「海が満ちる時」 フランス映画祭2005 6/18

パシフィコ横浜会議センター(横浜市西区みなとみらい)
「海が満ちる時」
(2004年/フランス/ヨランド・モロー+ジム・ポルト監督)
6/18(フランス映画祭2005

パシフィコ横浜で開催されていた「フランス映画祭2005」で「海が満ちる時」を見てきました。

監督でもある主演のヨランド・モローが演じるのは、一人芝居を演じながら北フランス各地の小さな劇場を渡り歩く「旅芸人」イレーヌです。ラブストーリーということで、舞台をきっかけにして彼女に惚れ込んだドリスとの恋の過程が、ぎこちない印象で描かれていきます。彼女が移動用に使っていた自動車の故障の修理を手伝った彼との出会い。想い焦がれる彼の情熱的なアプローチ。彼に徐々に心を開くイレーヌの繊細な恋心。一時の別れやその後の破局…。展開は「お決まり的」な印象すら受ける程の古典的な恋愛劇が続いていきます。

この作品の最も優れた点は、言葉にならないような恋心を抱くイレーヌを、モローが細やかな表情で演じたことでしょう。「私のヒヨコちゃん。」として、ドリスと舞台へ上がった時に見せる彼女の微妙な立ち振る舞い。そしてその後に得る二人の幸せな時間。二人が結ばれていく過程は、移動中の「密室」である自動車の中や、何故か二人で忍び込んだ立ち入り禁止の海岸での「戯れ」などのシーンで切なく描かれます。イレーヌが砂浜で風を爽やかに受けながら、喜びに溢れた声で一人唄い出す場面が最も美しく感じました。

イレーヌが演じる一人芝居のシーンも頻繁に登場します。彼女の劇は観客の笑いを常に誘っていました。彼女の温かい心持ちは「劇中劇」からも伝わります。赤い仮面をかぶって舞台から観客を呼び上げ、客席と一体となって楽しさを分かち合う。実は私はその「笑い」や「楽しさ」を殆ど共有出来なかったのですが、雰囲気は十分に感じとれました。この辺の面白さを感じとれるか否かで、この映画への評価も大きく変わってくるかもしれません。

上演後は主演と監督を務めたモローが登場し、簡単な質疑応答と、作品中に使われた「歌」を即興で披露して下さいました。個人的には物足りなさを感じた作品だったのですが、ステージ上で優しく振る舞うモローの姿を見て、何やら納得させられました。フランスでは数々の名誉ある賞を受け取って、興行成績も良かったということなのですが、日本での配給はどうなるでしょうか。
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