ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』1973~1974

2018-09-12 00:00:13 | 刑事ドラマ HISTORY









 
今更あらためて語るまでも無いとは思いますが、『太陽にほえろ!』を振り返るのにテーマ音楽の事を無視するワケには行きません。

いまだにバラエティーや報道番組、CM等で刑事物っぽい演出があると、必ずと言っていいくらい『太陽』のテーマ曲が使われます。それもアクション調やサスペンス調、バラード調など、メインテーマ以外の劇伴曲まで頻繁に使われてるのが凄い!

多部未華子主演による刑事物コメディ『デカワンコ』に至っては、『太陽』サウンドを代表するナンバー「太陽にほえろ!メインテーマ」と「ジーパン刑事のテーマ」をリミックスしてそのまま番組のメインテーマとして使うという、大胆かつリスペクト精神溢れる手法で見事な効果を上げてました。

それだけ『太陽』の音楽が、昭和世代には浸透してるって事だと思います。実際、メインテーマのレコードは国産のインスト曲としては最も売れたそうだし、いまだに『太陽』の新譜やドラマ音楽のオムニバスCDに収録され、売れ続けてますからね。40年前に録音された曲が!

もちろん、売れてるから凄いだとか、有名だから良い曲だとか、そんな事が言いたいワケじゃありません。ただ、昨今の「戦略で作られたブーム」によるヒットとは質が全く違うって事だけは、声を大にして言いたいです。

それだけ本当に素晴らしいテーマ音楽であり、私はもはや何千回と聴いてるにも関わらず全く飽きないどころか、今でも聴くと血肉が踊り全力疾走したくなりますからね。

そんな『太陽』の全テーマ曲を作・編曲して演奏されたのが、大野克夫さん。ショーケンやジュリーのGS仲間で、「勝手にしやがれ」「時の過ぎゆくままに」等の作曲でジュリーの黄金時代を支えた方です。

そして演奏は、ジュリー&ショーケンがWボーカルを務めたGSグループ「PYG」を前身とする「井上堯之バンド」。'80年代からは「フリーウェイズ」を経て「大野克夫バンド」となります。

『太陽』以前のドラマBGMはオーケストラ演奏が常識であり、また裕次郎さんが演歌の人でもあるから、ロックバンドの起用に対して局側はかなり難色を示したんだけど、ショーケンさんが是非に!と(多分かなり強引にw)推しまくったんだそうです。

結果、TVドラマ界の音楽シーンを一変させるほどの成果を上げたワケですから、ショーケンさんの『太陽』への貢献はホント計り知れません。あのメインテーマも、大野さんはショーケンさんをイメージして作曲されたそうですからね。

『太陽』の音楽は毎年のように新曲が創られ、全刑事にテーマ曲が設けられました。アニメ好きの知り合いが「キャラクターソングの走りだね」と言ってましたが、確かにこういうのも前例が無かったかも知れません。

さらに後年、普通はレコードにならないモノラル録音のBGMを集めたマニアックなLPレコードも発売され、これまたヒット。バップ社が様々なドラマのBGMを網羅したCD「ミュージック・ファイル」シリーズを発売するきっかけにもなりました。

面白いドラマ、ヒットするドラマには、もれなく素晴らしい音楽が付いてくる。それがあるからこそ面白くてヒットする、まさに相乗効果ですね。


#053 ジーパン刑事登場!

さて… マカロニ刑事(萩原健一)は事件解決後の帰り道、財布狙いの通り魔に刺されて死んじゃいます。当時は「挫折の美学」の時代で、こうした「犬死に」がテレビで描かれるのも珍しくありませんでした。

だけど『太陽』は新人刑事の成長を描くドラマですから、言わばマカロニが主人公。番組の途中で主役がいなくなっちゃうワケで、これは由々しき事態です。

そこで『太陽』製作陣は、大胆な賭けに出ます。ショーケンさんの後釜に、全く無名の新人俳優を抜擢しちゃう。現在ではまず有り得ないキャスティングだけど、当時としても相当な大冒険だった事でしょう。

