「君が代」不起立処分最高裁判決について/根津公子

2012-01-18 10:20:52 | 社会
16日の最高裁判決法廷の傍聴に駆けつけてくださった皆様、あるいは、気に留めて
いてくださった皆様、ありがとうございます。以下、
06年「君が代」不起立処分(河原井:停職1月 根津:停職3月)最高裁判決の要
旨と若干の感想を記します。

 判決は、河原井さんの「処分は取り消す」河原井さんの「損害賠償請求部分は東京
高裁に差し戻す」、しかし、「根津公子の上告を棄却する」という分断判決でした。
11月28日の弁論は、河原井さんに対してだけ開かれたものだったということで
す。弁論の通知が来た9月15日以来、この怖れは何度となく頭を持ち上げてはきま
したが、停職期間を比べれば、停職3月の根津だけ処分妥当とする根拠はないないは
ずだから二人とも処分取消になるだろうとの期待をかなりの率で持ってしまっていま
した。
 法廷で官吏の「上告人根津公子以下、ほか一名」「開廷」の発声に続き金築裁判長
が読み上げたことばは「主文 河原井純子…」。この一言で私は敗訴?!と気が動
転。考えを巡らす余裕を一切失ったまま法廷から放り出されました。判決文に目を通
し、時間の経過とともに、現実をはっきり確認したという次第です。
期待してしまった分、落胆が大きかったですが、「日の丸・君が代」問題を終結させ
たい権力の落としどころと、しかし止めは刺すのだということをしっかり見せつけら
れた感じです。
 この日はアイム‘89の2人(戒告)、都立学校167名(減給1月の渡辺厚子さ
ん、ほかは戒告)の判決もあり、戒告は処分やむなし、しかし、減給は処分取消とな
りました。


 今回の判決は、憲法判断ではなく、「裁量権の濫用があるか」についての判断でし
た。判決は、
①「不起立行為に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択す
ることについては、慎重な考慮が必要となる」

②「停職の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分の
処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要
性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、停職処分を選択することの相当性
を基礎付ける具体的な事情が認められる場合。」すなわち、「過去の処分歴に係る非
違行為がその内容や頻度において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものである
場合。」
という2つの基準を示し、その観点から判断して、

③河原井さんについては、「過去の懲戒処分の対象は、いずれも不起立行為であって
積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず、停職処分を選択し
た都教委の判断は、停職期間の長短にかかわらず、処分の選択が重きに失するものと
して社会通念上著しく妥当を欠き、…違法。」

④根津については、「卒業式における国旗の掲揚の妨
害と引き降ろし及び服務事故再発防止研修における国旗や国歌の問題に係るゼッケン
着用をめぐる抗議による進行妨害といった積極的に式典や研修の進行を妨害する行為
に係るものであるうえ、更に国旗や国歌に係る対応につき校長を批判する内容の文書
の生徒への配布等により2回の文書訓告を受けており、このような過去の処分歴に係
る一連の非違行為の内容や頻度等に鑑みると、…停職期間(3月)の点を含めて停職
処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情があったと認められるから違法
であるとはいえない」
としました。

 5裁判官のうちただ一人、2人の処分取り消しを主張した宮川光治裁判官の反対意
見を紹介します。
ア.「上告人らが職務命令に従わなかったのはその行為が上告人らの思想及び良心の
核心の表出であるか少なくともこれと密接に関連している。国旗及び国歌に関する法
律と学習指導要領が教職員に起立斉唱行為等を職務命令として強制することの根拠と
なるものではない。通達は価値中立的な意図で発せられたものではなく、不利益処分
をもってその歴史観等に反する行為を強制することにある。」

イ.「上告人らは地方公務員ではあるが、教育公務員であり、一般行政とは異なり、
教育の目標に照らし、特別の自由が保障されている。…公権力によって特別の意見の
みを教授することを強制されることがあってはならないのであり、他方、教授の具体
的内容及び方法についてある程度自由な裁量が認められることについては自明のこと
である。
…式典において、教育の一環として、国旗掲揚、国歌斉唱が準備され、推敲される場
合に、これを妨害する行為は許されない。しかし、そこまでであって、それ以上に生
徒に対し直接に教育するという場を離れた場面においては、自らの思想及び良心の核
心に反する行為を求められることはないというべきである。」

ウ.上告人らの不起立行為は、…人権の尊重や自主的に思考することの大切さを強調
する教育実践を続けてきた教育者としての信念に起因するものであり、その動機は真
摯であり、いわゆる非行・非違行為とは次元を異にする。」

エ.「上告人らの不起立行為は消極的不作為に過ぎないのであって、式典を妨害する
等の積極的行為を含まず、…法益の侵害はほとんどない」

オ.戒告処分がひとたびなされると、累積処分が機械的にスタートする。戒告処分で
あっても過剰に過ぎ、比例原則に反する。

カ.根津の処分歴に係る一連の非違行為の内容や態度には一部許されないものがある
が、本件は単なる不起立行為にすぎないのであるから、停職処分(3月)は是認でき
ない。


