「江戸の悪」 太田記念美術館

太田記念美術館
「江戸の悪」
6/2-6/26



太田記念美術館で開催中の「江戸の悪」を見てきました。

一概には言えませんが、どこか近付き難いながらも、不思議と引き付けて止まない「悪」(ワル)の魅力は、今も昔もそう変わらないのかもしれません。

まずは誰もが知る悪役スター、石川五右衛門です。安土桃山時代、市中で盗みを働いては暴れたという大盗賊。実在したか否かについては諸説あるそうですが、ともかくこれほど人気のあった悪もいません。歌舞伎などの演目でも頻繁に取り上げられます。

たとえば三代豊国の「東海道五十三次之内 京 石川五右衛門」は見るからに伊達男。言ってしまえばカッコいい。定説では無頼漢であった悪人も、芝居では善人、つまり美化されることも多かったそうです。

この五右衛門の処刑シーンを描いた国芳の作品が強烈でした。衆人が見守る中、煮えたぎる巨大な釜に入れられては耐える五右衛門の姿。既に身体は血みどろです。腕を上にして持ち上げているのは倅です。最期の最期まで息子を思う五右衛門。涙を誘います。死に際しても挟持を失うことはありません。左下で嘆くのは五右衛門の妻なのでしょうか。処刑人らはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべています。何とも臨場感のある光景ではないでしょうか。

三代豊国では「梨園侠客伝」の連作に目を引かれました。うち「御所の五郎蔵」が魅惑的です。桜の舞う中を傘を開いてポーズを構えます。衣裳には勇ましき昇り龍。これぞ粋の真骨頂。同シリーズの「髭のいきう」も勇ましいのではないでしょうか。花紋をあしらった派手な衣裳に桜。そして背景は夜。つまり黒です。これを映えずとして何と呼べば良いのでしょうか。見事なまでにキマっていました。

ところで今回、キャプションに「悪人度」なる指標がありました。最高は星5つです。これが思いの外に面白いもの。星5つに輝いた悪人は決して多くありません。

一人は先に挙げた石川五右衛門、二人目がこれまた有名な鼠小僧です。あとは四谷怪談の伊右衛門、立場の太平次、村井長庵、また浅茅ヶ原の鬼婆など数名。後ろ四名は人殺しです。星の数で知る悪人の度合い。注意して見ると良いかもしれません。

歴史上の人物にも悪人がいます。代表的なのが「仮名手本忠臣蔵」で高師直として登場した吉良上野介。言うまでもなく赤穂浪士事件の当事者です。そして明智光秀、平清盛、蘇我入鹿と続きます。もちろん何故に彼らが悪人かについては議論もあるでしょう。実際にも光秀は、非情な君主に厭われた弱者として擁護されたこともあったそうです。

熱病に唸らされた清盛を描いた「平清盛炎焼病之図」が劇的です。作者は天才絵師の月岡芳年。やせ細った清盛が寝床でのたうち回ります。すぐ後ろには閻魔大王がいつでも来いと言わんばかりの姿で待ち構えていました。周囲には黄色い火焔が迸ります。鬼の姿も見えました。まさしく地獄絵図、思わず清盛に同情してしまうかのような描かれぶりです。何やら気の毒ですらありますが、これも人気の悪ゆえに描かれた名作ということなのかもしれません。

悪は何も男性だけではありません。悪女も登場。豊原国周が描いたのは「原田お絹」。金貸しの妾となり、歌舞伎役者に入れこんでは、障害となる男性を毒殺します。モデルは実在した毒殺犯、原田きぬ。夜嵐おきぬとして新聞錦絵などのモチーフに好まれたそうです。

展示では「悪」たちを、「盗賊・侠客」、「悪の権力者たち」、「恋と悪」、「妖術使い」といったテーマ別に分類。歌川豊国、三代豊国らをはじめ、月岡芳年らの作品が目立っていました。

テーマも明確。なかなか見せては読ませる展示ですが、残念ながらカタログはありませんでした。リストは同館のWEB上で確認することが出来ます。



半ば怖いもの見たさのゆえに引き寄せもする悪人の展示。どこか人には悪人願望でもあるのでしょうか。館内も不思議な熱気に包まれていました。

6月26日まで開催されています。

「江戸の悪」 太田記念美術館@ukiyoeota
会期:6月2日(火)~6月26日(金)
休館:月曜日。
時間:10:30~17:30(入館は17時まで)
料金:一般700円、大・高生500円、中学生以下無料。
住所:渋谷区神宮前1-10-10
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩5分。
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