「速水御舟 - 日本画への挑戦 - 」 山種美術館(プレビュー Vol.2)

山種美術館渋谷区広尾3-12-36
「新美術館開館記念特別展 速水御舟 - 日本画への挑戦」
10/1-11/29(前期:10/1-11/1 後期:11/3-11/29)



Vol.1に続きます。新しく新築移転オープンした山種美術館で開催中の「速水御舟 - 日本画への挑戦 - 」へ行ってきました。

先のエントリでは山種美術館の概要、またプレビュー時に行われた同館顧問、山下氏のレクチャーをまとめましたが、こちらのVol.2では私が思う見所の他、展示の流れを各章に沿って追っかけていきます。

【今回の展覧会について。見所など。】

・出品は同館コレクションの御舟作品、約120点強。一部作品に一度の展示替えあり。(pdf出品リスト
・展示は計4章立て。基本的には時系列にて御舟の画業を回顧する。
・本展で始めて出品された未完の大作「婦女群像」には要注目。「炎舞」、「名樹散椿」の定番の名品が素晴らしいのは言うまでもないが、最大のハイライトはこの作品としても間違いではない。今回の展示で一番見るべきは御舟の人物表現。
・地下展示室のスペースはそれほど広くない。(面積約650平方メートル。参考:三井記念美914平方メートル)一室をパーティションで区切った各小部屋に御舟作品が所狭しと並んでいた。
・効果的なライティングに注目。旧山種とは比較にならないほど作品が良く映えて見える。
・ほぼ全てが所蔵品とのことで、これまでにも同館に通い慣れた方なら新鮮味がないのは事実。だからこそ今回の新環境の他、非常に意欲的な展示構成がモノを言ってくる。
・通常、常設展がなされる予定の第二室も御舟作品を展示。第一室から一度、ショップ前の通路を経由する形になるので見落とさないようご注意。(とは言うものの、章の流れとしては第一室のみで殆ど完結している。)

続いて展示の流れを追います。

【第一章:画塾からの出発】



主に画業初期の絵画、約7点を展示。南画風など、後の御舟には見られないのどかな作品が散見されるが、展示数が少ないために、その後の内容へのプロローグ的な内容にはとどまっている。初期作を平塚市美で見た方は物足りない可能性も。

【第二章:古典への挑戦】





このセクションはこれぞ山種とも言うべき速水御舟の豪華版名品展。暗がりに燃える「炎舞」越しに見える「翠苔緑芝」のコラボは圧巻。そのすぐ脇には「昆虫二題」の二点がそろい踏みし、また裏へ回ると「名樹散椿」が控えている。

【第三章:渡欧から人物画へ】



いわゆる大作の名品は一端、第二章で終了し、これ以降に主役となる主に人物画が登場する。通路の左右には御舟が渡欧中に描いた風景の写生をはじめ、明らかに西洋画を意識した裸婦のデッサンなど、形態、もしくは日本画的表現に進んでいたこれまでの御舟とは異なった世界が示される。



多くの人物素描を見れば、御舟が如何に人物を描くのに苦心し、試行錯誤を続けていたのかがよく分かるのではなかろうか。

【第四章:挑戦者の葛藤】



展示リストによれば第三章扱いになっているが、前述の通り、本展のハイライトとも言うべき「婦女群像」が登場する。展示では大下図(本画とは別の下図)の表と裏を前後期に一枚ずつ出品し、その横に未完の本画を並べる構成がとられていた。(出来ればもう少し引きのある場所でも見たい。)またこの作品のための小さな下絵もいくつか展示されている。



「婦女群像」を経由すると、あとは人物表現の他に、新たに追求し始めた晩年のデフォルメ的な花鳥画が紹介されていく。高名な「黒牡丹」の他、数点の花の作品は、第二室で紹介。到達点を見ることなく、最後まで絵に挑戦し続けた御舟の画業に静かな幕が閉ざされる。

山種美の速水御舟コレクションはこれまでにも何度か拝見させていただきましたが、やはり先にも触れた「婦女群像」の出品によって、半ばこれまでの山種らしい名品展風ではない、半ば御舟の苦手な部分(線と人物画)を強調してその絵画表現の「葛藤」の痕跡を見定める、様々な意味での議論を呼ぶ展示に仕上がっていたように思われました。

その関連からしても今、改めて御舟に向き合い、その「罪」をさらけ出そうとする、図録巻頭の山下氏の論文が非常に印象に残りました。天才御舟の画業は「線描の脆弱さ」を伺い知れるともいう未完の「婦女群像」にて、もう一度問いただされることになるのでしょうか。(カッコ内は論文より引用。)



なおその図録に関してですが、失礼ながらもこれまでの山種の図録の印象を一変するほどに良く出来ていました。必携の一冊となりそうです。

ちなみに御舟ファンとしては当然かもしれませんが、再度、前期展示中ももう一度伺うつもりでいます。個々の作品についての感想は、またその際に書く予定です。

11月29日まで開催されています。まずは是非ともお出かけ下さい。(前期は11月1日まで。連日入館は18:30まで。)

*関連エントリ
「速水御舟 - 日本画への挑戦 - 」 山種美術館(プレビュー Vol.1):美術館概要、プレビュー時レクチャー。

注)写真の撮影と掲載については主催者の許可を得ています。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 5 )
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コメント
 
 
 
Unknown (あおひー)
2009-10-03 23:47:21
こんばんは。
今日行って来ました。

イタリアの写生は意外でした。
図録は安かったので購入したかったのですが、スペースを考えて断念です。
でも、ポストカードは欲しいのがたくさんあったので買いましたよ。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-10-04 21:00:52
あおひーさんこんばんは。早速のコメントありがとうございます。

>写生

あの辺の作品はこれまでの山種ではあまり目立っていませんでしたよね。興味深かったです。

>ポストカード

私も速水御舟は各種持ってます!
 
 
 
Unknown (Tak)
2009-10-04 21:33:45
こんばんは。

先日はどうもありがとうございました!!

今、東京美術の「もっと知りたい速水御舟」を
読み始めたところです。
こちらで再度、御舟とは何たるかを学び
いま一度新・山種美術館に伺いたいと思います。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-10-05 22:01:16
Takさんこんばんは。
先日諸々お世話になっております。本当にどうもありがとうございました。

>東京美術の「もっと知りたい

これまた良く出来ていますよね。
拙ブログでも是非とも紹介したいと思います!
 
 
 
Unknown (秋映)
2009-10-13 22:22:28
山種美術館から長谷寺(ちょうこくじ)を経て根津美術館へ歩きながら、8月の不忍画廊 山田純嗣さんの個展を思い出していました。
《炎舞》と《那智瀧図》を同じ日に見られることをご存知だったのでしょうか。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-10-14 21:21:25
秋映さんこんばんは。

>8月の不忍画廊 山田純嗣さんの個展を思い出していました。《炎舞》と《那智瀧図》

なるほど確かに出ておりましたね。
偶然の取り合わせなのか、そういう出会いも不思議なものです。

根津美も行ってきたのでまた記事にしたいと思います!
 
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