この第53話はTVドラマ史の中でも画期的な交代劇であり、俳優・松田優作のデビュー作としても日本映画史に残るべき、重要な作品と言えましょう。

ニックネームの由来はまぁ、見たまんまですw マカロニの長髪と同じで、当時はジーンズ姿で勤務する警察官なんて前代未聞だったワケです。

マカロニは拳銃が撃ちたくて刑事になった人だけど、ジーパンは逆に拳銃嫌いという設定。武器に頼らず、長い手足をフルに活かした空手アクションで我々を魅了してくれました。

なお、同時に初代マスコット・ガール(お茶汲み係)=永井久美として青木英美さん、ジーパンのお母さん=柴田たきとして菅井きんさんもキャストに加わります。


#054 汚れなき刑事魂

第1話のゲストだった水谷豊さんが3回目の登場(通算4回のゲスト出演)、優作さんとは後に無二の親友となられます。

役者としては駆け出しのショーケンさんや優作さんに、若手俳優の模範を示してもらう目的で、意図的に水谷さんがキャスティングされたんだそうです。子役時代から主役を張ってた水谷さんは、若きベテラン俳優なんですね。

心根は優しいのにダークサイドに堕ちてしまった犯人(水谷さん)に、まだ善の心が残ってると信じて疑わないジーパン。人質にされて手錠を掛けられてもなお、ジーパンは彼を信じる事を諦めない。

で、ジーパンは血を流しながら空手チョップを繰り返し、なんと手錠の鎖を叩き切っちゃうんですよね。自暴自棄になってた犯人も、そんな決して諦めないジーパンの姿を見て改心する。

現実には手刀で手錠の鎖を叩き切るなんて不可能でしょうけど、松田優作なら出来ちゃうかも知れない… 我々にそう思わせるリアルな迫力が、この人にはあるんですよね。肉体のみならず、内面から滲み出てくる気迫が違う。

現在の若手俳優が同じ事をやったら、そりゃもう失笑するしか無いんじゃないでしょうか?


#055 どぶねずみ

本庁のエリート=西山警視として東宝特撮映画の重鎮・平田昭彦さんが登場、後に七曲署の署長に就任し、長きに渡ってセミレギュラー出演される事になります。

署長室にボス(石原裕次郎)を呼び出してチクチク小言をのたまうのが主なお仕事ですがw、息子が犯罪に関わって苦悩したり等、家庭人としての一面も描かれました。小うるさいけど憎めないキャラクターです。


#060 新宿に朝は来るけれど

文学座における優作さんの先輩で呑み友達の、桃井かおりさんがゲスト出演。後にボンボン刑事(やはり文学座の後輩・宮内 淳)の主演エピソードにも友情出演されてます。

場末の若きホステス(桃井さん)が、妻子ある中年エリート学者と恋に落ち、愛するがゆえに殺しちゃう。彼女はあまりに純粋すぎて、生命や罪の重さがよく解っていない。

そんな彼女とジーパンとの間に芽生える友情。彼女に手錠をかけた直後、狂ったように叫び、暴れるジーパン……

胸が締めつけられるような切ないエピソードで、屈指の名作かと思いますが、それも桃井かおりと松田優作が演じればこそ、だったかも知れません。


#065 マカロニを殺したやつ

マカロニを刺殺した犯人を、山さん(露口 茂)が執念の捜査でついに突き止め、逮捕に向かいます。ところがその犯人もまた、些細な原因で口論になったチンピラに刺され、あっさりと死んでしまう。山さんの、やり場のない怒りと虚しさ……

これもまた「挫折の美学」で、暗いしカタルシスは無いんだけど、代わりに深い余韻がいつまでも残る名エピソードでした。


#072 海を撃て!!ジーパン

ジーパンの父親は拳銃を持たない主義の警官だった為、いざという時に身を守れずに殉職したという設定。ジーパンは父の遺志を継いでというよりも、拳銃への憎しみゆえに銃の携帯を拒否して来ました。

ところが、そのせいで同僚のシンコ(関根恵子=高橋惠子)が撃たれてしまう。いざという時に何も出来なかったジーパンは、ついに拳銃を手にします。日本で最も拳銃がサマになる(と私は思う)俳優が、初めて劇中で銃を構えた、これもTVドラマ史に刻まれるべき作品。

あと、銃を片手に堤防を走るジーパンの姿がシビレるほどに美しく、これも『太陽』を象徴する屈指の名場面として、後に繰り返し使われる事になります。松田優作の疾走は本当に美しい!


