「岡田美術館所蔵 琳派名品展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー
「岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」
1/21-2/2



日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催中の「岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」を見て来ました。

一昨年に箱根にオープンした日本・東洋美術の殿堂こと岡田美術館。そういえば建物の正面にはかの宗達の「風神雷神図」を模した巨大な壁画もありました。

「大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち」 岡田美術館(はろるど) *昨秋に岡田美術館へ行ってきた時の記事です。


俵屋宗達「明石図」(源氏物語図屏風断簡)  江戸時代前期

岡田美術館の琳派コレクションを展観します。出品は43件。粒ぞろいです。また岡田美術館の所蔵品が館外でまとめて公開されること自体が初めてでもあります。

冒頭は琳派前史、長谷川派です。「浮舟図屏風」は源氏の宇治十帖に由来するもの。波間に浮かぶ小舟の上には男女が寄り添います。艶かしい。もちろん二人は匂宮と浮舟です。

「柳橋水車図屏風」の状態が良いことに驚きました。中央には大きな橋がかかり、その前で柳の枝が緑色の葉をのばしています。柳はほぼ下から間隔を空けて立っていますが、一番左のみ上から垂れていて変化もあります。水車は左隻の橋の下です。金箔から眩い光が放たれています。

衣装の精緻な描写が光ります。「誰が袖図屏風」です。お馴染みの遊里の室内空間、桁には男女の着物が一見無造作にかけられています。右隻は帯でしょうか。その意匠が実に細かい。紅葉が朱色に染まっています。


俵屋宗達・本阿弥光悦「柳に波下絵和歌色紙 ほととぎす」 江戸時代初期

「花卉に蝶摺絵新古今和歌巻」が絶品でした。公開されていたのは下絵に竹の並ぶ場面です。左手は藤でしょうか。花が垂れています。光悦の書は軽快、それでいてどこか幽玄な雰囲気をも漂わせています。はじめに紙師が10枚の色変わり紙を繋ぎ、次いで宗達が下絵を描き、最後に光悦が和歌20首を散らす。巻物は現在に至るまで一度も切り離されたことはありません。珍しいことだそうです。

宗達では「白鷺図」と「烏図」も見応えありました。右に白鷺、左に烏が対になって並ぶ二点の軸画です。たらし込みや掠れなど墨の絶妙な技を駆使しています。


尾形光琳 「菊図屏風」 右隻 江戸時代前期

そして光琳です。一際大きな「菊図屏風」が目を引きます。群れるのは大輪の菊です。右から左、あるいは左から右へと余白を活かしてリズミカルに配されています。また花は胡粉で盛られ、さもパターン化しているように見えますが、一部は裏向きになっているのもありました。中央部は白砂でしょうか。横にうっすらと銀色を帯びた色面がのびています。


酒井抱一 「月に秋草図屏風」  江戸時代後期

抱一では「檜に啄木鳥」と「紅梅に鴛鴦図」が印象に残りました。二点ほぼ同じサイズ、やや大きめの軸画ですが、表現に隙はなく、かの十二ヶ月花鳥図の連作を彷彿させるものがあります。また「月に秋草図屏風」も興味深い一枚です。右上には半月、下にはオミナエシやキキョウなどの得意のモチーフが描かれています。そしてススキは全体的に上へ向かって直線的にのびています。確かに抱一一流の情感深い作品ではありますが、どこか全体のバランス感、安定した構図を志向しているようにも見えました。

素晴らしいのは其一の「木蓮小禽図」です。下からすくっとのびる木蓮、花はワイン色に染まっています。筆致は思いの外に素早く、所々絵具が掠れているところもあります。岡田美術館で見た御舟の「木蓮」を思い出しました。かなり似ています。ひょっとすると本作を御舟が参照したのかもしれません。

ラストは近代への展開です。雪佳の「燕子花図屏風」に御舟の「桃梨交枝」、そして又造の「初月屏風」へと続きます。特に又造が大変な力作です。細く鋭く尖った三日月を頂点に荒れ狂う波。そこへ赤や青の山が折重なります。ススキは截金でしょうか。技巧も見事です。躍動感と装飾性を兼ね備えていました。

事前に混んでいると耳にしていたので、平日の夕方以降、閉館1時間前を狙って出かけました。おかげで会場内は比較的スムーズでしたが、それでも最終入場時間まで続々と人がやって来ました。


伝尾形光琳「椿若松蒔絵硯箱」 江戸時代

会期も残すところあと3日です。ラストの土日、特にお昼の時間帯はかなり混み合うのではないでしょうか。余裕をもってお出かけ下さい。


デジタル復元された俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。店内本館1階玄関前。撮影が出来ました。

なお本展と直接関係ありませんが、2月20日(金)に抱一研究でお馴染みの玉蟲敏子先生の講演会があるそうです。

[京都創生連続講座 in 東京] 琳派400年記念セミナー
前半:朗読「伊勢物語~琳派の愛した王朝文学~」
   山根基世(元NHK アナウンサー)
後半:講演「生きつづける光琳」
   玉蟲敏子(武蔵野美術大学教授)
開催日時:2月20日(金)17:00~19:00
会場:野村コンファレンスプラザ日本橋6階大ホール
住所:中央区日本橋室町2-4-3 日本橋室町野村ビル6階

入場は無料。定員300名の事前申込制です。(締切は2/6)。申込など、詳しくはセミナーのWEBサイトをご覧下さい。

「鈴木其一 (ToBi selection)/河野元昭/東京美術」

2月2日まで開催されています。

「岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
会期:1月21日(水)~2月2日(月)
休館:1月1日
時間:10:00~18:30(19時閉場)
 *最終日は17:00(17:30閉場)まで開場。
料金:一般・大学生800円、高校・中学生600円、小学生以下無料。
 *三越M CARD、伊勢丹アイカードなどを提示すると本人と同伴1名が無料。
住所:中央区日本橋室町1-4-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅より直結。東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B11出口より徒歩5分。都営浅草線日本橋駅より徒歩5分
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