判決を読んで思ったこと―
積極的な妨害とはいえない不起立については救済の対象=減給以上の処分は違法、し
かし、根津のように積極的に妨害、批判する者は許さない=停職処分は違法ではない
とした判決でした。一方に救済する者を作り、そこを落としどころとして、しかも根
津には止めを刺し、それを以って今後不起立をしようと思う教員に対する見せしめと
する。裁判所はこうして、「君が代」裁判に幕を閉じようとしているように思う。終
わった問題とすることで現場の教員たちの「君が代」強制に対する疑問や抵抗感を一
掃し、闘いを潰す狙いがあったのではないか、と思います。

そうではあっても、判決が、戒告を超えた処分、すなわち、減給以上は原則違法とし
た点は特筆すべきことだと思います。これにより、累積加重処分は違法となり、実質
東京の10・23通達は半分以上崩れたと見ていいでしょう。大阪の教育基本条例も
見直しを迫られています。

しかし素直に喜ぶことはできません。大阪では職務命令に2度違反した教員を自動的
に停職にできる条項を見直し、停職の前に指導研修の機会を設ける考えを示したとの
こと。そして、橋下市長は「違反状態が改善されるまで現場復帰は認めない」と言っ
たとか。「積極的な妨害、批判等」よろしく、「積極的な非転向。研修の成果なし。
免職妥当」としてくるのではないかと危惧します。

根津の処分も取り消すべしと言った宮川裁判官は、教育公務員は教育の目標に照ら
し、特別の自由が保障されることを指摘するなど、教育の自由の観点を大事にした判
断をしています。でも、その宮川裁判官でさえ、「根津の処分歴に係る一連の非違行
為の内容や態度には一部許されないものもあるが」と言います。「積極的な妨害」が
許されないというのでしょう。
報道の多くが「処分取り消し」ばかりを大きく映し出したことには、どういう意図が
あったのだろうと疑念を持ちました。
とりあえず、ここまで。

-----------

松原 明 mgg01231@nifty.ne.jpさんから

以下のサイトに、今回の最高裁のやりとりの中で、根津さんが書
いた陳述書がありました。1994年の石川中での「日の丸引きおろし」の出来事です。↓
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/22051231.html

それから、前述の「根津公子さんのホームページ」は以下です。このページは、沖電気
の田中哲朗さんがつくっているものです。裁判資料もありますが、内容が膨大で読みに
くいかもしれません。↓
http://www.din.or.jp/~okidentt/nezusan.htm

ほかに根津さん関連では、
「希望は生徒」(影書房刊)
「君が代不起立」(DVD、ビデオプレス)
などもお勧めです。

--------------

レイバーネットMLから Mさんの投稿
1)
今回の判決は、都教委の「裁量権の濫用」についてのみ
のものでした。

 根津さん河原井さんは、上告の際、
都教委による「日の丸・君が代」の強制と処分のあり方が、
憲法の「思想信条の自由」に反しているのでは、と問うていましたが、
それは最高裁では、再考されませんでした。

なので、「処分の程度」についてだけ、検討された最高裁判決でした。

そもそも、「日の丸・君が代」の強制、
「内心の自由」を否定して一方的に、教員には、必ず「立て、歌え」と
「職務命令」まで出して、
そして、これに反対する人を処分までして従わせようとする、
このこと自体を憲法違反でないとする裁判所、
これがとてもおかしいと思います。

これが「思想信条の自由」を阻害していなくて、何だというのか?


2)
「日の丸・君が代の強制」それ自体が、「思想信条の自由」に反する
ナンセンスな制度ですから、
ましてや、これに反対する教員を処分するなんて、まったくおかしい。

すべての「処分」が、まったくもって、憲法違反、だと私は思います。

軽い、重い、やりすぎ、とかいう問題でなく、「強制と処分」これ自体があってはならない。

今回の「根津さん河原井さん06年事件」に対する最高裁判決は、
そもそも、都教委によるこの強制と処分の制度、それ自体を
合憲とした上でのことです。
「強制と処分の制度」、これにはまったく反省をもとめない、
その上で、

「あんまり周囲に影響を与えない程度に、だまって座っているだけなら、
まあ少し、処分を軽くしてあげようか?」
「こちらの許せる範囲なら、大目に見てやろう」的な、
上から目線の傲慢な印象を覚えました。
(「最高」の裁判所だからあたりまえ?)

「強制と処分」の制度自体を温存しつつ、反省する気があるなら、
処分を軽くしてやっても良い、みたいな最高裁の父権主義的な態度を、
私は、とてもいやらしく感じました。

「強制をやめろ」そして、「すべての処分をいますぐ撤回しろ」です。
(「お目こぼしはいらねえ!」 っていう感じです)


3)
今回の「根津さん河原井さん」判決は、2006年の「不起立」に
ついてです。
なのに、根津さんの「日の丸」引き下ろし事件は、1994年のことで、
かつ、これに対しては、すでに処分もされています。

なのに、なぜ今回の棄却理由に持ち出されるのか、さっぱり分かりません。
94年のことなどをわざわざ持ち出して、
根津さんが自身の思想信条から一貫して反対・抵抗してきたことを、
あたかも全く反省の色を示さない極悪人であるかのような印象を
世間に植え付けようとする裁判所のやりかたは、まったくおかしい!!