☆1974年

#079 鶴が飛んだ日

殿下(小野寺 昭)が犯人の罠にはまり、ヘロイン中毒にされちゃいます。主役の刑事がシャブ中にされたのは、日本のTVシリーズとしては初めての事かと思います。

それもその筈、これは殿下ファンの一般女性が番組に送って来たプロットを採用した作品なんですね。プロのライターさんにはなかなか出来ない発想です。

山さんが殿下と二人きりで地下室に閉じこもり、手錠で繋がった状態で彼の禁断症状につき合ってあげるクライマックスは、トラウマになるほど壮絶でありつつ、こちらが脱水症状を起こすほどに泣かされます。

この作品で明らかになったのは、女性ファンは王子様が酷い目に遭う姿を見ると萌える、という事実w 以来、殿下は監禁されたり記憶喪失にされたりの被虐キャラが定着して行きます。


#083 午前10時爆破予定

これはごく個人的な事なんだけど、実は私がリアルタイムで『太陽にほえろ!』を観たのは、この作品が最初なんです。雷に打たれたような、まさに衝撃の出逢いでした。

エピソードとしては突出したものでもないんだけど、この翌週の『人質』と2回続けてゴリさん(竜 雷太)が主役だったんですよね。『太陽』のスピリットを代表するキャラクターがゴリさんですから、なんだか運命的なものを感じちゃいます。

この時期に番組の視聴率もいよいよ30%を超えるようになり、まさに『太陽』が一番熱く燃えてた時代。どのエピソードを観ても画面から熱気が伝わって来ます。


#084 人質

信用金庫に三人組の武装強盗が押し入るも、駆けつけた警官隊と銃撃戦になり1人が負傷。女子行員を人質にし金庫内に籠城した犯人たちは、医者を連れて来ることを要求します。

交渉にあたったボスは、交換条件として女子行員の解放を要求。代わりに刑事が人質になることを約束し、ゴリさんがその役目を引き受けます。

若い医師(中村雅俊)と二人で人質となったゴリさんは、実はかつて自分が逮捕した霧島という男が主犯であることに気づいており、その責任を負うかのようにあえて人質役を志願したのでした。

案の定、霧島はかつての恨みを込めて執拗にゴリさんをリンチ。仲間に自分の無事を知らせる為、フルボッコにされながら大声で童謡を唄うゴリさんに、私はまた雷に打たれたような衝撃を受けました。

リアルな暴力描写もさる事ながら、生身の人間がそこまで(職務の為に)自分の身を犠牲にするなんて、ひ弱な私には大いなるカルチャーショックだったんですね。

「ゴリさんでなきゃ出来ない事だよ」っていう長さん(下川辰平)のセリフ通り、これは竜雷太さんの逞しい肉体と「ゴリ」っていうあだ名がもたらす、タフなイメージがあればこそ成立するストーリー。

加えて、ゴリさんが人質役を引き受ける代わりに「終わったらビフテキ奢って下さい」って、ボスにおねだりしちゃう食いしん坊のイメージ。それがラストシーンにおける「ゴリ、日本で一番美味いビフテキ食わせてやるからな」っていうボスのセリフで活かされるんですよね。

謎解き要素ゼロのシンプルさで、ゴリさんのキャラクターと『太陽』スピリットを見事に描ききり、私の『太陽』フリークス入りを決定づけた運命的エピソード。

すでに『われら青春!』の主演デビューが決まってた、中村雅俊さんがカメラテストでチョイ役出演され、後に『俺たちの勲章』でコンビを組む優作さんとのツーショットが見られるのもトピックかと思います。

また、精神的に殿下を痛めつけるシリーズと同じように、肉体的にゴリさんを痛めつけるエピソードも定番化していく事になり、その原点としても重要な回と言えましょう。


#100 燃える男たち

第100回記念作品。財閥の令嬢が誘拐され、極秘裏に救出する事を本庁から命じられる七曲署捜査一係=藤堂チーム。

成功すれば本庁の手柄、失敗すれば現場の責任。鉄壁のチームワークで令嬢を救出するも、銃撃戦の中で1人の機動隊員が殉職しちゃう。

記者会見で鼻高々な本庁の偉いさんを横目に、ボスはマイクに向かって「この作戦は失敗に終わりました」と言い放つ。財閥の令嬢であろうが、名も無き機動隊員であろうが、生命の重さに変わりは無いのだから……

