「東京学芸大学日本画研究室 卒業・終了制作展2009」 佐藤美術館

佐藤美術館新宿区大京町31-10
「東京学芸大学日本画研究室 卒業・終了制作展2009」
2/28-3/8



毎年、この美術館を会場に卒業制作展を開催しているそうです。「東京学芸大学日本画研究室 卒業・終了制作展2009」を見てきました。



紹介されているのは、同大の研究室で学んだ学部卒業生6名、院生4名の計10名です。以下、私が印象に残った作品を挙げてみました。


土屋由子(大学院2年)「自らそうであること - 内在と自然 - 」

おそらくは胡粉の白が浮かび上がる二面パネルの作品。交差する直線、上部の黒など、一見したところ抽象性が強いが、コラージュ風に配された文字や楽譜、さらには顔料自体の滲みや濃淡などによって、色の向こうから景色が開けてくるのが面白い。じっくり見ていると心地良い風の流れて来るような水墨の風景画を連想する。


劉丹(大学院2年)「色の付いた夢」

深い愛情によって結ばれた母とこどもが、両者を祝福するかのような朱色に包まれて眠りこけている。母の手を枕に眠るこどもの表情は安心しきっていて優しく、子どもと遊び疲れてしまったのか、頭に手を当てて目を閉じる母のそれも穏やかだった。蛍のように舞う白のドットも幻想的な世界を演出している。


平尾真実(学部4年)「幼いいいわけ」

丹念に描き込まれた背景などの細部に驚嘆するも、花びらの散るカーテンに越しに佇む少年の力強い存在感には目を奪われてしまった。セピア色に包まれた様はどこかノスタルジック。


久保田淳(学部4年)「KRAFTWELK」

縦に何本ものびる金色の線と、背景に広がるエメラルドグリーンの対比が眩しい。その様子はまるで深い森を背景に立ち並ぶ竹林のよう。ちなみに金色の線は銅や真鍮の箔を用いているとのことだった。(またグリーンも絵具ではなく樹脂を使っている。)追求された表現技法に感服。

全体を通してともかく感じ入ったのは、モチーフ云々よりも、各々に深く練られた画肌そのものの高い質感です。また学部生では、応挙や暁斎などの日本の名画の模写も紹介されていました。下は歌川豊広の作を模写した富田一菜子の作品ですが、それを見ても、彼女らの持つ見事な画力を確認出来るというものではないでしょうか。



なお単に作品を並べるだけでなく、制作に使われる筆や刷毛などを並べ、パネルにて日本画の技法を紹介するコーナーも用いられています。この辺の工夫は大いに助かるところです。

明後日8日までの開催です。なお入場は無料です。

*写真の撮影と掲載は美術館の許可をいただいています。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (oki)
2009-03-09 23:26:12
僕は多摩美の博士課程展2009にいってきましたよ!
博士だと審査に副査として、美術館学芸員も加わるのですね。
傾向として、今の若い人、映像アートから具象アートへと回帰しているとはろるどさんはお感じになりませんか?
多摩美でも木彫刻を作られた方が僕のお気に入りです。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-03-10 21:40:07
okiさんこんばんは。多摩美の博士展へ行かれたのですね。学芸員の方が加わっているとは知りませんでした。力が入っていますね。

>映像アートから具象アートへと回帰しているとはろるどさんはお感じになりませんか?

映像はあまり見たことがないので何とも申せないのですが、
絵画では具象をなさる方が確かに多いような気もします。
一見、抽象のようでも、しばらく見ていると具体的な何かの景色に見えてくる作品も多いですね。その間の緊張感で勝負しているのかなとも思いました。
 
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