という部分が、今読んでも背筋が凍り付
くことが書いてあります。
特に3-11にある「図3.2 津波時のイベントツリー」を見ると、海水ポンプ
の破壊でもう炉心損傷が起こりえることが示され、海水ポンプが機能しても全
交流電源喪失が回復しなければRCIC(原子炉隔離時冷却系統)継続運転不
能により炉心損傷に至ることが書かれています。まさに福島第一で起きたこと
がそのままです。

さらに3-8、3-9ページを見ると、「8時間以内の外部電源復帰」は津波
波高が13メートルを超えたら「0.0」すなわち復帰の可能性ゼロと書かれて
います。

「図3.1 津波時の解析シナリオ」3-10ページは、今回の福島第一原発の運
命を正確に記述していました。津波が海水ポンプを破壊し、さらに外部電源喪
失に至った場合、もはや望みは絶たれていたと言うことを。

もうちょっと詳しく引用します。

「本解析条件のもとでは、津波の波高が一定値以上(防波堤の効果を考慮しな
い場合には約7m、考慮した場合には約15m)の場合に条件付炉心損傷確率がほ
ぼ1.0 となり、炉心損傷頻度(相対値)は津波発生頻度(相対値)とほぼ同一
となる。これは、それぞれのケースでこの波高を超えた場合に海水ポンプが機
能喪失すると仮定していることによる。」

解析はたった一つの、実に簡単なことを書いています。津波波高が7メートル
に達したら福島第一原発に望みは無かったのだと。そして実際に津波が来てし
まったこと、そして波高が7メートルを超えていたこと。それが全てだったの
です。防波堤の効果は、期待は出来ません。なぜならば福島第一の防波堤は
5.7メートルしかなかったからです。7メートルを超えれば全て同じというこ
とになります。

この後、どのようにしすれば最悪のシナリオを脱することが出来るのかについ
ては、この報告書には一切書かれていません。なぜならば、この報告書の任務
では無かったからです。

東電は知っていました。このような事態になることを。そして最悪の事態を回
避したいのであれば、別に外部電源を引き入れて、冷却ポンプを動かせば良い
ことも。そうしていればもしかしたら炉心は破壊されても大量の放射能放出は
回避できたかもしれないのです。TMIレベルで回避できたかもしれなかったの
です。海や大地をこれほどまでに汚染せずに済んだかもしれないのです。
報告書が作成されたのは昨年12月でした。

---------------
 「地震に係る確率論的安全評価手法の改良・独立行政法人 原子力安全基盤
機構10 原確報」(以下PSA解析)について紹介をしたが、これを福島第一
に即して見直してみよう。
 PSA解析では防波堤の高さを基準海面+13mとしているが、福島第一は
そんなに高くは無かった。実際の高さは5.7m。さらに海水ポンプ設置高は
それよりもさらに低く基準水面から4mしかない。これを先のPSA解析に照
らせば、もともと波高が6m程度で海水ポンプは使用出来なくなることになる。
6mの津波が「とても予想が出来ないほどの大津波」だろうか。
 ここでも東電と報道によるミスリードがある。
 津波の波高が6mで、福島第一は海水ポンプの破損により冷却不能になり、
炉心損傷は免れない。PSA解析はそう断じていたのだ。

 2010年12月公表のPSA解析は、BWR4について津波波高が少なくても
15mあればアウトと書いていた。
 微妙に福島第一と似ていて違えている。
 BWR4とは、日本で最も古いBWRである敦賀1や福島第一1の後継とし
てGE社が開発したもので、日本では福島第一の2~4と浜岡1,2、女川1
がこれにあたる。BWR5(改良標準型を含む)は東海第二、福島第一6、第
二、柏崎刈羽1~5など多数ある。
 BWR4で敷地高さ13mというと、福島第一の5に相当する。1~4は
10mしかないのだ。この3mの差が、福島第一の1~4と5,6の運命を分
けた。
 さらに言えば女川もまた、敷地の高さが津波の高さをやや上回ったこと、外
部電源が取れていたことが幸いした。福島第一は外部電源が無く、非常用
ディーゼルも6号機の1台だけしか動いていなかった。
 PSA解析は、海水ポンプが水没し、非常用ディーゼルや外部電源の全喪失
が起きれば、炉心損傷を免れないことを明確に記述しており、その最初の関門
が津波波高6m超えだった。1~4号機については、敷地の高さが10mしか
ないので、2m高い12mが最終防衛線だった。ここを超えたら、もはやなす
すべはなかったのだ。
 まとめると、既に昨年のPSA解析において、福島第一は津波波高6mで海
水ポンプは使用不能となり、炉心損傷の確率が極めて高くなり、波高が12m
に達したら、その確率はほぼ100%になっていたこと。その対策をしなけれ
ばならないという危機感が当時も無かったし、地震発生時点でも無かった。す
なわち、原子力安全基盤機構という原子力産業の側の機関が行っている解析に
対してさえ、真剣に対処する必要を感じていない人たちが、現在の原発を動か
していることになる。
 ことは東電だけの問題ではない。この解析に従って津波対策を強化していた
原発など一つも無いのだから。


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