「甲府を日帰りで楽しむ ミレーとバルビゾン、そしてワイナリー」 前編:武田神社・山梨県立美術館

1978年に開館した山梨県立美術館は「ミレーの美術館」として親しまれ、ミレーとバルビゾン派や山梨県に縁のある作品を中心として、約1万点もの絵画と彫刻を所蔵しています。



今秋、ちょうど山梨県立美術館ではフランスの画家、クールベの展覧会が開催されていました。(「クールベと海」展。11月3日に終了。)私自身、クールベは好きな画家であり、山梨県立美術館へも一度も行ったことがなかったため、この機会に甲府へ出かけることにしました。



新宿を8時半に出発する「かいじ7号」に乗車し、いくつもの山を超えて甲府に着くと10時をまわっていました。



甲府駅の北口から一直線に北へと伸びる道を進んだ場所に位置するのが、古くは武田氏が本拠を構え、現在は武田信玄を祭神として祀っている武田神社でした。



武田神社のバス停を降りると、土産物店とともに甲府市武田氏館跡歴史館「信玄ミュージアム」が建っていて、堀の向こうに武田神社の鳥居が見えました。ちょうど七五三の時期と重なったため、着飾った親子連れで賑わっていました。



同神社のある武田氏館跡(躑躅ヶ崎館跡)は、周囲の堀や土塁が当時のまま残されていて、1938年には国の史跡として指定されました。戦国時代の躑躅ヶ崎館には武田信虎、信玄、勝頼の3代が60年あまり居住し、その後、大きく時を経て大正時代になると神社が創建されました。やはり信玄の武功にあやかってか、「勝運」のご利益で信仰を集めているそうです。



社殿の周囲は樹木が鬱蒼と生茂っていて、すぐ横には武田氏の遺宝を公開する宝物殿が建っていました。こじんまりとした館内には武田氏の扇や太刀の他、風林火山の旗、それに江戸時代に描かれた武田二十四将の図などが展示されていて、戦国も名を轟かせた武田の歴史の一端を知ることができました。



再び甲府駅へ戻るとお昼前になっていたため、駅北口の老舗「小作」にてほうとうをいただきました。大きなかぼちゃを中心に、里芋、じゃがいも、人参、しいたけとボリュームも満点で、特に野菜と味噌の甘味がとても美味しく感じられました。



ちょうど私はタイミング良く入店できましたが、お昼を回ると満席となり、順番待ちの行列も伸びていました。ほうとうの他にも馬刺しなどの一品料理も名物のようで、夜はお酒を飲みつつ楽しめる店なのかもしれません。



ほうとうでお腹いっぱいになった後は、山梨県立美術館へと向かうべく、駅の反対側の南口ロータリーへと歩きました。



甲府駅南口の駅ビル前のロータリーには武田信玄の像も建っていて、山梨県の玄関口としての風格も感じられました。



山梨県立美術館は甲府市西部にある芸術の森公園内に建っていて、起点である甲府駅から路線バスに揺られること約15分ほどでした。



約6ヘクタールにも及ぶ芸術の森公園には、美術館とともに山梨県立文学館があり、バラ園やボタン園などの四季の草花が楽しめる庭園が整備されていました。



またロダンやブルーデル、ムーアや岡本太郎らの野外彫刻も点在していて、想像以上に広々としていました。あいにくこの日は僅かに雲が出ていたからか、はっきりと見えませんでしたが、晴天時は富士山も美しく眺められるそうです。



前川國男が設計した本館は煉瓦色の外観が特徴的で、重厚な佇まいを含めて、同じく前川の手による東京都美術館を連想させるものがありました。



1階の正面入口を進むとインフォメーションとチケット売り場があり、正面にコレクション展へと至る階段、左手にミュージアムショップとレストラン、そして2階の特別展示室に繋がる階段がありました。



「クールベと海 フランス近代 自然へのまなざし」は、代表的な「波」などの海をモチーフとした絵画を中心に、同時代の画家を含めて70点の作品を紹介するもので、海の風景のみならず、山や狩猟画なども合わせて公開されていました。



ターナーなどピクチャレスクにはじまり、クールベの画業を作品で辿りつつも、レジャーとしての海辺の役割など、当時の人々と海との関わりまでを視野に入れていて、質量ともに充実していました。またクールベの無骨ともいえる自然の風景画に、「地方の独立の意思」(解説より)が見られるとの指摘も興味深く感じられました。



一通りクールベ展を見終えた後は、同じく2階の常設展示室へ行きました。同館のコレクション展はAのミレー館、Bのテーマ展示、Cの萩原英雄記念室に分かれていて、中でもミレーの「種をまく人」や「落ち穂拾い、夏」など名作から、ライスダール、デュプレ、ドービニー、ルソーの絵画が展示されたミレー館が特に見応えがありました。



ミレーの「落ち穂拾い、夏」は同館の代表するコレクションとして知られていて、最近ではアメリカのセントルイス美術館で開催されていた「ミレーとモダンアート:ファン・ゴッホからダリまで」に貸し出しされていました。


そして同作は新型コロナウイルス感染拡大に伴って貸し出し期間が延長され、約8ヶ月ぶりにミレー館に帰還を果たし、9月29日より再び公開されました。



水をテーマとした作品が中心のコレクション展を見終えると14時を過ぎていたので、レストラン「Art Archives(アート・アーカイブス)」にて休むことにしました。



座席数70席ほどの店内はスペースに余裕があり、「アーカイブ」の由来なのか、カタログなどを並べた書棚がディスプレイされていました。既に昼食はほうとうで済ませていたので、カフェメニューを注文しましたが、オムライスなどのランチセットを頼んでいる方も見受けられました。かなり落ち着いた雰囲気ゆえに、レストランだけを利用される方も少なくないかもしれません。



そしてレストランを出て、心地良い風に吹かれながら芸術の森公園を散策した後は、バスにて再び甲府駅と戻りました。



後編:甲府市街・サドヤワイナリーへと続きます。

「クールベと海 フランス近代 自然へのまなざし」 山梨県立美術館@yamanashi_kenbi
会期:2020年9月11日(金)~11月3日(火・祝) *会期終了
休館:9月14日(月)、23日(水)、28日(月)、10月5日(月)、12日(月)、19日(月)、26日(月)
時間:9:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人1000(840)円、学生500(420)円。高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
交通:JR線甲府駅バスターミナル(南口)1番乗り場より御勅使(みだい)・竜王経由敷島営業所・大草経由韮崎駅・貢川(くがわ)団地各行きのバスで約15分、山梨県立美術館下車。
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