麻生発言 天皇を持ち出す危うさ/朝日新聞社説

2006-01-31 09:19:33 | 社会
 外務大臣は日本外交の責任者である。だが、靖国神社をめぐる麻生外相の最近の発言は、その責任と重みをわきまえているのか、疑問を抱かせる。

 先週末、公明党参院議員の後援者らの会合で、小泉首相の靖国神社参拝について聞かれ、こう答えた。

 「英霊からすると天皇陛下のために万歳と言ったのであって、総理大臣万歳と言った人はゼロだ。だったら天皇の参拝なんだと思うね、それが一番」

 「(天皇の参拝が)何でできなくなったかと言えば、公人、私人の、あの話からだ。どうすれば解決するかという話にすれば、答えはいくつか出てくる」

 なにが言いたいのかよく分からないが、天皇の靖国神社参拝こそが重要であるというメッセージは伝わってくる。

 この発言は直ちに世界へ報じられた。

 「麻生外相が戦争神社への天皇参拝を求めた」(英BBC放送)。「日本外相が、天皇は靖国神社を参拝すべきだと主張した」(中国国営新華社通信)……。

 麻生氏にはそこまで言ったつもりはないのかもしれない。だが、外相が天皇の参拝の問題まで持ち出した事実は重い。

 いま、天皇による参拝の可能性が国内でも国際的にも注目を集めているわけではない。深刻な外交問題になっているのは首相の参拝であり、その収拾策こそが外相に求められている。

 首相の参拝中止を求めている中国について「たばこを吸うなと言われたら吸いたくなるのと同じ」と批判したのもいかがなものか。煙で迷惑をかけていたら、吸わないのが礼儀だろう。

 問題をさらに広げるかのような発言は不見識のそしりを免れない。どこか言葉のうえで、もてあそんでいるような風情すら感じさせる。

 事実関係からみても、麻生氏の発言には理解できない部分がある。

 昭和天皇は戦後8回靖国神社に参拝したが、75年11月を最後に参拝をやめた。戦争の指導者だったA級戦犯が78年に合祀(ごうし)された後は一度も参拝していない。

 天皇が参拝しない理由はなにか。麻生氏が「公人、私人の話」と述べたのは、75年8月に参拝した三木首相が「私的参拝」と位置づけたことを指すようだ。

 参拝支持派の一部はこのため「公的、私的の区別がない天皇は参拝できなくなった」と主張している。A級戦犯の合祀が障害なのではないと言いたいのだ。

 だが、この主張は筋が通らない。三木氏の参拝の3カ月後に天皇が最後の参拝をしたことの説明がつかないからだ。外相はどんな根拠があって天皇の真意について発言したのか、説明を求めたい。

 秋の自民党総裁選に意欲を示す麻生氏は、小泉路線の継承者という立場を打ち出そうとしているようだ。靖国神社をめぐる発言には、党内の右派の支持を集める思惑もあるのかもしれない。

 だが、外交の責任者という立場を忘れてもらっては困る。麻生氏は改めて自らの真意について丁寧に語るべきだ。

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天皇靖国参拝、麻生外相「検討を」
2006年01月29日12時22分

 麻生外相は28日、首相の靖国神社参拝に関連し、「祭られている英霊からすると、天皇陛下のために万歳と言ったのであって、首相のために万歳といったのはゼロだ。天皇陛下の参拝が一番だ。何でできなくなったのかといえば、公人、私人の話からですから。どうすれば解決するかという話にすれば、答えはいくつか出てくる」と述べた。名古屋市での講演の後の質疑で語った。

 天皇の靖国参拝は75年11月の昭和天皇が最後。同神社には、78年にA級戦犯が合祀(ごうし)されている。外相の発言は、こうした経緯を踏まえ、天皇が参拝できる方策を検討すべきだとの考えを示したとみられる。

韓国・外交通商省も「天皇参拝発言の撤回を」
2006年01月30日20時30分

 韓国外交通商省の報道官は30日、麻生外相が靖国神社参拝問題に関して28日、「天皇陛下の参拝が一番だ」と発言したことについて「日本の外交責任者が隣国との関係を度外視した間違った発言だ」と論評し、発言を撤回するよう強く求めた。

 「外相発言は、侵略戦争の歴史を正当化し、美化しようとするもので、非常に遺憾」としたうえで「正しい歴史認識のもとで国際的な平和と協力のために努力するよう促す」と述べている。

 昨年、対日関係が悪化して以来、韓国政府は「日本側の発言にいちいち反応しない」と自重してきたが、先の大戦時の最高責任者だった天皇を日本の閣僚が靖国神社と結びつけたことに対し、「越えてはならない一線を越えた」(政府当局者)として、論評に踏み切ったという。

新華社通信、麻生外相発言は「極右を代表」と批判
2006年01月30日20時33分

 中国国営新華社通信は29日、麻生外相が講演で、靖国神社に天皇が参拝できる方策を検討すべきだとの考えを示したことについて、「外相の発言は日本の極右勢力の立場を代表した」と厳しく批判した。報道は「日本の外相が何と天皇参拝を鼓吹」との見出しで発言の概要を伝え、靖国問題は「日本の指導者が戦争の歴史に正しく向き合っていないことを反映した厳粛な政治問題」だと指摘した。

 中国の公的機関は春節(旧正月)の休暇中のため、政府の公式見解は出ていない。
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「今、参拝していただきたいとは言っていない」麻生外相
2006年01月31日11時34分

 麻生外相は31日の記者会見で、靖国神社をめぐって「天皇陛下の参拝が一番」と28日に発言したことについて「英霊の方々の立場に立てばこういうことではないかと申し上げた。今の状況で天皇陛下に参拝していただきたいと申し上げたことはない」と釈明し、「解決しなければいけない問題があるのはご存じの通りで、どうやっていくかは考えていかないといけない」と述べた。

 麻生氏は「隣国からの変なわだかまりの話もなく、政府代表はもちろんのこと、陛下も亡くなった方を自然に追悼し、国のために尊い命を投げ出した方々に感謝、敬意を表することが自然に出来るようにするにはどうすればいいのかという問題提起を(28日に)したつもりだ」と語った。

 A級戦犯の分祀(ぶんし)や靖国神社の特殊法人化については「それも一つの方法だ」とする一方で、「識者の意見も集める必要がある。解決法が簡単にあるなら、とっくに出ている」とも語った。

 天皇が参拝しなくなったのは「公人、私人の話からだ」と28日に発言した点を問われると、「75年8月に三木首相が行かれ、11月に(天皇が)行かれたのが最後だ。その頃からワーッと(公私の区別の)話が出て、行かれなくなって30年の月日がたった。急に行かれなくなった理由はその話が直接のきっかけだと私自身は思う。違うという説があるのかもしれないが」と述べた。

 靖国神社に代わる国立の追悼施設建設については「みんな靖国に行くのをやめて代替施設に行くかというと、なかなか難しいのではないかと個人的には思う。そういう意見が一部にあることは知っている」と否定的な見解を示した。



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