4)
1994年の根津さんの「日の丸引き下ろし事件」は、
式典を妨害するようなものだったとは、私は思いません。

東京では、子どもの成長をお国の発展のため、と見ていた
戦争中の学校のあり方を反省し、
子ども一人ひとりのそれぞれの成長を祝うものとして
「卒業式」をつくってきた戦後の歴史があったのだと
私は理解しています。

檀上で、校長が上から子どもに「卒業証書」を与えるような
「上から目線」でなく、フロアでの対面式で、
会場を、紅白幕でなく、子どもの絵で飾ったりする、
というように。

そして、「君が代」を卒業式で歌うのかどうかも
職員会議で、教員たちが話し合うだけでなく、
卒業生と在校生たち自身で話し合って決めてきた、
(そして子どもたちが「日の丸・君が代」について
検討できるような授業をしてきた、
その上で、子どもたちは自分たちで判断してきた)
そういう歴史もあったのに、

それを、上から、教育委員会が圧力をかけ、
それに校長がおしきられ、
教員、生徒の、話し合いの結果を無視し、
強引に、校長が卒業式の当日、「日の丸」を勝手に
掲げたのです。

ですから、1994年の石川中の卒業式をぶち壊したのは、
根津さんでなく、教育委員会と校長です。

これに抵抗したのが、まず子どもたち、そしてこれに応えたのが
根津さんです。

校長による石川中の民主主義のぶち壊しを、
黙って見過ごさなかった根津さんに、私は敬意を感じます。

私ならできなかったでしょう。
でも、それを見過ごしたなら、その後、教員として学校にい続ける
こともできなかったでしょう。

ここまで書いてきて、とても長くなったので、これでやめます。

だいたい私の考えはこんなところです。
自分の整理のためにも書きました。

1994年の根津さんの「日の丸引き下ろし事件」などについては、
根津さんの著書『希望は生徒―家庭科の先生と日の丸・君が代』
をご参照下さい。

---------------

陳述書 根津公子 (後半)/今 言論・表現の自由があぶない!
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/22051231.html

  「君が代不起立処分」 3 つの最高裁判決(16日)「一定の歯止め」と「見せしめ」  


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17 コメント

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ふーん (赤坂)
2012-01-27 18:52:46
なら公務員やめりゃいいじゃねーか!公の組織に守られて寝言ぬかしてんじゃねーよ。公僕になったんなら理不尽でも上の指示に従うのはもってしかるべきだろ、それが嫌なら辞めちまえ!税金泥棒が
Unknown (X)
2012-02-26 08:15:26
どうしても学校にこだわるなら、朝鮮人学校に行けばいいと思うよ。

そもそもそういう外国の飛び地は日本にはいらないけど。

ジャンヌならぬじゃんねん(残念)先生?
(^_^) 歪んだ人生からの脱却 (すっきりとした毎日へ、)
2012-03-13 13:39:43
根津さんは、
これまで生活の糧を税金に依存して来られました。

根津さんの
嫌いな歌が象徴する、日本国からご飯を食べさせて貰う人生 。

それは当然
根津さんの一生を、辛く歪んだ物にしかしませんよね。


今からでも遅くありません。そんな酷い人生から脱出してください。

今まで頂いてきたお金を国に返し、
勿論これからも頂くことも拒否して、

「君が代」が象徴する日本国にタカり、寄生する人生から、

一刻も早く 立ち直ってください。

こういった道理、道徳を重んじる行動が、みんなの幸せに繋がるのは御存知の通りです。
Unknown (・)
2013-07-23 11:21:55
不起立と愛国心は関係ないだろう。
Unknown (・)
2013-08-28 12:37:31
次回の裁判の日にち、教えて。
根津さん、オレが救ってやっから。あっ、はっ、はっ。
あなたは都合よすぎ (・・・)
2013-08-29 01:09:20
(仮に)日本が周辺諸国を侵略したとして、日の丸がその侵略の象徴で、周辺諸国民が日の丸に嫌悪感を抱いていたならばなおさらのこと、日本人は日の丸を自ら否定してはいけないんじゃないですか?日の丸を廃棄して新しい日本国旗を制定しても意味はない。日の丸は負の歴史も輝かしい日本の功績も、すべて見てきたのです。日の丸に反対することは、それをなかったことにするような思考ではないでしょうか?
原爆投下したアメリカの国旗は戦争当時も今も、あの星条旗です。でも、日本国民は星条旗に対しては特別な反応はしません。あれはアメリカの国旗で、それ以上でも以下でもないからです。
Unknown (・)
2013-08-30 11:13:20
諸悪の根源は天皇制である。
Unknown (・)
2013-09-02 12:17:49
諸悪の根源は天皇制で、無駄の最たるものは皇室費である。
Unknown (・)
2013-09-03 11:16:48
諸悪の根源は天皇制で、無駄の最たるものは皇室費である。政党助成金より悪い。
Unknown (・)
2013-09-04 10:55:38
格差より差別の方が悪い。

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