『踊る大捜査線』も『相棒』も、所詮は『太陽にほえろ!』の焼き直しに過ぎないって事が、これでお分かりかと思いますw


#102 愛が終った朝

シンコの友人である婦警が、恋仲になった男の犯罪に利用された挙げ句、一緒に逃げるつもりが裏切られ、殺されてしまう。

その男を射殺したい気持ちを必死に抑えたシンコは、駆けつけたジーパンの胸で泣き崩れます。友人の悲恋を目の当たりにしたシンコが、ジーパンを異性としてハッキリ意識するようになり、やがて婚約する展開へと繋がって行きます。

冒頭、ボスのマンションに呼び出されたシンコが、雨で濡れたブラウスを脱いで下着姿を披露、ボスに借りたYシャツに着替えるという『太陽』屈指のエロい場面が見られます。

脚本を担当したのは、ジュリー編で近親相姦をほのめかすドラマを書いてプロデューサーに叱られた、市川森一さんですw


#111 ジーパン・シンコ、その愛と死

テレビドラマ史に残る伝説のエピソード、ジーパン殉職編です。それまで怖いもの知らずだったジーパンがシンコとの婚約を経て、いつの間にか臆病になった自分に気づく。

ジーパン本人としてはショックなんだけど、それは人間としての成長の証であるとボスは解釈し、娘との結婚に猛反対してた宗吉(ハナ肇)にそのいきさつを話すんですよね。それを聞いて、宗吉もジーパンを見直す。

で、宗吉がジーパンのお母さんと会って2人の結婚を認め合ったちょうどその時に、ジーパンは命がけで暴力団から救ってやったチンピラに撃たれて絶命しちゃう。

ジーパンの断末魔の叫び「なんじゃこりゃあー!?」は恐らく、日本のテレビ史上で最も有名な、最も物真似された台詞ではないかと思われます。もちろん優作さんのアドリブですね。

私が通ってた小学校でも、放映翌日にはあちこちから「なんじゃこりゃあー!?」の声がw テレビが娯楽の王様として君臨してた、昭和中期を象徴する光景ですよね。

ジーパンの殉職はマカロニ以上に大きな反響を呼び、松田優作は押しも押されぬスターとなり、そして『太陽にほえろ!』はいよいよ巨大なお化け番組へと変貌して行くのでした。

(つづく)
 

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4 コメント

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Unknown (キアヌ)
2018-09-12 07:38:16
おー!
来ましたねー!

またまたすごい文書量!

ゆっくり読ませていただきます!
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Unknown (ムーミン)
2018-09-12 22:13:57
リアルタイムで一番夢中になった時期がジーパン編でしたので覚えているエピソードも多いです。一番の衝撃回は「鶴の飛んだ日」でした。ジーパンとシンコの愛も盛り上がりました。ゴリさんが好きになりだしたのもジーパン編くらいからかもしれません。ジーパンのテーマは今でも体が踊ります。
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Unknown (キアヌ)
2018-09-12 22:48:43
時代や社会を動かす、そんな勢いを文章からも感じ取れます。

掛け値なしの「信頼」、これがすべてなんですね。

それがいつしか嘘くさくなってしまった現代こそが重症ですね
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Unknown (ハリソン君)
2018-09-13 01:07:40
>キアヌさん
そうですね、『太陽にほえろ!』は刑事が主役でありながら人を信じることを何より大事にしたドラマでした。人を騙すぐらいなら騙された方がいいっていう精神は、現在じゃ冷笑されて終わりかも知れません。

>ムーミンさん
ドラマとしての完成度はボンがいた4年間あたりがピークかも知れませんが、創り手の熱気が最も伝わって来るのはジーパン期だったように思います。私はその時期に『太陽~』とファーストコンタクトしちゃったせいで、人生が狂いましたw
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